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27、騎士団の問題

 日が昇らない薄暗い景色に、次第に鮮やかな色が付け加えられていき、朝の清らかな光が木々の間から差し込んでくるなか、騎士団と聖法師の面々は眠れぬ朝を迎えた。


 二番隊の拠点の周囲は焼け焦げた魔物の死骸が無数に転がっており、拠点の中にも死骸は残っている。


 彼らは生き残った喜びもあるが、それ以上に他の騎士団のことが心配でしょうがなかった。


「サリーローレンス様、少し宜しいのでしょうか」


 サリーが寝てるテントの外から、見知った男の声が聞こえてくる。騎士団長のガードナーの声だ。


 サリーの横にはジルが寝ていて、サリーは、起こさないようにそっとテントの外に出る。


「おはようございます。騎士団長様」

「おはようございます。早速ですが、今後の行動についてですが」


 騎士団長のサリーに対する丁寧な言葉に一瞬戸惑うが、考えれば昨日彼に詰め寄られた時、侯爵家の権力を行使した事を思い出した。勿論、あの場はあれで良かったと思うが、いつまでもこのままでは流石に良くないだろう。


「その前に騎士団長様」

「はい、なんでしょうか?」

「昨日は侯爵としてあのように申しましたが、ここの最高指揮官は騎士団長様で御座います。ですので、敬語も必要ございません。それから、わたくしのことはサリーと呼び捨てにしてください」

「よろし、ーーーいや、ありがたい」


 騎士団長は一瞬口を閉ざし、サリーの顔を見て笑顔を作ると照れくさそうに頭を掻いた。


「それでお話とは?」

「はい、今後の行動を二番隊のギルくと話し合った結果、緊急集結信号を打ち上げるつもりです」

「緊急集結信号ですか?」

「はい、その信号を打ち上げれば、所定の場所に各隊が集まる決まりになっています」

「そう、そうなんですね」

「本来なら、昨日打ち上げようとも考えましたが、あの状況では打ち上げても、所定の場所に行く事もできず。更に彼らが気を使い、我々を助けに来ていたら、彼らも全滅の可能性がありましたので…… 」

「畏まりました。それでは、その様にお願いします」


 飽く迄も緊急集結信号は所定の場所に集まる決まりで、救助信号とは違うらしく、所定の場所に集合してから、その後の判断を相談する決まりらしい。


 今回のように魔除光が壊れてなかったら、拠点の中が一番安全なので、使用する場合は昼間に周囲の安全が確認できてから、使うことが決まりらしい。


「それと、懸念してた魔除光の事ですが」

「はい、何か分かりましたでしょうか?」

「それが、魔石が割れていました」

「そのようなこと、あるのでしょうか?」

「自然に割れたのか、誰かの意図かは、ハッキリ言って分かりません。取り敢えず、帰ってから専門の方に相談します」

「そうですね、今後このようなことが起こらないように、お願いします」

「勿論です」


 話が終わり、騎士団長は団員の元に戻って行った。サリーはテントに戻り、ジルを起こし事情を説明すると、もう一つのテントで寝てるカレンとサラサにも伝えた。


 全員で撤収作業を終え出発するまでは、緊急集結信号を打ち上げてから三十分後の事だった。


(エルシー、そちらは大丈夫でしょうか?)

(大丈夫です。三番隊も所定の場所に、移動してます)

(ありがとう御座います。そのままお願いしますね)

(それは良いのですが、今回のトラブルは変ではないですか?)

(魔除光が誰かの意図で壊れたというのですか?)

(はい。もしかしたら、カローナローラン嬢が関係してないでしょうか?)

(それは、有り得ると思いますが、あの人達に魔物までは準備できないと思います)


 今回の被害は魔除光が壊れた事が原因だが、それだけでは大した被害にはならない。勿論死者が出る可能性もあるが、それは限りなく少ないといえる。


 騎士団は魔除光だけに頼らず、きちんと見張りも立てていた。魔除光が壊れても拠点に侵入できるのは、精々数体だろう。実際今回も拠点に侵入できたのは、最初の二体だけだけなので、大きな違いはないだろう。


(それも、そうですね。ーーーでも、魔物の件は置いといて、魔除光が壊れた事に関しては、カローナローラン嬢を疑うべきだと思います)

(そうだとしても、今は調べようがないのです)

(目目連は、使えないのですか?)

(今回は、早めに使ったので、当分は使えません)


 目目連は隠密には使い勝手の良い式神だが、一月に合計で五日しか呼び出せないデメリットがある。今回は噂が流れた段階で使ったので、当分は使えない。


(そうですか。残念です)

(仕方ないです。それよりも問題なのは、魔物の大量出現です)

(言われたら、そうですね。あの数の魔物は、今でも信じられません)

(もしかして騎士団は、最初から何か知っていたのかもしれません)


 今回の魔物討伐は、従来の魔物討伐と違い、騎士団の数が二倍に増えていた。つまり騎士団は何か情報を掴んでて、敢えてその事を秘密にしてる可能性があると、サリーは考えた。


(確かに今回の騎士団の数は多いけど、偶々業魔の森周辺に魔物が多く出ると、話が出たからではないのですか?)

(その可能性もあります。ーーーそれと、魔除光の件も意図的だったら、騎士団の保安体制も大問題です)

(そうですね。残念ですがサリー様の仰る通り、騎士団には問題が多すぎます)


 騎士団も組織であり、組織は概ね一枚岩ではない。故に、今回の問題も全て繋がているとは考え難いが、何らかの問題が騎士団にあるように思えた。


 二人が念話で話していると、ジル達聖法師三人がサリーに近寄ってくる。


「どうしたのですか、ジル?」

「いえ、カレンとサラサが、サリー様にお礼をしたいそうです」

「別に宜しいですよ、気にしないでください」

「いいえ、サリー、きちんとお礼言わせて。ーーーサリー、本当にありがとう御座いました。」

「私もです。サリーローレンス様、ありがとう御座いました」

「どう致しまして、カレン、サラサ。ーーーそれとサラサ、わたくしには敬語は不要です。カレンと同じようにサリーと呼んでください」

「ありがとう、サリー」


 二人の謝辞を受け取ったサリーは、素直に嬉しかった。


 その後、所定の場所に到着した一番隊と二番隊は、他の騎士団と再会を果たす。他の騎士団は魔除光に問題はなく、魔物の数も少し多いくらいで、気になる程ではなかったらしい。


 騎士団長はサリーとの約束を守り、詳しいことを他の騎士団には話さなかった。それ故、魔除光が壊れたことは問題だが、帰還する程ではないと結論付けた。ただ、人数は二十二人体制から、倍の四十四人体制に変更して安全性を高めた。


 再度突入した業魔の森は、大量に魔物が出現することもなく、以前と変わらなかった。


 騎士団と聖法師は、順調に魔物を討伐すると予定通り三日後に帰還した。




新作です。

 勇者召喚の失敗例、運び屋。~俺は異世界でも日本でも、大金持ちになって幸せに暮らすぞ~

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よろしくお願いします。

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