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28、宣戦布告

 魔物討伐から帰ってきて十日が経った。騎士団から教会に対して、魔除光に関する詳しい説明があったが、壊れたのは騎士団の品質管理に問題があっただけだと言われた。


 彼女が教会に対して、魔除光に関する返答を求めていたので、これが全ての答えらしい。


 騎士団は、魔除光が壊れた件に関して、決して意図的ではなく自然に壊れたものだと結論付けたことになる。


 ただ、今のサリーには、そんなことよりも気になることがあった。 魔物討伐から帰ってきて貴族学院に通っているが、あれからジルが学院に顔を出してないからだ。


(サリー、やっぱりマリーも、軟禁されているわ)

(ジルに続いて、マリーまで)


 嫌な気がしてエルシーに調べてもらったところ、どうやらジルだけではなく、マリーまで家族に軟禁されていた。


 エルシーが調べたところ、二人とも両親に外出禁止を命じられており、更に部屋から一歩も出ないように、厳しい監視付きの措置が取られていた。


(二人が軟禁された、理由は分かる?)

(それが良く分からないのです。二人がメイドに理由を聞いても、メイドは知りませんと答えるだけだったわ)

(二人の御両親は、何か話してない?)

(御両親は、何度か深刻な顔で話し合ってたけど、今は仕方ない。どうにもならない。そんな感じだった)

(なにが仕方ないのかしら?)

(それが、ーーージルの御両親は、カルドベール公爵家には逆らえないと)

「マリーの家に問題があるってこと?」


 驚愕の事実が出てきて、サリーは念話ではなく大声で叫んでしまい、慌てて周囲を伺った。幸い誰もいないチャペル横の裏庭だから良かったが、これが講義室なら問題だ。


 きっと第一王子に振られたショックで気が触れたと、有ること無いこと面白可笑しく噂されていたかもしれない。


 チェリーナ達に決闘という名の制裁を加えてから、学院内では目立った嫌がらせを受けなくなり、彼女は再びお気に入りのチャペル横の裏庭で(くつろ)いでいるが、陰口は相変わらず続いている。


(公爵家で、何か分かったことはないの?)

(マリー様の御両親が話し会っているところも確認しましたが、公爵家のために仕方ないとか、そんな感じの話でした)


 エルシーは、目目連みたいに監視対象に張り付いて調べることはできないが、幽霊だから誰にも気付かれる事なく調べることはできる。その結果、ガルドベール公爵家の影響で、スローローラン男爵家、ジルの両親がジルを軟禁してることが分かった。


(公爵家のためにか…… )

(サリー様、これって王族が関係しているのではないのでしょうか?)

(そうね、公爵家に影響を及ぼすなら、王族以外は考えられない)

(だとしても、王族が相手ならどうしょうもないですよ?)

(どうして? たとえ相手が国王陛下でも、わたくしの友人に手を出せば、絶対に許さないわ)

(ーーーそうだとしても、迂闊に手を出せば公爵家も、男爵家も取り返しのつかないことになります。それが、サリー様の望みですか?)

(そ、そうですね…… )


 サリーなら相手が国王でも、本気で潰してしまうかもしれない。彼女が暗殺者なら、狙われた相手は誰一人逃げられないだろう。サリーには、それだけの力がある。


 だが、簡単に王族に手を出し、国が潰れたら元も子もない。たとえ国が潰れなくても、公爵家や男爵家が没落してしまったら、サリーは大事な友人を二人も失ってしまい、一生後悔するだろう。


「ご無沙汰してます、サリーローレンス様」

「貴女は、カローナローラン」


 二人の会話を邪魔したのはカローナローラン、サリーの婚約者ランドブル第一王子の浮気相手だ。


「お久しぶりです。こんな所に来るなんて、珍しいですわね」

「えぇ、実はサリーナローレンス様が遠征した魔物討伐で、予期せぬ事に巻き込まれたとお聞きになりまして、心配で参りました」

(心にもないことを、良く言いますわね)

(えぇ、本当に)

「そうですか、ありがとう御座います。でも、大した問題ではありませんでしたから、心配なさらなくても宜しくてよ」

「そのようですね。あれ? 今日は、いつもの男爵令嬢はいらっしゃらないのですか?」


 今回の魔物討伐の話は、魔除光が壊れる事件が起きたため、騎士団から箝口令が敷かれ知る者は少ない。なのに、なぜカローナローレンがその事を知っているのか。


 それと、なぜここでジルの話が出てくるのか?


「あら? ジルのこと、なにか知っているのかしら?」

「いえ、ただ、彼女、スローローラン男爵家が、カルドベール公爵家に圧力を掛けられていると聞いたものですから」

「圧力ですか?」

「えぇ、なんでも昨年の飢饉で男爵家が没落寸前だったところを、救ったのがガルドベール公爵だったそうです。それなのに、今度はその支援金を今すぐ返せなんて、スローローラン男爵も可愛そうだこと」


 サリーとマリーは幼馴染で、昔からお互いの家を行き来している。当然、サリーはマリーの両親であるカルトベール夫妻とは顔見知りで、夫妻も彼女が子供の頃から可愛がってくれた。


 夫妻がとても優しい人だと知っているサリーにとって、理由もなく男爵家に支援金を返せと言うのは、どこか変だ。そして、そこにジルを軟禁している理由があると、サリーは考えた。


「どうして、公爵家がそんなことを?」

「さぁ、ただ、邪魔者を排除しようとしたのでは?」

「邪魔者とは?」

「それは、わたくしが口にすることはできかねます」

「教えてくださらないのですか?」

「そうですね、貴女のお父様、ローレンドール侯爵様なら、何か知っているのではなくて?」


 宣戦布告で間違いない。カローナローランは、男爵家の話も、公爵家の話も、そして騎士団の話も、全て知っているとサリーに語っている。そして、邪魔者を排除するためだと彼女に伝えた。


 つまり、これら全ての出来事は全てカローナローレンの指示で、邪魔者のサリーを排除するためだと、伝えてるのに等しい。


 カローナローレンは、サリーに喧嘩を売りに来た。


 だが、二人だけなら喧嘩で済むが、実際はそれぞれ貴族の家が絡んでくる。貴族の家が絡めば、それはもう戦争だ。


「そうですか、承知しました。父、ローレンドールに詳しくお聞きします」

「そのほうが、宜しいかと存じます」


 二人は笑顔で挨拶を交わすと、その場で別れた。



もう一つの作品です。


 勇者召喚の失敗例、運び屋。~俺は異世界でも日本でも、大金持ちになって幸せに暮らすぞ~

https://ncode.syosetu.com/n5810ij/


よろしくお願いします。

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