みんなは楽だったと言う割と過酷な町への移動
早朝、薄っすら青く世界が染まりだした頃に俺達は宿場を出発した。
アラダリさんは自身の荷馬車で、俺達はレティさんが買った荷馬車で移動した。
こちらの馬車はレティさんが御者をしている、その為いつもより暑そうな服を着て足に履いている物もいつものサンダルっぽい物からブーツに変えている。
俺はレティさんの用意してくれていたいつもの服を着ていつものサンダルで荷馬車の荷台の幌の日陰でぼーっとしているだけだ。基本荷台にいるだけだからこれで良い、のかな?
何か手伝える事があればいいのだが、現代日本で生活してきた俺なんて馬は操れないし何も出来ない。これで歌舞伎揚も水、お茶も出せないなら正に穀潰しだ。
荷馬車で俺はその内に居眠りをしてしまっていて、休憩時にレティさんに起こされたがその際、やたらと体調を心配された。
その時は特になんとも思っていなかったけど多分熱中症で意識が飛んだのかと思われていたんだろう。
休憩時、俺は湯呑みから水を荷馬車に積んでいた桶に移して溜めてレティさんとアラダリさんに渡して足湯みたいにして身体を冷やしてもらったり、冷たい水を渡した。
馬達にも水を与えて、湯呑みから水を流し続けて身体に掛けてあげながら手で勢い良く水を切るようにブラッシングみたいに擦って体温を冷やしてあげた。
1頭にこれを行っていると他の馬達が鳴いたり鼻を鳴らして自分達にもやれと催促してきているようで忙しかった。やはりこの世界でも馬は賢い生き物らしい。
そんな暑さの中で作業しているとアラダリさんが俺を凝視している事に気付く。
こう、じっと見られながら何かをしていると、ダメ出しを受けるのだろうかと居心地が悪くなってくる。
その辺りをレティさんに伝えてもらってあまり見ないでくれと伝えてもらおうとした。
この時にレティさんに近寄ったら馬にもやったんだから私にもやってと、ブラッシングみたいな事をしろと無理難題を言われた。
それは無理だろうと断ると、だったらこのまま水に浸している足を洗ってと言ってきた。
もう一々考えるのは面倒だったので桶に手を突っ込んで足を洗ったというか擦ってあげた。
足の裏、指の間、足の甲からふくらはぎの途中まで。
何だか楽しそうにしていたが、なんか子供の相手をしているような介護をしているような、微妙な気分になった。
そしてアラダリさんに俺の言い分を伝えてもらったが見ていた理由も分かった。
「こんな所で惜しげもなく水を出している彼は本物なのだろう」というのを実感していたらしい。
レティさんには良い印象を与えたと褒められた。褒められたんだよな?
しかし、少々この時にアラダリさんに何というか、最初とは違うような感覚で見られていた気がした。
何か思う所でも他にあったのか?
何れにしても移動中荷台で何もしていない分、全体の休憩時間が俺の労働時間にだった。
何も出来ない分こういう時に何かが出来るのは分業みたいで心が休まる、何もしないでダラダラしている訳でもないが、やっぱり気にしてしまう。こうした事があると仕事の種類と時間が違う、で割り切れて良い。
本来なら休憩時間は少し短く、後1回は休憩して目的地の町に昼を過ぎてから到達するのが一般的だったらしい。でも今回は1回の休憩がいつもより長かったがその分、その後の距離を稼げたので2度目の休憩はなく太陽が真上に登り切る前に町に着いた。と、レティさんが言っていた。
太陽の登っている位置なんてイマイチ把握していないので、まぁ、ここの人達がそう言うならそうなんだろう。
休憩時間が終わって再び移動する時も俺は荷台の幌の中で、休憩時間の労働で身体が熱かったので服を脱ぎ、最初にこの世界に来た時に着ていたシャツを適度に水で濡らしてそのまま着て体温を下げてみようとした。
冷たくて涼しいが直ぐにシャツが乾いてゾッとした。何度も濡らしては身体を冷やすを繰り返した。
何だかバカな事をやっているなと思いつつもこうでもしないと命に関わるのは素人でも分かる暑さだった。
よくもこんな場所をこの時季に移動するもんだ。
そして俺はまた居眠りをしてしまい、町に着いて起こされてしまった。今度は心配されなかった。
正直俺としてはかなり辛かった行軍だったが、御者をしていた2人はいつもより楽だったと言っている。
移動中に水をほぼ飲み続けて汗をかき続けはしたが、そもそも残りを気にしないで常に水を飲める事が何よりも安心材料になったんだそうだ。
しかもその水を荷物として運んでいないので軽くて良いとかどうとか。
本来ならもっと気温が暑くなる頃に到着する距離だったので気温が上がりきる前だから楽、だったらしい。
もっと暑いのか、想像したくないけど俺もその内に慣れてくるんだろうか。
まぁ、ともかく無事に目的地には着いたし。ここからどうする、どうなるんだ?




