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ペイジと誰か

「なあ、ペイジちゃん、ちょっと高くない?」

「高くないよ。こんなに安くできるところ、どこ探してもないよ」

「確かにそうだけどさ。でも、ペイジちゃんも知ってるだろう、俺たちがどんだけ安月給かってさ」

「そんなことあたしに関係ないよ。早くしないと、次の人が待ってる。今日は特別料金だから、お客さんいっぱい」

「そう急かさないでよ。すぐに準備するから。それにしても、園長も、つり目の腰巾着も、どこに行ってしまったのかなあ。今日は朝から姿を見かけてないんだけど。まあ、俺たちにしてみりゃ、小うるさいのがいなくて仕事しやすいんだけどね。それにこうやって、ペイジちゃんと遊ぶこともできるしね。だけど、ペイジちゃんは偉いよね。よく働いて。昼間は苑の仕事をして、夜は夜でこうやって秘密のバイトしてさ」

「あたし、お金、必要よ」

「ああ、そうだったね。確か、お母さんが病気なんだっけ?」

「そうよ。お母さんの病気の治療費を稼がないといけない」

「立派なもんだ」

「お母さんは、大切ね」

「それはそうなんだけどさ。だからなのかね、ペイジちゃんがここの人たちにも優しくできるのは」

「そうかもね」

「俺には無理だね。みんな強情で、身勝手で、何を考えているのかさっぱりわからない。特にあの物置小屋に集まってる人たちは理解不能だよ。小屋の中でぶつぶつ話し合ったり、鍵のかかってないドアに自分で作った鍵みたいなものを差し込んだり、夜中に救急室や安置所に忍び込んだりしてさ。もう一年近くあんなことやってるよ。何やってんだろうね、あの人たち。俺には全く理解できないんだけど、あの人たちはあの人たちなりに意思疎通できてるのかね。そういや、物置小屋のメンバーたちも昨日から姿が見えないんだけど、どこに行っちまったのかなあ? まあ、いいか。そのうち見つかるだろう。どっかで死んでたら、それまでだ」

「あなた酷い人ね」

「だって本当のことだろう。そこまの面倒は見きれないよ。物置小屋のメンバーと言えばさ、あの金髪の人。あの人、面白いんだよ。突然、俺たちのところに来て、『僕も手伝いますよ』なんて言い出すんだぜ。笑っちゃうだろう。全く、エンジェルさんたちには手を焼くよ。知ってる、エンジェルさんって?」

「知らないね」

「身寄りのない人や、身内に見捨てられた人。死ぬまでこっちで面倒みなきゃならない人たち。ほら、天使のぬいぐるみがあるでしょ。部屋にあのぬいぐるみの置いてある人たちがエンジェルさん。全く、笑っちゃうよな。あの物置小屋によく行ってる女の人、ほらこの前、ペイジちゃんに秘密の仕事を頼んだとき、覗いていた人いるだろう? あの人、ここのこと何と思ってるか知ってる? 実験施設なんだってさ。俺たちは悪の手先で、残酷な人体実験をしてるんだと。おかしな話だよ、まったく。きっと、他にも宇宙人と戦ってるだとか、自分は大泥棒になって金持ちの屋敷に忍び込んでいるだとか、悪者に攫われたお姫様を助けに来たんだとか、みんな好き勝手に妄想をして、その世界で生きているんだろうね。ほんと、どうしようもねえよなあ。ここの人たちもさ、元は学者だとか経営者だとか資産家だとか、『特別な人たち』なんだけど、ああなっちまったらもう終わりだな。子供だよ、子供。子供と一緒だよ。ん? 誰か通ったか?」

「気のせいよ」

「ああそうだな。こんな時間に外をほっつき歩く人はいないよな。もしかしたら、物置小屋のメンバーだったかもな。まあ、いいや、それならそれで。後から見に行けば。全く、ここの人が、鏡とか硝子とか写る自分の姿を見て、お化けが出ただの、死んだ人が生き返っただのと言うもんだから、全部曇り硝子なっていて、外もろくに見られやしない。鏡も置いてないから、宿直のあと、わざわざ職員室前の姿見を使わなきゃいけないし不便なことこの上ないよ。あ、そうだ。ゴミ捨て場に置いといた古い鏡を処分するの忘れていたよ。また、園長にどやされるな」

「ねえ、早くしないと、時間来るよ」

「ああ、ごめんごめん。せっかくの楽しい時間なのに面倒なこと思い出しちゃったよ。まったく、こっちは高い金払ってるんだからね、存分に堪能させてもらわないとね。にしても、ペイジちゃん、言葉、上手くなったよね」

「それはそうよ。もうずいぶん長いこといるから」

「まあ、そうだよね。来た頃は、『ワカリマセン』、『デキマセン』だけだったのに、いまじゃペラペラだもんね。いまからもっといいことも教えてあげるからね、っと、ああ、ズボンに引っ掛かっちゃったよ」

「あなた元気ね」

「当たり前よ。なんせ、一ヶ月ぶりだからね」

「よく言うよ。あなたいつも一ヶ月に一回だけのくせに」

「痛いとこつくね。仕方ないよ、だって、俺たち安月給だもん。言ったろ。こうして給料日に、ペイジちゃんと遊ぶのだけが楽しみなんだから……ん?」

「どうした?」

「何かにおわないか?」

「におい? あたし何もにおわないよ」

「いや、何か変ないないがする。これは、何か燃えるにおいだ」

「あたしにはわからないよ」

「見てみろ、窓の外。火の手が上がってる。火事だ!」

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