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第12話「能力タイプ」


片桐と亮馬が席に着くと、滝野は異能についての説明を始めた。


「えーっと……じゃあ、異能の説明を始めるね。まず、そもそもインフィニターっていうのは、感情で異能を操る特殊能力者のことをいうの。まあ多分ここまでは知ってるよね」


「はい」


亮馬は(うなづ)いた。


「インフィニターは様々な異能を持っている。どんな能力かは人それぞれ。炎を操ったり、触れたものを凍らせたり、瞬間移動出来たり……。ハイドシークが確認しているだけでもかなりの種類があるの。きっと未確認のものも含めたら、相当な数ね。あぁ……どんな異能があるのか、想像しただけでワクワクするわ……」


滝野のオタクスイッチが入ってしまったので、片桐が話を(さえぎ)るように「ゴホン」と咳払いをした。滝野はハッとして話を戻した。


「ええっと、ここまで話を聞いて、感情で異能を操るってどういうことー? って思ってるよねー?」


「はい」



「インフィニターにとって、感情はいわば、“起爆剤”。感情によって、能力のリミッターを外すことが出来るの。例えば、普段はそよ風を起こすくらいしか出来ないインフィニターでも、怒りなどの感情が最高潮に達した時、街ごと切り裂くような竜巻を起こせる……とかね。能力の変化のしかたは、インフィニターや状況によって様々よ。場合によっては、能力が弱まってしまう場合もあるわ。感情によって自身の異能を如何様(いかよう)にも変化させる……。だからインフィニターは、“無限の可能性を秘めた能力者”と呼ばれているのよ」


「へぇ……」


(無限の可能性とか、何かちょっと、カッケェな……。マンガっぽい……)


そんなことを思いつつ、亮馬は真剣な表情で話を聞いていた。


「ちょっとコレを見て」


滝野はそう言うと、タブレット端末を手に持ち、画面を亮馬に見せた。


画面には先程の分析結果が映し出されている。


「コレはね、遠坂君の分析の結果なんだけど。遠坂君の能力名は野獣〈ビースト〉。文字通り、身体能力の高い野獣に変身する能力ね。注目してほしいのはココ!」


そう言って滝野はグラフを指差した。


「凶暴性と変容性の値が高いでしょ? コレは遠坂君の能力が、感情の影響を受けやすいということを表しているわ。凶暴性はそのままの意味だけでなく、能力が暴走しやすいかというのも含まれているの。そして、変容性は能力が変化しやすいかを表す。この二つの値が高い遠坂君は、感情によっていくらでも、能力を進化させられるっていうわけ。君の能力の可能性は、私が見てきた中でも最高レベル! いや……もう別次元だよ! 本当にワクワクするわ!」



「は、はぁ……。そうなんですか……?」


(滝野さん、めっちゃワクワクしてるけどさ……。凶暴性って、高くて良いことあるの……? ヤバくない……?)


再びオタクスイッチが入っている滝野に、亮馬は押され気味だ。


「滝野、能力タイプの説明を頼む」


見かねた片桐が急かすように、次の話を(うなが)した。



「あっ、ハイハイ。能力タイプですね。さっき、感情が起爆剤と言ったけど、どういった条件で能力が強化されるかは、インフィニターによって異なっているの。それを私達の業界では能力タイプと言うわ。能力タイプは大きく分けて三種類。自らの感情を制御し、集中することで能力を強化する“集中型”。もう一つは、感情のどれかを突出させ、能力を強化する“増幅(ぞうふく)型”。そして三つ目は、集中と増幅、どちらの特徴も持ち合わせた“混合型”。遠坂君のタイプは混合型だね。集中しても、激情しても変化を起こす、まさにオールマイティープレイヤー!! 恐らく、コレは私の推測だけど、学校襲撃事件の時は、増幅型の特徴が大きく作用したんじゃないかな。能力が暴走気味になったのも、感情の増幅によって起きたことだと思う」



滝野の言葉に、亮馬はハッとした。

確かに、あの襲撃事件の時、亮馬の感情はオーバーヒートしていた。複雑に感情が絡み合い、心の中に秘めた思いが沸点に達したあの瞬間、野獣〈ビースト〉という能力は目覚めた。

感情によって能力が変化するというなら、興奮状態だったあの時に、能力が暴走したのも理解できる……。



「僕があの時、パニクってたから、野獣の力が暴走しちゃったってことですか?」


亮馬がポツリと言った。


「うん。そうそう。感情の暴走は、能力の暴走に直結するからね。異能に目覚める瞬間っていうのは、普段とは違う環境であることが多い。極度の緊張状態だったり、興奮状態だったりね。だから初めて異能を使う時は、どんな人でも暴走しやすいのよ。最初から能力を上手く操れる人なんていないわ。遠坂君だけじゃないから、心配しないで!」


滝野は優しく微笑んだ。


「ところで遠坂君、異能に目覚めた時、どんな感情を一番強く感じた? 怒りとか、悲しみとか恐怖とか……」


滝野の問いかけに、亮馬は少し考えてから答えた。


「うーん……。何が一番とかはなかったですね……。あの時は怖かったし、怒りもあったし、多分すごく焦ってもいたけど、クラスのみんなを守らなきゃって思いもあって……。色んな感情が、心の中でグチャグチャになってたと思います」


亮馬の答えに、滝野は微笑んだ。

これは先程の笑みとは違う。知的好奇心からくる微笑みだ。


「なるほど。それは興味深いねぇ~。普通、増幅型のインフィニターの中でも、怒りが起爆剤になる人とか、悲しみが起爆剤になる人とか、分かれるんだけど、遠坂君はそういった条件も飛び越えているのかもしれないね……。ますます研究意欲が()いてくるわ……」


またまた滝野の話が長引きそうなので、片桐は


「滝野、ありがとう。説明は以上だな」


と言って、強引に終わらせた。


「あ……はい。えーっと、ここまで聞いて、何か質問あるかな?」


片桐の圧に負けた滝野が、机の上の資料を片付けながら言った。


「いや~、特にはないです」


亮馬は頭をポリポリしながら答えた。

この状況で質問と言われても、すぐには思い浮かばなかった。


「そっか、そっか。まあ、何か困ったこととか、分からないことがあったら、相談してよ。力になるから! 遠坂君、またね!」


「はい。ありがとうございます」


亮馬は丁寧に頭を下げた。


「じゃあ、次の場所へ行こうか」


片桐に促され、亮馬は分析ルームを後にした。



少し歩いた後、背後から視線を感じる。

振り返ると、滝野が亮馬に向かって手をブンブン振っている。


亮馬は慌てて、手を振り返した。


滝野はニコニコと笑っている。

何だろう、滝野の笑顔からは、優しさも感じるが、それ以外に、新たな研究対象を見つけたという喜びも感じる。むしろそっちの感情の方が強い気がする。


亮馬はふと、もし人類に宇宙人が発見されたら、こんな気持ちなのかな、と思った。




 



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