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歌舞伎揚を齧っているだけだったはずの異世界生活の話  作者: 宮清水 和


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2/27

砂漠で歌舞伎揚を齧る 二

 少女で良いんだろうか?この赤髪のエルフの女性は。いや?そもそも女性か?声が高いとか見た目の先入観で考えていいのか?

 服装は、何というかこの環境だからだろうか。茶色のゆったりした長袖の服とゆったりしたズボン?パンツ?を身に着けている。ターバンでも巻いていたら思いっきりアラビアンナイトのドラマで見たような恰好だ。


「やーやー、よく来たね。オネーサンここで君が来るのを昨日から待っていたんだよ」


 俺の色んな逡巡は無駄なようで、自身をオネーサンと言い放った事で少なからず彼女、である事は確定した。

 何だかニヤニヤ?ニマニマ?といった擬音が聞こえるような勝ち誇った様な笑顔で俺を見つめてくる。

 というか、何でこのエルフの人は俺をこんなに見てくるんだ?


「外は暑いだろう?中も大して変わらないけどキツイ日光の下よりはマシだよ、中に入ると良いよ」


 促されるままに俺は建物の中に入った。

 中にはいくつかの木製の丸テーブルとそれとセットであったであろう椅子が壁際に寄せ付けてあり、中央の空間が広く設けられていた。


「ここはね、もしかしたら雰囲気で察したかもしれないけど外にある街道、まぁ街道って程今じゃ立派じゃない道を行き来する人達が立ち寄る宿場だったんだよ」


 やはり自分の最初の見立ては当たっていたようだ。

 床に直接座り込んでエルフが何やら語りだす。トントンと、自分が座った横を手で叩く。そこに座れという事なのだろう。そういうジェスチャー的なのは一緒なのか。

 隣に座りながら着ていたパーカーを脱いで丸め、横に適当に置く。


「ここから荷馬車なんかで移動して1日程の山の所に、そこにドワーフ達の鉱山町があるんだよ。もう廃鉱寸前で町全体借金だらけなんだけどね」


 なんか、このエルフは放っておくだけでいっぱい勝手に喋って説明してくれそうだからしばらく相槌位で聞くに徹する事にした。

 もっと自分の置かれた状況とかここがどことか聞きたいけれど、取りあえず流れに任せて落ち着いてから聞けばいい。


「それでね?その鉱山町と取引している、いや、していた街が鉱山町の反対方向の道の先にあるんだよ。こっちはここから荷馬車の速さで向かって2日の距離なんだけど、充分な荷を持った上で休みながら3日掛けて移動するのが定石だね。そうしないと途中で死んじゃう」


 なんというか、余程過酷な環境じゃないかここ。


「でも見てれば分かるように、この建物はもう200年位前に廃棄されているのさ。今じゃ極稀に、商人が今説明したこの道を使う際に休みに使うだけの場所で滅多に人なんてこない、野盗だってこない場所だよ」


 200年という時間のスケールに驚いて色々と見回す。


「思った程朽ちていないかい?それはたまに使う人間もいるからさ」


 見回していた挙動で察したのだろう、説明をしてくれた。


「あのぅ」


「ん?なんだい?」


「そんな所に、どうして貴方はいるんですか?」


「最初に言ったじゃないか?君が来るのを待っていたと。君がここに現れるのを私は知っていたからね」


 このタイミングだ!ここから聞きたい事を話してくれそうな気がするぞ。


「何でそれを貴方が知っていたんですか?ここはどこですか?何で俺はこんな場所にいきなり突っ立っていたんですか?」


 矢継ぎ早に捲し立てる俺の鼻の頭を彼女は右手の人差し指でチョン触って制した。

 その表情は何か楽しそうだ。


「まぁ落ち着いて。色々私から説明してもいいんだけどまず何より先に君がさっき脱いだ服のポケットに紙が入っているはずだからそれを読むといいよ」


 俺が気付きもしなかった事を何故知っているんだ?半信半疑で丸めたパーカーにある左右のポケットを探すと左側に確かに4つ折り紙が入っていた。


「ホラ?あったでしょ。読んでみて」


 おめでとうございます。貴方は異世界に転移する権利に当選しました。私達は多忙な為、この紙にて簡単に説明します。

 貴方の所謂転移特典のスキルは念じれば歌舞伎揚を無限に出せる能力です。無限と書きましたが実際には少し制約があります。1枚出す事に貴方の身体から出した歌舞伎揚の枚数の10%のカロリーが失われます。平均的な歌舞伎揚1枚のカロリーが60kcalなので1枚出すと6kcalが減ります。貴方1人や誰か数名に分け与えるならほぼ無限ですが分け与える人数が増える程貴方はジワジワとカロリーを消耗します。

 

 スキルのおまけで内容量約300ccの大きな湯呑みが出せます。この湯呑みは10℃から100℃の温度で水かお茶を自由に無限に出せます。

 

 このスキルが選定された理由は貴方の死因です。貴方は寝転びながら歌舞伎揚を食べ、喉に歌舞伎揚を詰まらせて死にました。湯呑みは飲み物で流せば死ななかったかもしれないという事への私達側からの情けです。


 このスキルの他にも貴方は40歳を前に死んだので老化しだしていた身体を20歳に若返らせておきました。


 さぁ、その世界では自由に生きてください。何をしてもしなくても私達は貴方を咎めず、干渉せずに見守ります。その世界のどこかの国で犯罪を犯そうともその国は許さずとも私達は許します。助けもしませんが。


 それでは、良き人生を。






 え、なにこれ?

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