レティーシャの会話が理解出来ない 五
「ちょっとレティさん、あの人になんて伝えたんですか?」
「大体そのままかな」
「そんな、大丈夫なんですかそれ?」
「ちょっとね、水に制限設けたから相手に与える印象が弱かったかなって思って教えてみた」
おい、それは本当に大丈夫なのか!?あなた言ってましたよね、俺の能力が明るみになったら一生自由もなく水や食料出す為に幽閉されるみたいな事。
この人を信用して大丈夫なのか?本当に?貴女は並行世界の記憶があるかもしれないけど、そもそももう話の流れ変わってるんでしょ?
この人を信用して良いって事すら信用出来なくなっていたりしないの?
「(実際にはどれだけこの食べ物を出せるんだ?出せるだけ出してもらえるか?」
「アラダリさんはなんて言ったんですか?」
「出せるだけ出せってさ。(それは出来ない。これを出す為には1枚辺りで少ないながら彼は体力を奪われているんだ。出せるだけだしたらそれこそ彼が死んでしまうかもしれない)」
「(そうなのか?知らない事だったといえ酷く無遠慮な事を言った。許してもらいたい)」
「(分かってくれて助かるよ。)無理な事を言って済まないってさ」
「俺は気にしていませんよ」
もっと俺が気にするべき事はそこではない。
続けてレティさんは何かまた続けて話し出した。
「(まぁ、そうは言っても彼も自分の出したコレを1個食べれば9個は出せるからね。そういう意味で実質的に無限に出せる、みたいなものなんだよ)」
「(おぉ!なるほど、そういう仕組みなのか!確かにそれだと出せるだけ一度に出すなんてのは危険と言えるが、運用はしようがあるな)」
「(理解と納得はしてくれたようだね、助かるよ)」
「(しかし、なぜそんな事を私に教えてくれたんだ?ハッキリ言ってこんな事を私に伝えるのはそちらに悪手じゃないのか?)」
「(彼を君個人やギルドで拐って利益の源泉にする、とかの危険性の話かな?)」
「(……分かっているな。では、尚更だ)」
「(君はかなり堅実な取引をする商人だと聞いているし、それなりに調べて知っているからね。何より)」
「(調べてあったか。まぁ、アンタ程金払いが良いならそれもそうか。で、何が、何より、なんだ?)」
「(君の妻はあの町で売りに出されたドワーフ何でしょ?それも若い見た目ならまだしも自分と相応な見た目の、だ)」
それなりに言葉を交わしていた2人だったが、レティさんが最後に何か言った事でアラダリさんが若干居心地が悪そうな態度をしだした。
少し長く鼻で息を吸った後に今度はそれをゆっくり長く吐き出し、目を瞑って前のめりだった体勢を後ろに引き腕を組んで天井見上げた。
映画やドラマのワンシーンみたいだ。
「(若いなら分かるんだよね、そういう嗜好なんだろうって。男なんてそんなもんだよ。でも、わざわざ見た目自分と同じ位のドワーフの女性だもの、安い値でもない。となるとね、絆されてしまったんじゃないかな?)」
「(もういい。止めてくれないか)」
「(気に障ったら申し訳ない。でも決して馬鹿にしたり侮っているんじゃないよ)」
あんまり、良い空気じゃないよ?大丈夫なのかなこれ。こういう商談だと何かこう、ニコニコしながら手を取って肩を叩き合うみたいにならない?文化の違いか?
「(君の選択は商人としては間違っていたかもしれない。でも、人としては正しいと、私は思うよ。そうでもなければ私財を投じてこんな事はしない。そろそろ、そんな君がその人となりで報われたり得をしても良い頃なんじゃないかな?)」
「(……それがアンタやそっちの彼だと?)」
「(そう思ってもらっていいよ。それとも話が美味すぎる?怪しいかい?)」
アラダリさんは今度は腕を組んで身体を揺らし出した。と、思えば腕を解いて右手で頭を掻き出したぞ。
「(正直私は商才がある方ではない。ましてやアンタと比較すれば人生経験すら浅く、言われるがまま、見透かされるままになってしまう。今までも確実に手に入る少額しか扱えない矮小なだけの商人だ)」
「(そんな事はないよ。自身を過小評価したり卑下するのは自由だけれど、自分が携わった人も含めて自分を評価しなよ。そんな風に言ってしまう、そんな生き方で君が救った人は確実にいるんだ、奥さんだってそうじゃない)」
「(そうだろうか……私には、分からない)」
「(人を自身の利益の為に欺かず商売してきて人も救ったんだ。誰にでも出来るけど誰でもやれる事じゃないよ?胸は張らなくてもいいけど、俯くこともないよ…………あれ?どうしよう、私って今説教臭い年寄りみたいになってない?)」
「(それは……私はなんとも言えないぞ……)」
「モビー!今の会話聞いてた!?私って年寄り臭かった!?」
「知らないですよ!お二人会話なんて何一つ分からないですって!」
何の話をしていて、どんな流れの話になってたんだこの人達は?




