レティーシャはかなりのお金持ち 四
こうだと決めるまでは時間が掛かるが決まってしまうとレティさんは行動がとても早い。もう迷いがないというか、色んな構想が頭の中に散らばっているんだろう、それが次々と繋がっていくんだろう。
「モビーは私の横に居てもらうよ?アラダリと彼に同行している人をここで1泊させてから一緒にドワーフの町に行こう」
「それは全く構いませんが、俺の能力とかはどこまで話すんです?」
「うん?そうだね、あんまり手の内を教えるのは良くないからどちらも1日で出せる限界がある程度に教えておこうか」
そんなものか?際限なく出せるのと限界があるのでは縛りもあるから貴重性も高まるからな?
「さて、場合によってはここは放棄する事になるかな。荷物は最低限でベッドの寝具なんかは置いていこう」
「良いんですか?大事な中継点なんでしょうここは?」
「それはそうだけど、優先度は変わった。ドワーフの町から例の都市までは荷馬車で2日半掛かる、勿論日中の移動のみで。その2日半の道のりにもここみたいな2つの中継点の宿場があるんだ」
「あぁ、その2つを復旧させるんですね?都市に安全に近づく為に」
「そう、でもそれだけじゃないよ?私達は私の貯め込んだ私財を投じてあの都市と樹について長い年月を掛けて調査する酔狂な変人を決め込む」
酔狂な変人、外野が見れば正にその通りだな。今更200年前に放棄された都市、そのあまりにもどうしようもない環境下のせいで野盗ですら隠れ家にもしない死んでいる場所。
そんな場所に興味と好奇心でとんでもない巨費を投じて調査する物好き。間違いなく最初は疑われるだろうけど、その辺は大丈夫なんだろうか?
「長年居座るのはどうしても補給線が必要だよ。中継点を復旧させずに進軍していったとする。そうすると商人ギルドから物資を購入して届けて貰わないといけないのに」
「そんな行くだけで死にに行く確率が高い所には売っても届けてくれない?」
「そうそうそう。だから最悪物資は売ってくれるだけでもいいんだ。物資の移送に人が必要ならその分一度に多くのドワーフを購入しても全く怪しまれない。大きな事業みたいなもんだからね、人手を雇うより奴隷を買って働かせる方が得って考えは寧ろ商人が納得する」
「聞こえはあまり良くないですが、逆にその方が良いんでしょう?」
「それが当たり前なんだよ。モビーには分からない感覚かもしれないけど人助けの為に私財を投じるなんて人間、商人が一番怪しむ人間だよ」
この世界でもこの荒野、砂漠の環境だ。ここに生きている人達には優しさがあってもそれ行使する事は数少ない、ボタンを1つ掛け違えたら失敗や死に直結する。
そんな場所で慈善事業なんかで奴隷本人達になんの代償や対価を負わせずに解放しようという人間は確かにいない。
逆に、俺は誰にも頼らず自分の金だけで好き勝手するから命令を聞く奴隷達をよこせ、等と金に物を言わせる人間が入ればそっちの方が商人側が扱い易いか?
うん?いや、しかし?
「レティさん?ここ放棄して本当に大丈夫ですか?」
「なんでさ?私達は都市へもう向かうんだよ?ここに留まる必要はないよ」
「だって、補給線でしょ?この先のドワーフの町の反対方向にも都市があるって言ってませんでした?俺達が受ける補給ってドワーフの町だけで賄える物なんですか?ここを経由して都市から来るものってないんですか?」
「あ」
もう〜ほらぁ「あ」って言ったもんこの人、「あ」って。発想が切り替わったせいで忘れたんでしょどうせ。
「どうしよう、ここも大事かもしれない」
かもじゃぁないでしょ、かもじゃ。十分大事だって、絶対に。
「そう言えばここから都市って目指せるんですか?距離はどんなもんなんです?2日半とかこっちも掛かるんですか?」
「今の時季ならこっちも2日は掛かるかな。こっちにも中継点はあるけど風化で宿場も道もどうなっているか分からないよ?」
都市に通じる宿場を全て復興させれば良いんだろうが、一番の問題は水がない事。井戸もないんだろう、おそらくは。
ここに来てまた悩む事が増えてしまった。




