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8.勝手に機密情報をばらしては駄目でしょう!!


「OH MY GOD!!!!」


……あらっ、失礼いたしました。

あまりのショックで前世で覚えていた言葉をつい叫んでしまった、わたくしことエタカリーナですわ。

意図せず交わされてしまった『血の契約』にパニック状態になってしまったのは仕方がないです。

何故なら『血の契約』=死エンドまっしぐら……これだけは絶対に避けなければいけなかったのに、どうしてこんな事になったのかしら?

最悪な気分で打ちひしがれていると、未だにわたくしの左手を握るこんな気分にさせている諸悪の根源であるバルトと目が合うと、ニヤリと笑みを浮かべ


「何故俺が『血の契約』を知っていたのか驚いているみたいだな?……ヒントはユリア様だ」


バルトから出た名前にわたくしはくらりと眩暈がした。

まさか、今日初めて出会った人からその名前を聞くとは思いもしなかったし、わたくしの正体がばれている事だという事を。

そう、考えると彼の身分も結構高いかもしれない。

彼の口から出た女性の名前はわたくしの……


「ちなみに俺の母とユリア様は親友だ」


お母様!!!わたくしの知らない所で何て事をやらかしてくれたの!!

親友相手だからって娘の秘密を明かしては駄目じゃないですのよ!!!


はっ、親友?確かバルトは母親と親友と言ってたわよね?お母様の親友と言えばあのお方しか知らないけど……。

もし、わたくしの想像するお方であれば、その息子であるバルトはやんごとなき身分に違いない。

グルグル考えを巡らしていると、バルトから爆弾を落とされた。


「改めてよろしくな!俺の婚約者」


軽くウインクするバルトにわたくしは再び固まってしまった。





***


「エタカリーナ様!私は貴方様に婚約者がいたと聞いた事がないのですが!」

「そうだ!そうだ!俺も初耳だぞ!!」

「逆玉が!!」


さっきからわたくしの騎士達がうるさい。

ユアンとレインは普段、仲が悪いのにこんな時に限って息がピッタリ合って一緒になってわたくしを問い詰めて来るし、ダン……何も言うまい。


「わたくしだって、婚約者がいたなんて初めて聞きましたわ!!」


そんなやり取りをしているわたくし達だけど、取りあえず今はバルトの話を聞くわよと、騎士達を宥めてバルトにくわしい話を求めると、あっさり自分の身の上話をペラペラ話してくれたわ。

彼はわたくしの読み通り、あのお方の息子で隣国の第二王子であり昔からわたくしの肖像画を半年に一回お母様から送られ、これが貴方の未来の花嫁よと教えられていたので、今日顔を見た瞬間にわたくしだという事に気付いた事など説明をしてくれたのだけど、その前にバルトの説明に気になった部分があるんですけど……。

お母様!!いつの間にわたくしの肖像画を送っているのですか!!

それも10年前からってお母様もそうだけど、お父様からも婚約者がいたなんわたくして聞いた事ありませんわよ!

これは、城に戻ってから詳しく二人から話を聞かないとダメですわね。

そして、どうしてお母様は『血の契約』の事をバルトに教えたのか問い詰めないといけませんわ。

ふと思い出した『血の契約』の事にわたくしはある疑問をもち、バルトに質問をしました。


「バルト、貴方はどうしてわたくしと『血の契約』を結んだの?お母様から聞いているのであれば、ある種の呪いですわよ?」


みなまで言わず、わたくしは彼に聞いた。

『血の契約』をする事、即ちこれから彼はわたくしに逆らえないし、契約を解除するには私を殺すしか解放されないのだから。



ゲームでは、攻略キャラである騎士達は王命だった為、残酷で我儘なエタカリーナに内心嫌がりながらも仕えていた。

『血の契約』についてはエタカリーナが騎士達を服従したい為に無理矢理に契約させられたと、イベントで誰かが言ってたと思う。

しかし、ヒロインである聖女に出会い彼らもエタカリーナから解放されたいと願い、エタカリーナのさまざまな悪行を糾弾し追いつめ後半は処刑に持っていくのだ。

そしてエタカリーナが死ぬ事により彼らが解放され甘々恋愛イベントが始まるという流れになっていく。


……嫌な事を思い出したけど今はそれ所ではないわ。

わたくしは改めてバルトの目を見つめ返答を求めた。

バルトは少し考える素振りを見せながら、


「まぁ、そうだな……。保険の様なもんだ」

「?」


返って来た言葉の意味が全くわからなかった。

『血の契約』が保険替わりとはどういう事なのだろう?ハテナ顔の私に、バルトは軽く笑みを浮かべ


「いずれ知る事があるだろうが、今は気にするな。多分、・・のお前は俺に理不尽な命令をしないだろう?だから俺は契約をしたんだ」


結局、契約した理由をバルトがハッキリと教えてくれなかったのでうむやむになってしまっていた。

そして、頭が混乱していた為バルトの台詞の中に隠されていた意味に気付かないままに。



「『血の契約』とは何ですか?もしかして先程バルトが行った行為の事ですか?」

「確かエタカリーナ様がある種の呪いって言ってたけど、俺も聞きたい!」

「……やり方は覚えている」


何かしら?さっきから騎士達が三人一組で絡んでくるわ。

それも、『血の契約』の事でわたくしでは無くバルトに聞いているの?

あっさりバルトには知られていたけど、一応王家の機密情報なのよね?多分バルトも理解している筈だから、教え……


「んっ、男女のまぐわいの様に俺とエタカリーナは遠く離れても繋がっているんだ」

「ちょっと!!誤解を招く卑猥な言い方をしないで!」


こらっ!そこの騎士共、目をキラキラしながらわたくしを見ないで!

レインは何を妄想したのか鼻血吹いてるし、一応貴方イケメン仕様の攻略キャラでしたわよね?

ユアンはじりじりとわたくしに近付いて来るし、ダンはダンで「どうやってエタカリーナ様にばれずに契約できるか」と、ブツブツ言ってるし本来ならわたくしから強制的に行う契約になるのに、何この展開?


「いやぁ、俺の婚約者は大変オモテになるなぁ?」

「バルトの言葉の所為ですわよ!それに、わたくし貴方を婚約者だと認めた訳でありません!」

「そうだな、正式に決まるのは来年だからな。それに今はまだ俺は旅を続けなければいけないからな……」


先程とは打って変わって真剣な表情になったバルトにわたくしはピタリと動きを止めた。

来年と言えば、ゲームが始まる年でもある。

その年に正式に婚約が決まるとはどういう事なのかしら?疑問に思っていると


「婚約については俺の母親とユリア様が王達に相談せず勝手に決めた事だが、その内打診が来るだろう。しかし、俺にはすべき仕事があるから正式にエタカリーナの婚約を申し出るのは来年になるという事だ。だが、形式上はまだだが体は繋がっているから一年間離れていても寂しがるなよ?」


婚約はお母様達とバルトが勝手に言いだした事だと、分かったけれど最後の台詞は要りませんわ。

と言うか、そのまま永遠に旅に出てれば正式に婚約が決まる事が無いのですけれどね。

そんな考えを持ちながら、バルトも攻略キャラだからゲームが始まる年に側にいるんでしょうね。

騎士では無く、わたくしの婚約者として……。


結局なんだかんだで、攻略キャラ達と関わってしまったわたくしは溜息をついた。

現在、みんなとの関係は良好に築いていると思うけどゲームが始まればどうなるか分からない。


取りあえず、後ろで「血の契約をしてくれ!!」と騒いでいる騎士達を残りの一年でどう回避するか、頭痛の種が増えた事に、わたくしはがっくりと肩を落とした。







一年後、ゲームスタートの初日にあたるこの日わたくしは謁見の間にてある女性を見つめていた。

その女性は王の御前なので、平伏している。

彼女はわたくしと同い年の15歳に筈なのに、身体つきがやけに悩殺ボディーなのだ。

絶対、バストはFカップ以上あるに違いない!

わたくしは精々大きく見積もっても……げふんっカップなのに、羨ましい……ではなく、ヒロインってこんなセクシーなイメージだったかしら?と頭をひねっていると、王であるお父様が


「表を上げよ」


ヒロインである聖女がゆっくりと顔をあげた瞬間に、わたくしの後ろで控えていた騎士達が息を飲む音が聞こえた。







騎士達と良好な関係を築いていると思っていたわたくしはヒロインの出現によりもろくも崩れるなど、この時思いもしなかったのでした。






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