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歌舞伎揚を齧っているだけだったはずの異世界生活の話  作者: 宮清水 和


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これまでの事 リルの語り 

 私はレティーシャ様のように何故自分が今また、ここで生きているのか分からないんです。


 私は目覚めると今を生きていました。

 自分が死んだのは分かります、しかし、死ぬ直前やそこに至るまでの経緯の記憶が何もないんです。

 まるで長い夢を観ていたような気がしましたが、枕元に日本語で文字が書かれている紙があったんです。

 内容は、これがその紙です。




 私達は多忙なので書面で説明します。

 貴方は愛する主人を守れずに死にました。ですが、喜んでください。

 今回は特例で抽選ではなく貴方個人を選出して過去に戻りやり直す機会を与えます。

 これに伴い、ささやかではありますが特別な能力を貴方に付与します。

 材料、素材があればそれを分解、構成して想像通りの物を作り出せる能力です。

 それでは、この巻き戻った世界では自由に生きてください。死ぬまでの流れを改善するも良し、一切関わらずに新しく生き直すのも良し。

 私達は貴方が何をするでもしないでも咎めず、干渉せずに見守ります。

 私達は全てを許します。助けもしませんが。


 それでは、新しい良き人生を。



 今、日本語でこんな事を書ける人は周りにはいません。

 それに、今この時の本来の私では漢字を使用したこの文を読む事は出来ません。

 漢字の読み書きが出来るようになったのは旦那様に教えて頂いたから、私が人生をやり直している証拠でもあるんです、この紙に書いてある字が読めるという事は。


 え?文の内容ですか?雰囲気が旦那様が持たされていた紙と似ている、ですか?

 すみません、私にはよく分からない事です。



 私が憶えているのは旦那様に家族で身請けして頂いてから宿場後を修繕しながら過ごした3年と、捨てられた街を旦那様の力とみんなで復興した数年間の事でしょうか。


 はい?…………はい、復興の途中で私達の行いを国に密告した者がいました。

 そのせいで国の先遣隊が来た後に私達を制圧する為の兵隊が沢山侵攻してきました。

 不法占拠は表立った理由です。本当は旦那様の存在が国に知られたからです。

 ですが、力を取り戻し始めていた御神木様のお陰で私達は負傷者を出さずに助かり、逆に兵隊を捕虜にしました。


 レティーシャ様の記憶と一致しますか?そうですか。

 私の記憶ではこの侵攻後に国から和解の為に遣わされた使者にレティーシャ様がいらっしゃいましたが。

 それも一緒ですか。そうですか、その時から旦那様と。

 いえ、なんでもありません。


 ……え?私と妹が、ですか?いえ!そんな!?私と妹が旦那様と夫婦に、ですか?そんな事はありません!

 隠し立てもしていません!!

 旦那様は、私の記憶の続く限りでは誰も、妻や愛人を迎えてはいません。

 そんな事は……。話が大きく違います。

 レティーシャ様、その話が真実でしたら私達はお互いによく似ている別人ではありませんか?

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