ひとつ 屋根の下
それから俺のもとに家族は時折訪れてきた。
父はそっと手を差し伸べ、俺の小さな体を抱き上げる。
母はミルクを温める仕草を見せながら、俺の頬に触れる。
姉は少し離れた場所で、好奇心いっぱいの瞳でこちらを覗き込んでいる。
そんな毎日だ。そう、この何気ない日常は、俺にとっての幸せだ。
まだこの世界に来て間もない。転生して、少しずつここでの生活に慣れてきた。
まだ、現実は完全には受け入れられない。でも、ただただ幸せだ。
鏡をじっと見つめる。
そして、俺はあることに気づいてしまった。
ちっちゃな手と足、柔らかい髪。だけど、俺は知っている―自分がこの家の中でひときわ目立つイケメンだってことを。
赤い瞳はちょっと珍しく、黒髪の父に似て凛々しい。ぷにぷにのほっぺも、笑うと母と姉に負けないくらいかわいい。
まだ声も出せないけど、その表情だけで「俺って格好いいんだ」と思ってしまう。
ふと、父の胸に顔をうずめる。小さな体を抱きしめられ、自然とにこにこしてしまう。
母が頬に触れると、手を伸ばして甘える仕草を見せる。自分の可愛さを知ってか知らずか、赤ちゃんの俺は全力でそれを活かしている。
でも、そんな俺を姉は見透かしている。
「両親を取られたくない」 そういう目で、遠くから小さく眉をひそめ、口を尖らせている。
それでも俺は、姉の視線に気づきながら、わざと笑顔を見せて手足をばたつかせる。声はまだ出せないけれど、この小さな仕草で「可愛い俺」をアピールするのだ。




