潜入計画
「次の計画ってのは?」
ジョーが訊いた。
「うん。昨日、マリーには話したんだが、僕たちみんなで、実験室に忍び込もうと思う」
クリスがそう告げると、マリー以外の三人は瞬きも忘れて、クリスを見つめた。
「正気か、クリス?」
ケンが詰め寄る。
「無論だ。このまま安全なところから学園を観察しているだけでは、いつまでたっても真相にはたどり着けない。立ち止まったままでは何も解決しない。いまこそ、一歩踏み出して、学園の中枢に切り込むときだ。ここにいる全員でね」
クリスの台詞のあと、短い沈黙が訪れた。
実験室に忍び込む。それがどれほど危険なことか、ここにいる人間ならばすぐにわかるはずだった。
「俺はやるぜ」
沈黙を破って、ジョーが真っ先に言った。
ケンとトミーは迷っているようだった。
「他はどうするんだ?」
ジョーは残る二人に問いかけた。
「俺にできるかな。俺、太っちょだし……」
ケンは弱音をこぼした。
「ぼ、僕は、ど、どんくさいから……」とトミーも及び腰だ。
「何を言ってるんだよ、お前ら。お前らは、このままこのクソみたいな学園にいいようにされて、黙ってるつもりかよ。リンダや他の生徒みたいに、わけのわかんねえ実験に使われて、殺されて、それでいいのかよ」
ジョーに叱咤され、ふたりは顔を見合わせた。
「それにお前たちは、どんくさくもないし、役立たずでもない。お前らは、これまで学園に見つからず、捕まらず、ずっと秘密を探ってきたじゃないか。とっ捕まった俺よりもよっぽど優秀だ」
ジョーはさらに言い加えた。
「本気でそう思ってるのか、ジョー?」
ケンが不安そうに確認する。
「当たり前だろ」とジョーは真剣な眼差しで応える。
「ぼ、僕は、ど、どんくさくないのかい?」
「もちろんだ。お前はどんくさくない」
ジョーは断言した。
ジョーに鼓舞され、ふたりの顔に少しずつ威勢が戻る。ジョーの言葉には、マリーがそうであったように、人を勇気づける不思議な力があった。
ケンとトミーは頷き合った。
「そうだな。やるだけはやらないとな」
ケンが言った。
「ああ、そうだ」
「ぼ、僕も学園の実験に使われるのは嫌だ」
トミーも乗ってきた。
「うん、その意気だ」
ジョーがケンとトミーの肩に手を置き、大きく揺さぶった。ふたりは、はにかむような笑みを浮かべた。
「心配しなくても、君たちは君たちのできることをやってくれればそれで十分だ。僕はそういう計画を立てた」
クリスが言い、それから、マリーの顔を見る。
「君はどうする、マリー?」
クリスが訊ねた。
が、訊かれるまでものない。そのために、恐怖を乗り越え、ここにきたのだ。
「もちろん、わたしもやるわ」
マリーは即答した。
「よし、それじゃいまから、潜入計画をみんなに伝える」
クリスが力を込めて告げた。




