ドワーフ少女との邂逅 四
素朴な疑問から割と重い話をしている間に目的地の集合住宅があるらしい場所に到着した。到着したのだが、なんだろうコレは?
歩きながらどんどん殺風景になっているとは感じていた。
妙な石造りの建物があるなぁ、程度には見ていたがそれ以外に建造物が見えなくなってきていたが。
「ここだよ、例のリルっていうドワーフの少女が住んでいる住居は」
「えーっと?これ、は?何ですかね?」
先ほどから見ていた妙な建物の横に地下に続くような階段がある。2m位の深さかな?
「この、建物?ここに一家が住んでいるんですか?」
目の前のなんとも言えない建物を指差して俺は尋ねた。
「違うよ?これは……うーん、色んな機能が複合されているから、簡単に言うと…………煙突で、吸排気口で、光を取り込む窓でもあって」
やっぱりここに人はいないよな。流石に人が複数名も住むような空間があるような建物じゃないのは分かる。
「簡単に言えそうにない感じがしますけど、とりあえず複合型の煙突と思っていいですか?」
両方のこめかみに両手を添えて考え込みだしたレティさんに率直な感想でも言ってみる。
彼女は目を瞑って、うーん、と唸っていたが俺の発言を聞くと
じゃあそれで、と即決した。
その後は直ぐに横の階段を降りていき、階段の先にある扉の前に立つ。
「こっち、このドアの先が居住空間なんだよ」
「地下って事ですか?」
「そう、地上に建てるより格段に涼しいんだよ」
あぁ、何か聞いたことあるな。オーストラリアだっけ?ニュージーランドだっけ?地下に町を作っちゃった場所があった気がする。
そこも確か何かしらの鉱山の町だったんだっけ?
ちょっとテレビで見た程度だからしっかりとは憶えていない。
「ちょっと待ってくださいよ、レティさん」
ドアをノックしようとした彼女に声を掛ける。彼女は俺に向き直って待ってくれた。
「なーに?どうしたの?また質問?」
また、と言われるとちょっと申し訳ない気がしてくる。
「……はい。何で地下が快適なのに地上というか地表にも建物が多いんですか?みんな地下に造ったら良かったんじゃないですか?」
「そんな事を今訊くの?後で答えてあげるから、幼児みたいだよモビー」
呆れられてしまった。
確かに、今から他所様のお宅に伺おうとしている時にその対象の建物のドアの前でする話、質問ではなかった。そこは反省しよう。
しかし、幼児みたいって。
何?何?って訊いてくるなになに期とかなぜなぜ期の事だな?
空気読まなかった俺も悪いけど実際気になるんだし、そんな風に言わなくてもいいよなぁ。
そんな事を考えている俺の事は放置してレティさんがドアに数回ノックをした。
しかし、反応がない。地下に造った居住空間のせいか生活音等の気配も感じない。
もう一度ノックした後で今度はレティさんが声を掛けた。
「(誰かいないかい?ギルドの紹介で来たんだけどー)」
反応がないようだ。何と言ったんだろう?ごめんください的なものだろうか。
「(おーい、誰もいないのかーい?君達一家を購入する予定の者なんだけどー。少し確認と話がしたいんだー)」
やっぱり反応がない。
「反応がないですね?留守ですかね?」
声を掛けながら階段を降りて一緒にドアの前に俺は立った。
「家族全員はいないかもしれないけど、娘2人はいそうな気がするんだよね」
更にノックを繰り返す、なんか借金取りみたいに思えてきた。
実際それと大差ないのか。奴隷を買おうなんて立場の人間は。
「私に記憶違いがなければここの姉妹の年齢は30と27だよ。小さな子供でもないんだし、いるなら受け答え位はするでしょ」
「そんな事を言ったって、奴隷としていつ売られるかもしれない立場で女性なんですから、警戒はしますよ」
何だかレティの雰囲気が妙だ、焦っているのか。
珍しい、このままヒートアップしそうだなこの人。
いつも飄々としているんだからこういう時こそ余裕を見せてくれないかな。
「仕方ないじゃないですか、今日は諦めませんか?」
「そういう訳にはいかないよ。私には今日しかないんだ、ここでモビーをリルに託せなかったら不安で君を同行させるしかない」
「最悪はそうするしかないでしょう、俺も覚悟決めて同行をしますから」
「そういう問題じゃないんだってば!!」
……怒鳴られた。怖くなんてなかったが、正直驚いた。
多分、余裕がなくなったんだ。余裕がない人間は温厚な性格の人でも攻撃的になったり、怒鳴ったりする。
俺ももう少し気が利いていれば良かったんだが、悪い事をしてしまった。
「ごめん、大人気なかった……謝るよ」
「いえ、俺の方こそなんというか、レティさんの考えも理解してなくて」
気不味い沈黙の空気が流れる。出会ってからこういう事は初めてだ、どうにも、やりようがない。
「あの……」
ドア開く音と同時に女性の、女の子の声がした。
「……日本語……ですよね?」
2人でドアの方へ向き直る。
そこには小柄な女性、というよりは女の子がいてドアに身を隠しながらこちらを窺っていた。




