第16話「融合」
訓練開始。
藤崎は笑いながら
「あ~忘れていた。はじめに、私の異能について説明しておかねばね。私の異能は〈自然治癒〉。自然治癒力というのは、生物に元々備わっているものだが、私はそれが異常に発達していてね。大抵の傷はすぐに治ってしまうんだよ。捜査官時代、この異能に何度助けられたことか……。だから君は、遠慮せずかかってこい! さあっ!」
亮馬はかかっていきたくても、ビーストになることができない。
しかし、ここは最新設備のトレーニングルームである。管制室には真柴が待機しており、真柴はモニターで二人の様子を見つつ、とあるスイッチを押した。
亮馬を強制的にビーストにするため、検査データをもとにした特殊な電磁波を発射。
亮馬は見る間に“ビースト”に変身した。
ビーストに変身した亮馬は、もう己が人間であることさえ、忘れている。
その獣性を剥き出しにし、瞳は異様な光を放ち、毛髪は殺気で逆立っている。
目の前にいる藤崎に、容赦なく襲いかかった。
藤崎もさすがにレジェンドで、簡単には捕まえられない。上下左右と動き回る。
ましてや、かわしながら、したたかにビーストを攻撃してくる。
なおさら、ビーストは怒りがこみ上げてくる。
こうして、半時間も経っただろうか。
「どうしたぁ~? 少年。70歳の老兵相手に手加減してくれているのかな? 君の本気はこんなもんじゃないだろぉ?」
ビーストの動きがピタリと止まった。
一瞬、シンとした空気。
藤崎は身構える。
「くるっ!」
まばたきにも及ばない一瞬。
藤崎の肩は切り裂かれた。
戦い続けて小半時間経っても、ビーストは息切れするどころか、その軽快さと力は増していく。
まさに神がかった“ビースト”だ。
傷ついた藤崎だが、高らかに笑っていた。
「アーッハッハッハ! 素晴らしいねぇ~!」
肩の傷は、見る間に塞がっていく。
こうして半日ほど、二人は死闘を繰り広げた。
と、突然、ビーストが後ずさると、後ろを向き、片ひざをついた。
殺気立った毛並みは静まり、静かに瞳を閉じている。
藤崎は落ち着いて語りかけた。
「亮馬君」
ビーストはゆっくりとこちらを向いた。
「“はい。藤崎先生”」
藤崎は大笑いした。
「アーッハッハッハ。実にお見事! 君はたった一日でやりきってしまったなぁ。素晴らしい“融合”だ! 一人で戻れるかね?」
「やってみます」
ビーストの姿は徐々に小さくなり、亮馬に戻った。
「君はもう、ビーストになることも、人間に戻ることもできる。またビーストになっても、理性を保てるだろう。何かあったら、すぐ私のところに来たまえ」
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亮馬はさすがに疲れて、その日はぐっすり眠った。
眠りの中でいろいろな夢を見る。
小さな時の自分、母の姿、幼稚園の帰り道、手をつないで通った病院、母の不安な顔、友達、はしゃいでいる自分、襲われて叫んでいる友達、ビースト、医者、薬、医者、薬…………
亮馬は汗をびっしょりかいて、跳ね起きた。
(あの医者……何者だ? 何かこう……変に、飲み込めない異物感。不安な感じ……。そうか、調べよう。明日、学校の帰りに寄ってみるか)
インフィニターとして狙われた経験のある亮馬は、みんなを守るためにも、不安要素を取り除かねばならないと思った。




