世界は廻る、レティーシャの誤算 七
「質問、良いですか?この湯呑みって俺が一定の距離離れると消えるんですよね?だったら俺が死んだ後ってどうなったんですか?」
「消えたよ。だからそれまでに都市周辺や地下の水脈にドワーフの力と技術を使って治水事業をしないといけないんだ。だけどまぁ、実際これも今の私には解決策があるからやっぱり樹を復活させるだけで良いんだけど」
俺の寿命、命が有効期限なのか。伝説の魔導具!みたいに後世にずっと残る物じゃない。そうなるとどうやって樹を生き永らえさせ続ける気なんだろうか?
「……ちなみに!」
考え込む俺にレティさんがやや溜めて強調するように声を掛けてきた。
「最優先は樹なんだけど都市を復興、もう1度あの場所に価値を生み出さなきゃいけない理由もあるんだよ?」
「あ、え?……はい」
「モビーが離れると消える。死んでも消える。これが最大の縛りであり武器になるからなんだけど、何でか分かる?」
「水が出なくなった瞬間全てダメになるからですよね?」
「端的に言えばね?でもそうじゃないよ、都市を復興してしまえばもう誰もモビーに手出しが出来ないんだよ。君はこの厳しい環境で1つの所に根を降ろした瞬間、もう離れられない。規模が大きくなればなるほどに。それが更に樹の側になったらね」
「あーっと?つまり、あっちではどうなったんですか?」
「ふむ、順番に説明した方が早いね。結構長いけど、付き合ってもらうよ。」
「はい、どうぞ」
「あっちのモビーはここで6ヶ月程過ごしたんだ。その間にドワーフ夫婦はこの宿場を修繕して、姉妹には君が日本語を教えて過ごした。商人、アラダリは君から蒸留水みたいに綺麗な飲水と乾燥したここじゃ数カ月は腐らない歌舞伎揚なんてお菓子をドワーフ一家の代金として定期的に受け取りそれを売って急速に財を成して力を付けていった」
「あの、所々質問してもいいですか?」
「いいよ、知ってる事しか答える事は出来ないからそのつもりでね?早速何かあった?」
「何であっちの俺は商人やドワーフ一家と話が、言葉が通じているんですか?あっちでは言葉が最初から通じるような力でも持っていたんですか?」
自分で言っていても疑問に思う。だったら何で姉妹に日本語を教えているんだ?通じるなら教える必要なんてせいぜい文字位で良いはずじゃないか?
「そこか、うーん、一家の長女が個人的に言語の覚えに長けていたんだ。で、これが都合が良い話であのドワーフの町には今から300年前だったかな?ごめん正確には憶えてないけど、日本人が居たんだ」
「はぁっ!?」
「驚くよね?まぁ実はその日本人がいたから私も今モビーと話が出来るんだ。その日本人に日本語とアラニア数字って言うのを教わったよ?いや〜あれは凄かったね〜、頭の中がこう、作り変わったような感覚だったよ。今までの算術がもの凄く簡単になったんだ」
「レティさん、話の腰を折って悪いんですがアラニアではなくアラビア、です。アラビア数字」
「そうなの?似てるから良いでしょ?まぁまぁ、それのお陰で私はこの国の城に潜り込んで200年お金計算してるだけでお金持ちだよ。ずーっと計算しているフリをしてダラダラしてるだけなんだから楽で楽で。あ、そう言えば時期が樹が消えた後だったかな?」
どうしよう、その話凄く気になるから聞きたい!でも絶対に脱線する!!
もう、何なんだこの人!?人生長いから気になる話題の引き出しだらけだよ!




