↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/36

25、お姫様抱っ

 現在、一番隊は二番隊の拠点に向かい、全力で森の中を走っている。サリーのお陰で一番隊も二番隊もピンチは免れたが、未だ安心できる状態とは言えず、一刻も早く彼らの元に駆けつけなければならない。


 エルシーからの念話でサリーは、二番隊が今のところ問題はないと確認は取れていたが、その事を他の人に伝える事ができないでいた。幽霊が二番隊のことを見守ってますとは、とても言えないからだ。


 その結果、神様は、サリーに対して途轍もない試練を与えてしまう…… 


 それは、お姫様抱っこという名の悲劇だ。


 自業自得と言えばそれだけだが、それでも今の状況に納得するには無理がある。勿論自分が取った行動に不満があるわけではなく、今後も似たような事があれば、何度でも同じ事をするだろう。


 問題は、なぜ騎士団長に、お姫様抱っこされているのかということだ。


 身から出た錆びとはよく言ったもので、サリーの見事なまでの大嘘がこの結果を招いてしまった。


「あの、騎士団長。恥ずかしいので、わたくしも歩きます」

「ダメだ! 何かあれば、俺が侯爵様に顔向けできん」


 さっきから、この調子で騎士団長はサリーの話を全く聞かない。彼女が大人になってから初のお姫様抱っこは、好きでもない男になってしまった。


「騎士団長様、お願いします。わたくしに、サリー様を預けててください」

「ジルメリッサ嬢、それはダメだ。貴女もお疲れでしょう、サリーローレンス嬢は私に任せてください」

「大丈夫です。わたくしなら、サリー様のお陰で全く疲れておりません。ですから、是非サリー様を運ぶお手伝いをさせてください」

「だから、ジルメリッサ嬢。何かあれば、私の責任になるから無理です」


 ジルの必死の懇願を、雁として騎士団長は譲らない。彼は誰よりも責任感が強い男だ、だからこそ騎士団長にまでなったのだ。よって、サリーがお姫様だっこを免れない手段はない。


(わたくしが生きていたなら、サリー様をお姫様抱っこしてたのに…… )

(こんな時に、何を言っているのですか? エルシー)

(だって、ジルではないけど、わたくしだって、サリー様をお姫様抱っこしたいですもん)

(ですもんじゃないです。わたくしは金輪際、誰にもお姫様抱っこはさせません)


 人生で一番恥ずかしい思いをしている時に、エルシーは何を考えているのかと、鈍いサリーは思っていた。なにかと最近のエルシーは、妙にジルに対抗心を持っている。サリーには、彼女達の気持ちが分からないでいた。


 元々前世でも誰とも付き合った事がない彼女には、そんな感情が希薄だった。


 二番隊の拠点に到着した一番隊の騎士団は、すぐに元の一番隊の拠点から持ってきた魔除光を、二番隊の壊れた魔除光と交換する。


 拠点における一連の作業を終えた彼らは、サリーの事を話し合っていた。勿論、情報を絶対漏らさないという確約を、二番隊の騎士団から得るためだ。彼らも命が掛かっている以上、お互いに協力するしかない。


(サリー様、彼らは約束を守ってくれるでしょうか?)

(別に守ってくれなくても、良いのですよ)

(えっ、どうしてですか?)

(今日の事を、誰かに話しても信じてくれないでしょ。信じて貰えない話を誰かに話して、命を危険に晒すバカはいないわ)

(そうですね)


炎上鳳凰(えんじょうほうおう)』『雷鳴(かみなり)』『龍神(りゅうじん)』『人攫い地蔵』これらの話と、サリーが魔物使い(テイマー)で、そのうえ先天性の疾患だなんて、そんなバカげた話を誰が信じるというのか。


(エルシー、お願いがあるのです)

(お願いですか?)

(そうです。実は、他の騎士団の方達は大丈夫かと思いまして)

(分かりました. 調べてきます。ただ、前にも話した通り、わたくしはサリー様から一定以上の距離を離れることができません。だから調べても三番隊までですよ)

(それで良いです。面倒かけますけど、お願いしますね)

(それと場所が分からないので、少し時間がかかります)

(それも仕方ないことです。ありがとう、エルシー)


 一番隊と二番隊だけの魔除光が、同時に壊れたとは考えられなかった。そこで他の隊の魔除光も同じように壊れているのではと考え、三番隊だけでも調べることにした。


 三番隊も同じように壊れていたら、騎士団の全滅も覚悟しなければならず、これはアルフレード王国のとっても大問題だ。


「サリー様、宜しいでしょうか」

「どうしたの、ジル」


 恍惚とした目つきでサリーを見つめながら、ジルが話しかけてきた。


「いえ、サリー様から預かった箱ですけど、あの力は?」

「あれは、わたくしの秘密です。いつか話しますので、待っていてもらえますか?」

「秘密…… 畏まりました。では、あの箱を頂くことはできませんか?」

「欲しいのですか? もう、不思議な力はないですよ」

「なくても良いのです。ただ、頂きたいだけです」

「宜しいですよ」

「ありがとう御座います」


 別に譲っても問題ないので、そんなに欲しいのならと、サリーはジルにプレゼントする。それよりも、どんな嘘を吐けばジルが納得してくれるのかと、彼女は悩んでいた。


 今回の魔物討伐は問題山積みとなったが、最大の問題を話し合ってた騎士団の結論が出たらしく、騎士団長がわざわざサリーの元まで来てくれた。


「サリーローレンス様、話をしても良いですか」

「騎士団長様、それで話し合いは終わったのですか?」

「はい、結論から言うと、魔除光の壊れた問題は国と教会に報告しますが、大量の魔物を討伐した件は、数を少なく見積もって報告します」

「それで、宜しいと存じます。くれぐれも、例の件は内密にお願いします」

「分かりました」


 悪代官みたいな物言いで、サリーは見事に危機的状況を乗り越えた。これで一先ず王国から逃げなくて済むと、彼女はホッと溜息を一つ吐いた。


 騎士団の話し合いの中で、彼女が一番気になってた事は、彼女自身が討伐した魔物の数の多さにある。あれだけの数の魔物を討伐したと言う事は、魔物の数が異常に多かったと言う事だ。


 つまり、国や教会に全ての報告を取りやめれば、今後の安全に確実に問題が残るし、報告すればサリーの事も話さなくてはならないからだ。


 結果、騎士団の方が、上手いこと処理してくれるので、サリーにとっては万々歳と言える。魔物の討伐数は彼らの手柄にもなるので、余計に秘密にしてくれるだろう。


「ところで、他の騎士団の事はどうなさるつもりですか?」

「気になりますが、聖法師の魔力が戻らないので、今動くことはできません」

「畏まりました。確かに仰る通りです。現状、動くのは危険ですからね」

「その通りです」


 騎士団長は賢明な判断を下した。騎士団も、今回の魔除光の件は問題にしてるようで、それが一番隊と二番隊だけと考える事は、危機感の欠如と言えよう。


 ただ、いくら他の騎士団が心配だからといって、現状を確かめに行くのは死にに行くようなものだ。


 騎士団長は仲間の事が心配で仕方ないのだろう、話してる間もずっと拳を握りしめていた。


(サリー様、三番隊は無事です。何も起こっていません)

(良かった。ありがとう。エルシー)


 サリーは、ホッと胸を撫で下ろした。


もう一つの作品、


『勇者召喚の失敗例、運び屋。〜俺は運び屋のスキルを使い、異世界に日本の商品と技術を持ち込み、異世界中に巨大な流通網を作り上げ、莫大な富を得て国王よりも権力を持ちます。〜』


https://ncode.syosetu.com/n5810ij/


よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] なるほど、知らない人達を助けたのは完全なる無防備という訳じゃないですね。この状況はスパイが居るの可能性が高いですから、どうしても気になってしまいます。 百合百合は尊いです〜 しかし実はエル…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。