ドワーフ少女との邂逅 一
昨日の一件があったせいなのか、何だか町全体が騒がしいように感じる。
町に着いてギルドを目指して歩いていた時のあの陰鬱とした雰囲気がない。
「あの、何か町の雰囲気が変わってませんか?」
「なんだかザワザワしてるって感じだね、まぁそれは無理もないんじゃないかな?」
ギルドで教えてもらったリルという少女の家族が住んでいるという、集合住宅の場所を目指して歩く俺達。
昨日とはまた違った視線がこちらに向けられている気がする。
「昨日の事がもう人伝でこの町中に知れ渡ってしまったね。これはどうにも面倒くさい」
「意外ですね。その面倒くさいって要はここの住人達がレティさんが助けてくれるかもって期待の事、ですよね?」
「うん、そうだよ。本当に面倒だよ」
首を左右にゆっくり傾けて伸ばしながら彼女は言う。寝違えでもしたのか?
「待っていてくれれば、その内に全員をなんとかしてあげるんだけど」
「何でそれが面倒くさい事になるんですか?」
レティさんは町の色んな場所を見回している。
昨日は俺にあまりキョロキョロするなと忠告してくれたのに、今日は自分から分かり易く住宅等の建物を見ている。
「こういう場合、大体は面倒なのが自分勝手に縋ってくるんだよ」
「んぅ?はぁ……そういう物、何ですか?」
イマイチ彼女の言う面倒がよく分からない。
あまり気にしてもどうしようもないので、そのまま話しながら道を歩いていると少し先に人集りが出来ている。
「あれ何でしょうね?何か人が集まって、揉め事とかですかね?」
「だと良いんだけどね」
「え!?揉め事だと良いんですか?何でです?そういうのはない方が良いでしょ?」
「だって、揉め事って事は私達には関係ないんだもの」
やっぱり分からない。そりゃ揉め事なんてこの町の部外者の俺達には関係ない事だけど、それでも起こっていたら良いものでもないじゃないか。
そんな風に思いながらレティさんを見ていると、いつの間にかターバンみたいな頭に被る帽子の中に髪を全部入れるようにしている。
なんだ?今までヒョコヒョコとその赤いポニーテールを正に馬の尻尾みたいに振って歩いていたのに。
そして髪を仕舞うと俺の服の袖を引っ張ってきた。
「モビー、私を背負ってもらって良いかな?それと今から良いって言うまで話さないで」
「それは……?」
「良いから。お願いだよ」
状況は読み込めないが、何か意味があるんだろうし俺は指示に従いレティさんを背負う為にしゃがむ。
彼女が俺の肩、首に腕を回す。俺は彼女の脚を持ち立ち上がる。
「ありがとう、あの人集りの横を通り過ぎてしばらくするまでこのままでお願いね」
「疲れたんですか?まぁ、いいですけど」
レティさんは見た目の感じよりも軽い。これなら苦もなくあの人集りの横を通り過ぎれるな。
段々と前方の人集りに近づいていく。
人集りでは何やらその集まっている人達で話し合っているようだったが、話の内容は分からない。
「(結局どうなんだ?俺達は助かるのか?)」
「(分からないわよ。でも昨日国の特使?なのかしら、とにかく偉い人がギルドに乗り込んで行ったって)」
「(らしいねぇ、何でも昨日はギルドの連中普通の仕事を放り出して自分達の悪事の証拠をまとめてたんだってさ)」
「(そんなのは知らねぇよ、どうだっていい)」
「(そうさ、私達はこれからどうなるんだい?助かるのかい?)」
井戸端会議的な何か、それにして雰囲気が深刻そうだな。
ま、何言ってるか分からないし。言われた通りに横を通り過ぎるだけだな。
「(おいアンタ。見ない顔だな、どこから来た?)」
何か男が少し大きい声出したけど、何があったんだ?意見でもぶつかったのか?
「(聞いてるのか、おい!?)」
「(ちょっとアンタ止めなよ!人買いだったらどうすんのさ!?)」
多分そうだな、女性の人も声を大きくして何か言い出したし。
まだ日中に比べれば涼しい方だけど、暑いのに声張り上げて元気な事だ。
人集りの声も遠くなり、そして全く聞こえなくなった所でレティさんは自分を降ろすようにと言ってきた。
「ご苦労さま、あれ?お疲れ様だっけ?とにかくありがとうね」
背中から降りた彼女がお礼と労いの声を掛けてくれた。
「年長者ですからご苦労さまで良いんですよ」
「そっか……年長者?」
「上の人間が下の人間を労う言葉ですから」
年長者という所に引っ掛かりを感じたらしいので上下関係だと言い換える。
歳でも立場でも貴女の方がどう考えても上なんだ、どっちでも良いでしょうに。
「所で、さっきのあの人達は何を話していたんですか?」
まだちょっと腑に落ちない顔をしているが俺の質問に応えてくれる。
「昨日私達が起こした騒動でその結果、今後自分達ドワーフがどうなるかとか、そんな感じの話」
私達。今度は俺の方が言葉に引っ掛かりを感じたが流して話を続ける。
それよりも気になる事があったからだ。
「さっきの人達ってドワーフだったんですか?」
「そうだよ?どうして驚いてるの?」
「いや、自分の知っているドワーフの見た目と一致しなかったんで」
「そうなの?じゃ、モビーの想像していたドワーフってどんな見た目だったの?教えて」
俺のイメージではドワーフは背が低めでずんぐりとした体型、赤髪や茶髪で腕が太くて腕力が強い。
大体の男性がヒゲを生やしていて鼻が大きめな顔。
手がゴツゴツとしているのに細工等の細かい作業な器用な人達と伝えた。
「見た目以外は想像通りだね。でも昨日ドワーフの女の子見たじゃない?あの子も典型的なドワーフだったよ?」
「あの子は子供で、女性だったので」
「ドワーフは頑強で力が強いけど、それは男性が女性より強くて強調されているけど女性も私達エルフや人間と比較したら強いよ?」
「女性でも強い、それってどれ位に?」
「そうだねぇ。鍛えていない人間の男性と同じ位には何もしていないドワーフの女性も力があるよ。見た目は私より小柄で細いのに不思議だよね」
千年を生きるかもしない長命種の貴女の方が個人的には不思議だが、まぁ、ファンタジーな異世界だし。
「ずんぐりもしてないよ。小柄で細身だけど力が強い、身体が丈夫、手先が器用、300年前後が平均寿命。こんな感じがドワーフだよ」
「ちなみに肌や髪の色は?」
「そんなのは個人、いや個体によるよ。ドワーフに限らず長年住んでいる場所に特性だって出る。エルフにも日焼けしたような肌の色が普通のだっているもの」
多様性に富んでいるなぁ、さすがは異世界だ。




