レティーシャはかなりのお金持ち 二
「そう言えば、日が落ちてくると気温自体は下がらないですけど日光の熱はなくなりますよね?その間に移動してしまえば良いんじゃないですか?」
「それは出来るけどしちゃいけないんだよ、日が落ちきって真っ暗になるまでに移動を終えるっていうなら良いけど。真っ暗になってしまったらお終いだね」
両目を瞑って両腕を胸で組み、うーん、と唸りながら彼女は答えてくれた。え、難しいのか?
デスバレーとかここと似た岩石砂漠だと夜間に移動する荷馬車が居たんじゃなかったか?暗闇で危険だが日中の暑さよりはマシだって理由で移動したとかテレビで見た気がするんだが。
「現実的じゃないって事ですか?暗闇で危険だからとか、照明の灯りに危険な虫が寄って飛んでくるとか問題が?」
「灯りに寄ってくる羽虫なんかほぼいないよ。寄ってくるのは魔物だよ。だからある程度腕の立つ護衛でもいない限り出来ないね」
ここに来てファンタジーっぽい単語が出てきた、魔物。
魔物、どんな存在がこの場所には居るんだろうか?面白がるつもりはないが、やっぱり気になる。
「魔物がいるんですね?どんな見た目ですか?やっぱりこういう場所だと大きなハサミと毒針を持った虫ですか?それとも人間も一飲みにしちゃう位でっかいミミズとか怪鳥なんて言う大きな鳥ですか?」
「そんなでっかいミミズや鳥なんかいる訳ないじゃない。こんな場所でそんな大きな生き物が何を食べてどうやって水を飲んで生きてるのさ?」
現実とは無情だ。剣と魔法のファンタジー世界ですらそういった生き物は存在しないのか、本当にファンタジーだったとは。
「大きなハサミと毒針を持った虫ならいるけどそれは大きくても……」
なんか腕を伸ばしたり曲げたりしだした、なんだ?
「うん、大きくても私の腕の手首から肘まで位の大きさだね。オカエビって言う虫の種類なんだけど、魔物じゃないよ?」
あぁ、大きさを想像してたのか。
「平べったい身体にでっかいハサミの腕を持ってて、牙に毒があるの。尻尾を振って敵の注意を引いている間にハサミで敵を掴んで牙の毒を敵に注入して仕留めるんだ。苦味はあるけどエビとかカニみたいで食料になる虫だね。正確には毒スナガニ」
毒スナガニ、話に聞いた感じ完全にサソリだ。でも尻尾は囮で牙に毒か、というかエビもカニも居るんだな?この世界にも。
「魔物じゃないけど毒スナガニは危険だよ、夜になると這い出てきて野営中に襲われたりする。ハサミが強力で材質によるけど剣の剣先とか砕くよ」
「え、そんなのだったら人間の指なんて」
「うん。切り落とされる。子供だったら腕や足も千切って持っていかれる。この国で夜に子供を外に出すなっていうのは常識。偶に腕や足を失っている人がいるけど子供の頃にやられたんだろうね」
子供の頃に。嫌だ、想像したくない。でっかいヤシガニのハサミと毒を持ったサソリだなんて普通に怖い。地球でも生息していなくて良かった。
「スナガニも怖いけど、やっぱり魔物が怖いね。大きな犬みたいなのがどこからか数頭で出てくるんだよ。達悪いんだ、人や馬を襲って食べるのに自身は切られたりすると消えるんだ」
魔物は本当に魔物って感じだった。動物、獣を魔物って言うタイプじゃなくて魔物って生物じゃない存在がいるんだ。
「そんなのが夜になると出てくるんですか?それは確かに危険で夜は移動できないですね」
「その魔物はこういった建物付近には出ないんだ、勿論町にも。だから夜は移動しない、させられない。そんな夜になるかもしれない時間から人を追い返すなんて出来ないよ」
全くだ、納得しかない。という事はあの馬と荷馬車の持ち主は昨晩の内に……。




