砂漠で歌舞伎揚を齧る 一
砂漠には分類すると3つ砂漠があるらしい。
簡単にイメージできる砂ばっかりの砂砂漠。小石ばっかりある礫砂漠。そして今私のいる岩とか渇いた荒野みたいな大地の岩石砂漠がその3つらしい。
暑くて着ていた冬用パーカーを脱いだ。こんなの1秒でもこの環境下で着ていられるもんか。
しかし、今度はジリジリと腕を焼く容赦ない陽射しを受ける。
俺は肌が弱い、日焼け止めもないこの状況は割と洒落になっていない。
周囲を見渡す。どうやら俺は道の真ん中に立っていたようだ。道の先にはグレートキャニオン的な岩の山が見える。
一体どれだけ離れているのだろうかは分からないけど物凄く距離があるのだけは分かった。
振り向いて反対方向を見る。なんと建物があった。
俺は取りあえず陽射しで頭も熱くなってきたのでパーカーのフードを被りマントみたいにしてその建物を目指して歩いた。
建物までは体感200m位だっただろうか?割と簡単に辿り着いたがもう汗が凄く吹き出している。もっと離れていたらどうなっていただろうか、考えたくない。
近付きながら思ったがここは多分この砂漠の道を利用する人達の宿場とか馬を交換する駅とかそんなのが目的の建物だったんだろうと思う。
基本が石造りでこの環境を考慮して造られたのか、素材が石の方が調達し易かったからなのか分からない。正面の入り口の上には看板があるがそこには馬っぽい動物のイラストと見た事がない文字で恐らく施設名が書いてあるんだろうと思われる。
ここは一体どこなんだろうか?疑問に思いつつこの日光や暑さから少しでも逃れる為に数段の階段を昇り、入り口の木製のドアの前に立った。
ドアの前に板が立て掛けてあり、板には全てカタカナでメッセージが書いてあった。
「コノモジガヨメタヒトハトビラヲナナカイタタイテ」
この文字が読めた人は扉を七回叩いて。
つまりこれはノックしろという事で良いんだろうな。言葉そのままに従いノックをしてみる。
コンコンと連続的にではなく、コン、コン、コン、と、断続的に七回ノックをしてみた。
人の気配がある。トントンとこちらに歩み寄ってくる足音が聞こえた。気配は扉の前で止まる。
「ハーイ、君は私の言葉が分かる人かな?」
声は少女のような印象を受ける高い女性のものだった。イントネーションの感じから普通に、日本で日本語を覚えたようなネイティブなものに聞こえる。扉の向こうの声の主は日本人女性なのだろうか?
「はい、分かります、日本語ですよね?」
安心して問い掛けに俺は応える。しばし間が空く。
「そうだよ。こんな所にどうやってきたのかな?」
そんなのはこっちが教えて欲しい、そのまま言葉を選んで伝える。
「分かりません。気付いたらこの建物の少し離れた所に立っていたんです。」
沈黙が生まれる。俺はそのまま素直に心境を伝える事にした。
「この建物には歩いてきました。でも、この荒野?砂漠ですか?この場所自体にはどうやって、いつ来たかも自分でも分からないんです」
まだ沈黙は続いていたが、ゆっくりと内開きの扉が開く軋む音がしだした。
そこには背の低い、燃えるように赤い髪をポニーテールにした耳の長い、そう、所謂エルフと呼ばれそうな見た目の少女が立っていた。




