鉱山の町、人売りの町 四
レティさんは考えている。
レティさんはゴーダンを王都へ連行する人達に同行したい、話を早く自分に都合良く進める為に。
だが、俺がいるから話が難しくなる。
連れていけば存在自体も面倒なのに能力の事もある。
この町に独りで残していく訳にもいかない、これは前述と同じ理由に加えて言語の問題も含む。
「途中までついて行って、あの宿場で独りで過ごしているとかはダメですか?」
「ダメだね、この件は滅多にないこの周辺で人が動く話題になる」
対面に座り直して、目を瞑って腕組みしながら彼女は言う。
「いつもよりあの宿場を利用する人間、往来が増える可能性は非常に高いから危険だよ」
「そうですか。じゃ、町に残るしかないですかね」
う〜ん、と唸ってまたその状態のまま俯く。
俺のせい、なんだよなぁ。どうしたらいいんだろう。
「誰か、誰か頼れそうな人物がいればなぁ……ムラタさんの言葉の書き換え能力で日本語を覚えてしまった人達って、まだ存命だったりしませんか?」
「ほぼ300年経ってしまっているから、生きているかな?ドワーフって大体寿命が300年前後なんだよ」
「本当に微妙な、いや、日本語が分かる人がいればそれだけでもなんとかなるのかなって思ったんです」
「現状で日本語が理解出来る人物なんて片言でリル位なもんじゃないかな」
そう言えば前にも何かの時に名前が出たな、リルって誰だ?
「前もそのリルって人の名前を聞いた気がするんですが、その人って誰ですか?」
「ん〜〜?リルは君が最初に、あぁ、あっちの君がこの世界で初めて出会ったドワーフの一家の女の子だよ。その娘がいたから君は……」
「いたから、何ですか?」
言葉を待っていたのだが、レティさんがカッと目を開いた。
「それだ、それで良いじゃないか!リルだよ、リルの家族だよ!!あの家族に頼めばいいじゃないか!」
また始まったよこの人は。
「ちょっと待ってください。向こうを知っているのはレティさんだけじゃないですか」
「それはそうだよ?でも何を待つの?何を気にするっていうのさ?」
「そりゃ気にするでしょう!?今日みたいな事があった矢先ですよ?絶対に警戒されるじゃないですか!?」
「だから家族単位で奴隷購入して、常に家族の目が届く場所にいれば良いんじゃない?」
「そんなので、そのリルって女の子の両親納得しませんって!」
レティさんは俺の意見にすこし呆けたような表情になった。
だが、あまり間もなく今度は心配するような、可哀想な人を見るような目をこちらに向けてきた。
「そうか、モビーはそういう考えがまかり通る環境で生きてきたんだから無理もないか」
「なんですか、その言い方は?」
「私が襲われそうになった、今日は女の子がそうなりそうだったんだ。こんな事はよくあるのがここの常識だ」
「…………」
推し黙るしかない。俺の発想をどういった視点と解釈で否定してくるんだ?
「どこの世界に娘さんが心配だから家族全員で一緒に引き取るから横で見守ってなんて、奴隷に配慮して購入するような奴隷を求める人がいるんだい?」
「いや、それは……」
「モビーは人権ってヤツを気にしているんだね、分かるよ。でも最初からここではそんな物は弱者にはないような物だし、奴隷なら尚更だよ」
冷淡ではないがあまり感情が籠もっていない印象を受ける言い方だ。
「ここはそんな場所なんだ。何なら今からでもその家族を購入しに行こう、条件を告げて。多分、泣くまでではないけど喜んで受け入れると思うよ?」
「そんな、まさか……でも、お金はどうするんですか?手持ちがどう考えても足りないじゃないですか」
「それは私が王都で払うって言えばそれまでだよ。何なら言った通りもう一括でこの町全体規模で買うなら更に問題にならないよ。今がこんな状況だしね」
言い終えるとソファーに乗せていた杖を手に取って、また続けて言った。
「ま、こんな条件を出せば逆に怪しまれる可能性も大きいけど。そこはそれ、相手が私が迫っても手を出さないモビーだもの。それも含めて説明するから何とかなるさ」
「何の説得力もないですよ、最後のは」
「いいじゃない、今から行こう?下であの小柄な男に話してリルの家族の所へ案内してもらおう」
本気みたいだ。




