第1話 メール
キーンコーンカーンコーン
学校のチャイムが校舎中に響き渡った。
クラスの人間がバッグに教科書やらノートを詰め込んでいる。
用が終わったのか一人一人教室を出て行く。
その中、雄二も教室を出て行こうとした。
「おう雄二。今から南校に行くぞ。」
雄二に話しかけてきたのは戒だった。
その後ろに3人くらい不良グループの人間がたっている。
「ん?何で南校?」
南校は東高から10分くらい歩くとある学校だった。
偏差値の高い東高とは反面、偏差値は33しかない。
学校の8割が不良。就職先はほぼヤクザ。いわば不良が集まる学校なのだ。
「今日の朝話したろ!!南校の奴らをぶちのめしたんだけどよー。
竜介さんに話が回っちまったらしく今日謝りに行くんだよ!」
そういえばそんな事を言ってた気がするなぁと思った。
竜介というのは、南校のOBでめちゃくちゃ性質が悪い奴だ。
鑑別にも入っていて、人を平気で刺したりもする。
さすがの戒でも頭があがらないらしく南校の奴に手をだすと頭を下げている。
しかし竜介自体は戒を気に入ってるようなので
普段から南校に手をだしても謝るだけで許してくれる。
何度か雄二も会った事があるが優しくしてもらっていて
ハンバーガーをおごってもらったりした。
「ん〜・・・今日は俺パスしていい?デートだからさ・・。」
雄二には彼女がいた。小柄でクリクリした目が印象的な女の子だ。
中学の時から付き合っていて今も続いている。
「それじゃあ仕方ねえな!じゃあまた明日な!」
諦めが早いが、戒はこういう時は結構いい奴で素直に引いてくれる。
それも雄二を大の親友だと思い込んでるからこそだと思うのだが。
戒と別れの挨拶をして少したつと雄二はため息をもらした。
それとほぼ同時に雄二の携帯の着信音が教室に響く。
「はい?」
「もしもし〜。奈美だよぉ。」
奈美と言うのはさっきも紹介したクリクリした目が印象的な雄二の彼女だ。
中学2年生の時から付き合ってるからもう3年になる。
一度も別れの危機もなく何だかんだで今も続いている。
それは雄二が怒る人間ではなかったからだ。
表と裏はあるが決して雄二は裏を見せなかった。
本当の自分と真逆に生きている。
表の雄二は口は悪いが優しく、容姿も可愛い感じで嫌われる対象ではなかった。
付き合ったときも奈美から告白してきた。嫌いではないし
断る理由もなかったのでOKをした。
しかしこんな彼女でさえ雄二の心の中では必要な人間ではなかった。
捨てる気になればいつでも捨てられる。
適当な会話を10分くらいやりとりして待ち合わせ場所を決める話題に入る。
「じゃあそこに5時ね♪ばいば〜ぃ。」
電話を切ると雄二はまたため息をもらした。
「疲れた・・・。」
そして雄二は教室をでて待ち合わせ場所へ向かった。
歩いていると見慣れた風景が目に入った。そしてまた新しい見慣れた風景が目に入る。
木。道路。空。雲。店。自転車。車。そして人。
その全てが何も感じない。
何で生きているんだろう。どうして自分を偽ってるんだろう。
今思えばこういう風に思うようになったのは高1の夏からだ。
時間がたつにつれて全ての人間が意味の無いものに感じるようになった。
最初は薄々だったけどだんだんと明確になった。
中学までは何も考えず楽しく心から笑っていた気がする。
もうそんな自分今とはかけ離れた遠い遠い存在だ。
だけど、戻りたいなんて思わない。逆に今の自分になれて嬉しかった。
だったら偽らず自分をさらけ出せばいい。
けど、そんな簡単なもんじゃないんだよな。
そしたら今まで作り上げてきた自分の位置それもなくなってしまうんだからさ。
手放したくなんてないんだよ。そうそんな弱い弱い自分。
俺もあそこに歩いている奴と同様、意味の無い存在なんだ。
本当の俺は一人だ。だけど偽りの俺は一人じゃない。
中学の頃大人になるっていうのは18歳になることだって誰かが言った。
俺もあと少しで18歳。これが大人になったってことか?
こう考えられるようになったのは大人になったからなのかな?
いや、違う。俺が今の自分になったのは、あの事件がきっかけ・・・・。
色々な事を考えながら歩いているといつの間にか待ち合わせ場所についていた。
時刻は5時2分。まだ奈美は着いていなかった。
ポケットからタバコを取り出し火をつける。
煙をはきながら腰を下ろし小10分。小柄な女の子が雄二のもとへ近づいてくる。
「ごめん待った〜???」
少しもごめんと言う顔はしていない。これはいつものことだ。
奈美が約束の時間に遅れてる来るのは日常茶飯事。
でもそれを雄二が指摘することはなかった。
「全然待ってないよ。俺も今来たとこだからさ。どこ行きたい?」
「ん〜いつものショッピングセンターがいいなぁ〜。
すっごい可愛い服があるお店見つけたんだ☆」
「わかった。じゃあ行こうか。」
雄二が歩き出すと奈美は腕を絡ませてくる。
雄二は驚くそぶりも見せず平然としている。
奈美は嬉しそうな顔で雄二に話しかける。
それに対して雄二は愛想笑いを繰り返していた。
ショッピングセンターに着くと、奈美は待ちきれないのか
雄二の手を強く引っ張り小走りで走り出す。
雄二も仕方ないなぁという顔(もちろん内心は違うが)で、走り出す。
服屋はショッピングセンターの二階にあった。
オシャレなお店。可愛い女物の服がたくさんおいてある。
中に入ると店員さんが「いらっしゃいませ〜。」と愛想のいい声で迎えてくれる。
中は今時の女子高生やカップルでいっぱいだった。
みんな楽しそうな顔で服を選んでいる。
「ね〜。どの服がアタシに似合いそう??」
たくさん並んである服の中を雄二がかきわける。
奈美は小さくて童顔だったのであまりキレイ目な服は似合わなかった。
と、いうより着れなかった。今来ている服も古着MIXみたいな格好だ。
雄二が服をかきわけているとディズニー系の服を見つけた。
「おっこれなんて奈美に似合うんじゃない?」
それはミッキーの模様がたくさんついているジャケットだった。
それを見て奈美は少し怒ったような顔をして
「も〜。アタシこんなんきれるほど若くないよぉ〜。」
そう言って雄二の胸を叩く。雄二はにやつきながら、その服を売り場にもどす。
その後店の中をくるくると回って、色々なものを手に取る。
そして目についた水玉模様のフリースを手に取った。
「ん〜、これとかどうかな?」
「わぁ!可愛いかもぉ。。これなら上に着れそうだしね♪」
それを奈美に渡すと本当に嬉しそうな顔をしている。
「試着してみれば?ちょうど試着室あいてるしさ。」
店の隅にある試着室を雄二は指を指した。
「うん♪じゃあ試着してくるね♪」
奈美が試着してる間、雄二も自分にあった服を探していた。
女性物が多かったが男性物も少し置いてある店だったので待ってる間
退屈ではなかった。たかが一着試着するだけだが、女性が鏡があるとこに入ると長い。
着終わっても髪の毛をチェックしたり化粧をチェックしたり、それは奈美も同様だった。
雄二が少し離れたところで服を見ていると試着室のカーテンが開いた。
「どうかな・・・似合ってる?」
少し今の服には合わなかったが、それでも変ではなかったし似合っていると雄二は思った。
「ん〜、70点って所かな?」
にやついた表情で雄二は答えた。
「も〜。それほめてるんだかバカにしてるんだかわかんないよぉ!」
むくれた表情で奈美はそっぽを向いている。
そんな奈美に雄二は優しくかけより頭をなでた。
「冗談だよ・・可愛いよ。」
奈美は照れたような表情をして雄二の胸に頭をコツンと当てた。
人が見ていたので少し雄二も焦ったのか奈美を自分から少し離した。
奈美もちょっと恥ずかしかったのか照れ笑いをしながらカーテンをしめた。
着替え終わると、それをレジまで持っていく。
奈美がサイフを取り出すと雄二は自分のサイフから
一万円を取り出しカウンターに置いた。
「これは俺からのプレゼントってことで・・・。」
奈美は少し悪いような表情をしたがすぐに微笑んだ。
「ありがとう。今度のデートの時に着ていくねぇ♪」
お会計をすますと店からでてショッピングセンターを歩き回った。
くだらない話をして冗談を言って笑ったりしながら。
奈美はこんな雄二が本当に大好きだった。時々何かを考えている顔をしてる所も。
自分には本当に優しくしてくれる所も。雄二の笑顔も。全てを愛していた。
この人だけはアタシのそばにずっといてくれる。あたしの弱いところも
強いところも全部全部わかってくれてるから。大好きだよ。雄二。
気づくと時間は9時を回っていたので奈美を家まで送って
お別れのキスをしてその日はサヨナラをした。
時刻9時45分。
雄二は家に着くと部屋の電気をつけることなくベッドに倒れこんだ。
「疲れた・・・。」
お互いに楽しい時間を過ごした。
奈美はそう思ってるかもしれないが雄二はそうでもなかった。
優しくするのも笑っているのもそれは自分の位置を守るため。
決して本当の雄二ではないし本当の自分を奈美には見せなかった。
幸せ。
誰もがそう思うような時間でも雄二は違かった。
ただ疲れるだけ・・・。
「俺って生きてて意味あるのかな・・・。」
ただ偽って、楽しくもない時間を生きる。
自分をさらけ出す事も出来ない。臆病な自分。
いっそのこと死んでしまおうなんて気持ちにもなる。
けどそれはできなかった。死ぬ事は怖かった。
「腹減ったけど、飯・・・作るのめんどくせぇなぁ・・。」
雄二の家に両親はいなかった。死んでしまった訳ではないが海外に住んでいる。
雄二も海外に来る事を誘われたが、
ここにいたいと誘いを断って、一人暮らしをしている。
断った理由は別に何かあるというわけでもなかったが、
単純に一人暮らしをしてみたかったそれだけだ。
「暇だな・・・。PCでもいじるかな。」
だるそうに立ち上がってPCのスイッチを入れた。
「あっ!そういえば・・・母さんからメール来てるかな。」
PCが立ち上がると雄二はPCのメールBOXを開いた。
ピコンという軽快な音が鳴った。{新着メッセージが三通あります}
「やっぱ来てる・・・。心配するから返しておくかな。」
その時雄二の目に一つのメールが目にとまった。
【一緒に自殺しませんか?】
「・・・・・・。」
そのメールにはサイトが貼り付けてあった。
少し、気になったが雄二は母のメールを再度クリックして返信を始めた。
自殺・・・。同じような考えを持っている人間がいるんだな。
死ぬ事が怖いから仲間を集めようとする。低俗な人間が考える事だ。
そして母にメールを返信し終わると、雄二はベッドに倒れこんだ。
そんな感じです。
自殺しませんか?というメールをみて雄二はどんな
行動をとるんでしょうね。
こんなにも充実した毎日を過ごしているのに
彼の心は全く充実していない。寂しい事です。




