砂漠で歌舞伎揚を齧る 十三
「本気ですか?」
「本気だよ、冗談なんかじゃないよ!?」
どうしよう。さっきまでの感情とか気不味さがどこかに行ってしまった気がする。
「どういった手段や計画でその、企み、ですか。それを実行するんですか?」
「大丈夫、ちゃんと考えてあるよ。直ぐに出来る事じゃないのは分かりきっているからね。とりあえず10年で初期構想分を終わらせるつもりだよ」
10年、10年?1000年を生きるかもしれない長命種の感覚で言わないで欲しい。俺の身体は20歳に戻してもらっているらしいけど、それでも今から始めて30歳、本当の年齢だと50歳超えてるんだけど。
「10年ですか。そう、そうですか。最初に何をするんですか?」
「先ずはね、君がここに現れてから3日後。あ、この3日後が現れたその日からなのか、次の日からなのかが微妙だから誤差はあるんだろうけどとにかく2日後にはここに商人の荷馬車が立ち寄るんだ」
随分と具体的な事を言うんだな。あれか?俺がここに現れるって教えた知人からの情報なのか?
「それも知人がレティさんに教えてくれた事ですか?」
「え?……あぁ、うん。それでね、続けて良いかな?」
雑な肯定だなぁ。これはなんか、また語るモードに入ったな?まぁいいか、とりあえず聞こうじゃないか。空気が重くなっていたからそれならそれで良いさ。
「その商人は私をここに運んでくれてね、このベッドに使ってる物なんかも私が商人から購入して運び入れてもらった物なんだけどね」
そうか、この人はこういった事でも俺の事を考えて私財を使ってくれていたんだ。少し申し訳ない気がする。
「私がここには趣味で地質を調べる為にしばらく居着くって説明をしてあるから不定期だけどここに寄ってくれるんだよ、ドワーフの町に用がある時がその不定期な時だね」
「ドワーフの町に用があるって事は、つまり……」
「毎回が毎回じゃないけど、ドワーフの人達を運ぶのも含まれているね。そして次に復路でこの宿場に寄る時は売りに出されるドワーフの一家を連れてくるはずなんだよ」
また具体的な事を言う。もう黙って聞いていよう。
「その家族は50代の両親と10代位の姉妹のはずなんだよ。恐らく都市に着いたら値踏みされて父親は技術奴隷か肉体労働奴隷、母親は娼館落ち、姉妹も同じか、良くてどこかの金を持っている人間の家で家政婦兼情婦ってとこかな。その家族を私達が都市に着く前のここで買い取るんだよ」
「何故です?」
「人手は多い方が良いじゃない?」
「でも俺がその人達と話せないと不便じゃないですか?」
「君はそうだろうね。だから両親は余裕が有ったら、その娘二人にはここで私と君とで君の言葉を覚えてもらうんだ。それで最悪、1年は費やしてもらうつもりだよ」
本当に長命種の思考っていうのは。これもう1ヶ月の短期駅前留学以下の時間感覚で言ってるんだろうな。
「そうしている間にここを宿場として父親と母親の力を借りて再興して拠点を得るんだ。商人にも次に立ち寄る時にそう伝えるよ、気が変わったってね」
「都市の前にここを不当占拠するんですね」
「大丈夫、ここの権利者なんて今どこにいるかも分からないし、後2年位はここを通るのは私が話題にしている商人しかいないから基本的に知られてしまう事もないよ。その商人も往復の際の生存率が上がる休憩点が出来るんだよ?悪くない話だよ」
つまり最悪ここで初期の10年の内の2年を消費するって考え方だな。しかしどうだろう?ここを休憩点に出来るだけの利点で商人は納得するんだろうか?こんな所に宿場を抱えてお前達に利益があるのかという疑問を持つと思うが。
「で、なんだけどね?ここで君の出番なんだよ」
泣きそうだった貴女はどこへ行ったんだ、もう俺が協力するの前提で話してきてないかこれ?凄く良い笑顔だ。




