これからの事を考える前にレティーシャはまた余計な事を考える
「私はリルの貰ったっていう能力がどれ程の物なのかが非常に気になる」
とても神妙な顔でレティさんが呟いた。
さっきまで時間がないって言ったのは貴方でしょうに。
質問ばっかりとか言っておいて、どうせ貴女だって、また、興味が移った事に思考を集中しだしたんじゃないか。
「今までに何を作ってみたんだい?」
「作った、というよりは……刃こぼれしたナイフを元通りに戻したり、その程度の事しか」
あんまり食い気味に訊いてあげないでほしい。リルさん、引いてしまっているじゃないか。
というか、少し前まで申し訳なさそうにしていた態度はどうしたんだ?
「ふむ……そのナイフは?」
「今お持ちします」
そう言うとリルさんはリビングを離れ奥に引っ込んでいった。
「良いんですか?時間がないんじゃありませんか?」
「それはそうだけどこれは放っておけない。場合によっては私とモビーとあの娘で、たった三人であの都市を復興出来るんだ」
本当かなぁ?そんなどっかの角ばったキャラばっかりのゲームみたいな事出来るんだろうか。
「お待たせしました」
そんな事を思っているとリルさんが戻ってきた。
その手には木製の鞘に収まっているナイフ、見た目の感じから包丁の方が近い気がする物を持っていた。
「それが?持って見てみたいんだけど良い?」
「はい、どうぞご覧ください」
手渡されたナイフを鞘から出し、目の前でじーっと見つめるレティさん。
一度鞘に戻して近くのテーブルに置いて、同じテーブルに立て掛けていた杖を手に取る。
魔力を流したようで強めの白色LEDみたいに発光しだした。
その光にもう一度鞘から出したナイフの刃を当てながら再びじーーーっと見る。
「……うん、刃こぼれなんてないね。ありがとう」
そう言って鞘に半分ほどナイフを戻していたが、手が止まった。
なんだ?何を考えているんだ?あんまりいい気はしないんだけど。
「リル、このナイフは大事なものかな?これ以外にもナイフがあるなら譲って欲しい」
「大事という程ではないですが、私が直したと言ってもただのナイフですよ?」
「このナイフの刃、この部分を圧縮出来るのかな?君の能力は」
あ。いい気がしない程度の話じゃない、嫌な予感がする。
「圧縮?ですか?」
「想像が出来ないかぁ、押し固める感覚だよ。ほら、ドワーフの鍛冶は剣の刀身とかを熱して叩くでしょ?鍛造のあの感じ」
「それでしたら理解出来ます」
「このナイフの刃をそのイメージで圧縮して見て欲しいんだ。失敗したらナイフは弁償するから」
このナイフの素材が何かは知らないが、多分高密度の鉄鋼とか作らせる気だな?
止めた方が良いだろうか?
「物の再構築が可能なら圧縮も出来るはずなんだけど、出来る?」
「考えた事もありませんでしたが、やってみますね」
やるんだ。断ってくれてもいいのに、どうなっても怖い気がする。
「それでは……」
ナイフを受け渡されて柄を両手で持って刃を見つめるリルさん。もしかして、もう始まってる?
見ていたのだが一瞬だった。
ナイフの刃が小さくなったと思ったら柄から抜けてしまい石造りの床に落下した。
コォン!
想像していたような音はせず甲高い音が鳴ってその場で静止した。
何だろう、シャーンみたいな音がすると思ったけどそんな事もなく。さらに普通回転するのにそれも無かった。
多分、成功だ。どうしよう。




