黄昏に目覚める魔法と剣
月日は流れ、俺は十歳になった。
この歳になる頃には、魔術と剣術に目覚めていた。
家の裏庭で、朝から日が沈むまで剣を振るい、魔力を練る。
単調で地味な鍛錬の繰り返し。だが、それでも続けるしかなかった。
そんな俺にも厄介な存在がいる。
姉―リリーだ。
ツンとした態度に高いプライドがあり、感じが悪い。だが、その実力は本物だった。
気に食わない。
(いつか絶対、追い越す)
そう思いながら剣を振るうが、現実は甘くない。
できるのは、せいぜい小石を浮かせること。
火を灯すこと。水をわずかに生み出すこと。
それだけだ。
「……くそっ」
思わず舌打ちが漏れる。
転生したというのに、この程度か。
前世と何も変わらない。
努力しても、報われないまま終わるのか。
―そんなのは、嫌だ。
俺は再び目を閉じ、魔力を練る。
失敗してもいい。
それでも続けるしかない。
すると、その時だった。
「レイアン」
背後から、聞き慣れた声がする。
リリーだ。
「魔術が上手くいかない顔してるわね」
「……別に」
そっけなく返すが、図星だった。
しばらくの沈黙。
そして、意外な言葉が続く。
「魔術を唱える時はね、心と言葉を一つにするの」
思わず眉をひそめる。
「は?」
「だから、詠唱と自分のイメージがズレてるの。形だけ真似しても意味ないわ」
淡々とした口調。
相変わらず上から目線だ。
「……やってみなさいよ」
腹は立つが、ここで意地を張っても仕方ない。
俺はゆっくりと息を吸い、目を閉じる。
頭の中に、はっきりと炎を思い描く。
揺らめく熱。燃え上がる赤。全てを焼き尽くす力。
そして、そのイメージと重ねるように言葉を紡ぐ。
「灯れ」
その瞬間。
ボッ、と音を立てて炎が生まれた。
今までとは違う確かな“火”。
「……っ!」
思わず息を呑む。
魔力の流れが、はっきりと分かる。
まるで自分の体の一部のように、自然に動いている。
(これが……魔術……!)
高揚が胸を満たす。
「……ふん」
リリーが小さく鼻を鳴らす。
「やればできるじゃない」
その言葉に、少しだけ悔しさが混じる。
「……お前に言われたくない」
「なによ、その言い方」
いつものように軽く睨み合う。
だが、不思議と嫌な空気じゃなかった。
(これはまずいな)
だが、その日を境に、俺の魔術は目に見えて変わった。
火はより大きく、より鋭く。
水は形を保ち、自在に動く。
風は刃となり、木の枝を切り裂く。
剣術も、それに引きずられるように精度が上がっていった。
前世では得られなかった感覚。
積み重ねたものが、形になっていく実感。
それが、たまらなく嬉しかった。
もっと強くなる。
この力で、全てを変えるために。




