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第5話 山村

 高速道路を走る小汚い軽自動車、俺はそれに乗っていた。


目的地は〇〇県の限界集落、暗日村(くらにちむら)


そこに呪いの元凶がある。


そしてその呪いを封じ込めるヒントもそこにある。


わずかな望みだが、呪いを止めることもできるかもしれない。


そうすれば、甥の気も晴れるはずだ。


 それに、もし呪いが本物であるならば、同じような事件は今後も起きるはずだ、もしかしたら例のBGMは他の所でも使用されているだろう。


 いや、今回の演劇のDVDだって、それを見た遺族にも呪いが連鎖する可能性だってあり得る。


それも阻止せねばなるまい。


長いこと洗車してない軽自動車は、スピードを上げた。






山に囲まれた村。 家は意外と何件も建っているが、人の気配はない。


ネットの情報では廃村寸前の限界集落との事だったが、営業している商店が1件あるだけで十分まともな村だと思う。


バス停を見つけて、その時刻表を読んでみる。 1日4回か、なかなか優秀じゃないか。


とりあえず商店の人に聞き込み調査をしてみるか。




色あせた【高橋商店】の看板に年季を感じた。


俺はガラガラと、ガラスの引き戸を開ける。


近所で採れた野菜、なんか自家製っぽい漬け物、大手メーカーのパン、ちょっとしたジュースにお菓子、生活雑貨など、なかなか悪くない品揃えだ。



「・・・いらっしゃい」


ラフな普段着にエプロン姿のオバちゃんが、笑顔で奥のレジから声をかけた。


ジロジロと観察するような視線を露骨に向けて来る。


まぁ、都市伝説の舞台になったんだから、よそ者が肝試しとか悪ふざけに来るのも良くあるのかもしれない。 ならよそ者を警戒するのも当然か。


とりあえず適当にパンとジュースを買い物かごに放り込み、レジに向かう。


「ハイまいど・・・ あんたも肝試しに来たの?」


「いいえ、その・・・ 親戚がある事件に巻き込まれまして、それであのですね、どうやらこの村で昔あった事件に関係あるんじゃないかと思いまして・・・ なにか解決の糸口がないかなー・・・なんて」


「死んだの? その親戚の人」


店員のオバちゃんの目つきが怖い。


「いいえ。 でも、イロイロ気に病んじゃってるので・・・その・・・」


ダメだ、なんか調査どころじゃ無い。 俺とオバちゃんの間に流れる空気は非常に居心地が悪くなっている。

空気が読めない男とよく過去の職場で言われた俺ですら分かる空気のまずさが、ここにある。


ガラガラ・・・


そのとき、店の入り口が再び開いた。


「すいません、ちょっとお聞きしたいことがあるのですが・・・」


「あれ、もしかして沢木(さわき)さん?」


聞き覚えのある声がして振り返った。


「刑事さん!? どうしてっ・・・」


あの2人の刑事と思わぬ再開をした。


「刑事? お客さん、アンタ逃亡犯とかじゃないよね?」


いぶかしげな眼で店員が俺をにらむ。


「ハハハ・・・ いえ、ちょっと先日、聞き込みをしたんですよ」


鶴谷(つるたに)刑事がその筋肉質な腕で「ちがうちがう」というジェスチャーをする。


「それより、この村の歴史に詳しい方がおられましたら、教えて欲しいのですが・・・」


桜上(さくらうえ)刑事が、にこやかな笑顔で店員のオバちゃんに近づいた。






店員のオバちゃんから得た情報から、ここ高橋商店からすぐ近所に住む守部(もりべ)長助(ちょうすけ)という人物が、この村の歴史に詳しいと聞き、俺たち3人は商店の横の空き地に車を停めさせてもらい、その人物に会いに徒歩で向かった。


「沢木さん、これ以上首を突っ込むなと言ったでしょう。 何が起こっても知りませんよ?」


桜上刑事が眉間に軽くしわを作りながら笑った。


「それは我々も同じでしょう桜上さん。俺たちも何度かこういう事件に遭遇しましたけど、今回は俺たちも死ぬかもしれないんですよ? でも、沢木さんはこの村のこと、やっぱり曲名の番号をヒントに?」


鶴谷刑事が俺の顔をのぞきこむ。


「ええ、でも、ネットの情報だし、ほぼ都市伝説化して尾ひれがついたようなものだから、直接現場に行ってみようかと」


「ということは、我々ほどの情報は得ていないのですね」


桜上刑事が少しだけ歩調を速めた。


「そりゃあまぁ、警察ほどの捜査力なんて俺は持ってないし・・・ 何かわかったんですか?」


俺の前に出た桜上刑事が振り向く。


「例の曲がアップロードされていたフリー音源のサイト。 その運営に問い合わせてみたんですが、奇妙なことに投稿者が何者か分からなかったそうです。 まさに、天から降ったか地から湧いたか・・・ 天才的なハッカーによって曲のデータを痕跡なく送り込んだか、あるいは超常的な力によるものか、あの曲はとにかく謎そのものでした」


超常的な力? むかし流行ったホラー小説の呪いのビデオテープみたいに、超能力者の悪霊がネット経由でサイトのサーバーに呪いの曲を念写したとでも言うのだろうか?


「桜上さん、俺たちの守秘義務。 忘れてませんか?」


鶴谷刑事が苦笑する。


「聞いた人が死ぬ呪いの曲が凶器で、しかも犯人は人間じゃないかもしれない。 そんな事件の情報なんて、漏洩しても誰も信じませんよ。 呪いは物的証拠にならないし、お化けは逮捕も裁判もできませんからね」


桜上刑事が人差し指を立てる。


「さて、続きはここで」


【守部】の表札の前で、俺たちは立ち止った。

読んでくださり、ありがとうございます。


高評価☆☆☆☆☆ 感想、たいへん励みになります。


よろしくお願いします。

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