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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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697 最強とは?



「ちなみにこの結界って、どんなタイプですか?」

 ローレン補佐官に訊くところによれば、結界の形も色々ある様に、結界そのものにも色々と種類がある話だった。

 物理攻撃や魔法を吸収し無効にしたり、受けた攻撃そのものを弾き返すタイプ。

 受けた攻撃の威力を数倍にして跳ね返したり、人を含めた生き物を檻みたいに閉じ込める結界もあるらしい。



 今、この場に張った結界はどのタイプなのか、莉奈にはまったく分からなかった。




 シュゼル皇子は、莉奈の疑問にニコリと笑う。

「物理と魔法の吸収型ですね」

「なるほど?」

 結界の外にいる観戦者には、何の被害もないという事の様だ。

 なら、イスに座って観戦していても安心だなと莉奈は頷く。

 ちなみに、吸収した魔法は結界を解けば、霧散するらしく害はないそうだ。



 そんな話をしていれば、結界の中にいるフェリクス王が意味深な発言をした。

「だから、人も出入り出来ねぇ」

「「え゛」」

 素手で戦う肉弾戦なら結界など必要ないが、武器を使用するなら弾かれた武器も飛んで来る可能性がある。だから、物理属性の結界。

 さすがに人を通して武器だけ通さない、そんな都合のイイ結界はないらしい。魔法吸収を付与したのは、魔法を使う可能性も考慮したのだろう。



 フェリクス王の言葉に、ジンとレイの焦った様な声が聞こえた。

 ただでさえ緊張しているのに、結界の中に閉じ込められたという、物理的な圧迫感が加わったのである。

 逃げる選択肢は元より持っていないが、強制的にこの空間から逃れられないと思うと、何だか妙に外へ出たくなるもの。

 ジンとレイは、もはや蛇に睨まれた蛙状態。



 2人が妙な緊張感を感じている中、疑問の声が上がった。

「え、陛下もですか?」

 莉奈である。

 素朴な疑問が浮かび、素直に口にしたのだ。

 だって"人も"と言うのであれば、当然"人"であるフェリクス王も出られない……ハズ。

 だが、フェリクス王は"魔王"であって"人"じゃない。

 絶対出られるに違いないと、莉奈は思っている。



「……」

 莉奈にそう言われたフェリクス王は、目を逸らし押し黙った。

 何故なら、ここで出られると言えば、己が人でないと認める様なもの。

 だが、出られないとも言えず、黙るしかなかったらしい。

 しかし、その沈黙こそが答えだと莉奈は思う。出られるからこそ黙ったのだ。

 だって、世界最強である魔王様が出られない訳がない。魔王を閉じ込める檻など、この世界のどこにも存在しないのだから。



「ふふっ」

 何も言えない兄王を見て、シュゼル皇子が笑っていた。

 "人も"と余計な言葉を付けた事により、矛盾が生じたからである。

 結果、シュゼル皇子が結界に閉じ込めたのは……ジンとレイだけだった。



 シュゼル皇子がクスリと笑う中、鼻で笑う声が交じる。

「リナなら出れんじゃね?」

 エギエディルス皇子である。

 普通なら、次兄シュゼルが張った結界を解いたり、割ったり出来る者などほとんどいない。しかし、ナックルダスターを装着した莉奈なら「とりゃあ」と結界を簡単に割りそうな気がした。



 莉奈はエギエディルス皇子をジト目で見る。

「エドは私を何だと思ってるのかな?」

「最強にか弱い女?」

「……」

 頭の後ろで腕を組んで笑うエギエディルス皇子に、莉奈は何も言えなかった。

 か弱いと言われたのに、微塵も嬉しくない。

 何故、か弱いに"最強"を付けると、こんなにもか弱さが薄まるのだろうか? もはや、一周回って強そうだ。



 ぐうの音も出ない莉奈を見て、フェリクス王達は笑うのであった。






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