レティーシャはかなりのお金持ち 六 終
何だかんだとしている間に昼になった。いや、なっていた、荷馬車が近付いてくる音がするまで気が付かなかった。
音が近づいてきた事に最初に気付いたのレティさんだった。外見的要因、耳が長い事でやはりウサギみたいに音がよく聞こえるのだろうか?
「ん、来たみたいだね。馬車が近付いてくる音がするよ」
そう言われるまでは俺は気が付かなかった、結構聴力は良い方を自負していたんだけどなぁ。
「さぁ、行こう。外で出迎えよう」
彼女は右手に杖を持ち、空いている左手で俺の右手を握るとそのまま引っ張り外へと連れ出した。
周囲にあまり音を立てるものがないせいなのか、空間も広くこの建物に音がぶつかり反射するするせいなのか。まだ遠い荷馬車が道の先に陽炎越しに見える位だが音はかなり大きく聞こえる。
建物の軒下、日陰の中でもやっぱり暑い。そんな中いつまでも彼女は俺の手を離さない、それどころか手を組むように握ってきた!これは俗に言う恋人繋ぎってヤツなのか?
恋人繋ぎという概念が彼女にあるのかどうかは知らないが、こんなに嬉しくない恋人繋ぎを俺は知らない。
おそらく下手をすると彼女の体温よりも外気の方が余裕で暑いんだろうが何故だろう、繋いでいる手の方が熱い気がする。排熱が上手くいかないからか?
こんな見た目美少女でも嬉しさより熱さが際立つのか。まぁ、今の時点で彼女に恋愛感情など無いが。
「大丈夫、今日は最初から杖も持っているからモビーと私を守る位の魔法なら余裕で使えるから安心して?」
俺が繋いでいる右手を何とも言えず動かしているのを不安で震えているか何かと勘違いしているんだな、レティさんが気遣う言葉をくれる。
有難いけど、そうじゃないんだよなぁ。これが男女逆の立場だったらどうだ?絶対に良いものじゃない。
何より拒まない、拒めない自分も悪いがユルグという少年を知ってから俺はそもそもあった感覚、触られたくないという物とは別にレティさんに触れてはいけないという感覚が芽生えてきた。
どうしたものか。
「陽炎のせいですかね?見えているよりも遠いんですかね」
黙っているのも何なので適当な話題でも振る事にする。
「陽炎がどうこうっていうよりも馬車でも移動する速さが人の徒歩とあんまり変わらないんだ。荷物を多く運べる分だけ、より遅いんだけどこの暑さだもの、無理したら馬なんて直ぐに死んじゃうよ」
それはそうだ。馬の方が身体も大きいし熱は籠りやすいというのもあるんだろう。しかし、なんでこの環境で馬を、しかも俺が見知っている馬そのものを使用しているんだろう?ラクダとかはいないのか?
こっちに着いたら厩に入れる前に冷水で身体を洗ってあげないと可哀想だな。
「そろそろかな?」
かなり荷馬車は近付いてきた。いい加減手を離してくれても良いじゃないですか?
そんな気持ちを伝えたりはしないが、馬車がいよいよ俺達の側に到達するとレティさんは手を離してくれた。
そして俺には解らない言葉で荷馬車に向かって声を掛けた。




