これまでの事 レティーシャの語り 一
どうかな、そろそろ落ち着いたかな?
先ず私は、リル、君に謝らなければいけない。
すまなかった。
想像もしなかったんだ。まさか自分のように過去に遡っている人がいるなんて事。
こうなってはもう隠していたら不誠実だ。
今から少し、私の一人語りに付き合ってもらって良いかな、二人共。
今から凡そ50日位前の事だよ。
白昼夢、で良いと思う。龍が私の業務を行っていたテーブルに現れた。
頭が少し装飾過多な手足のある蛇のような龍だったね。
その龍は古い古い伝承に語られる、時間すらも超越する世界の理の外に存在する龍だと自分を説明したよ。
そんな龍が私に取引を持ち掛けてきた。
「未来のお前からお前に対して記憶と感情を預かってきた。受け取るか、受け取らないかは好きにしろ」
「受け取らなくとも構わんが、受け取らぬとなると我は面白くない」
「受け取るならば、未来のお前にも授けた我の力の一端をお前にもくれてやろう」
抗い難い甘言だったよ。
私はただのエルフだ。一般的な魔法は使えても国に召し抱えられるような力なんてなかった。
そんな自分が労せず神域の、いや、それ以上かもしれない存在の力を得られる。
安易な判断だった。
私ではない私から記憶を受け取った事で、私は自分のこれからの未来を知る事が出来た。
それと同時に後悔や心残り、汚泥のような黒い想いが私の感情、心を満たしてしまったんだ。
そんな私を見て、龍は態度を変えて面白がった。
先程までの重厚な、威厳や風格を感じさせるなんてものじゃない、ただのならず者みたいな口調に変わっていた。
「ヒャッハッハッハッハーーー!!選んじまったか!?可哀想になぁ?おい!!」
「こんな力の為に穏やかな日常ってのを捨てちまうなんてな!!憐れだなぁ、憐れだなぁおい?」
「良いぜ、約束だ。龍の火を、その力をくれてやるよ」
「まぁ安心しな、その力はあくまで力だ。お前の頭なり心を狂わす事なんてねーよ。狂ったらそりゃ、お前自身の問題だぜ?」
「せいぜい観ている俺を愉しませてくれよ?」
言うだけ言ってその龍は目の前で消えていったよ。
残された私は直ぐに自分が人外、規格外の力を得たのを理解した。これはただの夢じゃないって実感させられた。




