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影が薄いけど魔法使いやっています  作者: りょう
外伝 人と狐の物語
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第92話腹ペコ狐と冒険者三人

「ふぅ、ごちそうさまでした。助けてくれてありがとう!」


「どういたしまして。困っている人がいたらたとえ種族が違えど助け合うのが私達冒険者ですから」


「私ミルセンって言うの。本当に助けてくれてありがとう!」


 スズカが渡した食べ物を見事に完食した妖狐族の女性、ミルセンはリンシアの手を握りながら何度も感謝をしていた。


「それにしても三日も何も食べていなかったなんて、何かあったの?」


「それは……」


「あ、話したくないならいいわよ。私達も無理に聞いたりはしないから」


 少し曇った顔をするミルセンに対して、笑顔でスズカは言う。私は彼女のこと言葉があったからこそ、ここにいられた。

 誰だって話したくない事だってあるし、それを無理に聞こうとする輩も間違っている。


 お互いを信頼する為にというのは間違っているとは言わない


 けど無理に聞くだけ聞いて、勝手に失望する方が間違っている。


「とは言えど、ミルセンはこれからどうするの? 察するに、戻る場所がないから行き倒れになっていたんだと勝手に思っているけど」


「帰る場所は……あるといえばあるけど、今は帰りたくない」


「そっか。じゃあしばらくは私達と一緒にいる? 丁度宿も取ってあるし」


「え? いいの?」


「いいも何も、帰る場所がないんでしょ? ならいいよね、二人とも」


「私は異議はありません」


「私も特には」


「三人とも……ありがとう」


 こうして私達三人、プラス妖狐族のミルセンの四人でしばらく一緒に行動することになった。このしばらくというのがかなりの時間になる事、そしてこの時の出会いが全ての引き金になる事、そんな事はこの時私達の誰もが思っていなかった。

 ■□■□■□

 その日の夜、私達が仕事のために借りた宿屋の一室で、ささやかながらミルセンの歓迎会が行われることになった。


「じゃあミルセンがしばらく私達の仲間になったことを記念して、乾杯!」


「「「乾杯!」」」


 乾杯と言っても明日も仕事をこなさなければならないので、お酒は飲まずの歓迎会。私達三人は慣れない仕事をした為、本当はかなり疲れているものの、ミルセンのためならばと、この歓迎会が催されることになった。


「わざわざ歓迎会なんて恥ずかしいよ。ただでさえご飯を食べさしてもらったのに」


「恥ずかしがる必要なんてないんですよ。これは私達の善意で行う歓迎会なんですから」


「そうそう。私達が楽しむためにするんだから」


「スズカはそれが本音」


「う、うるさい!」


「本当仲がいいね、三人は」


 クスッと笑うミルセン。


「その仲間にこれからミルセンも入るんだから、羨ましがる必要なんてないからね。何があっても私達はもう仲間なんだから!」


「何があっても?」


「そう、何があっても!」


 それに対してミルセンの肩を抱きながらスズカが力強く言う。


「何があっても……確かに私達は大丈夫かな」


「どうしたんですか、アリス。珍しく」


「珍しくは余計。それにたまたまそう思っただけだから」


「それならいいんですが……」


 スズカの言葉は確かに私に安心感を与えてくれた。けど時にそれが私の心を不安にさせることがある。もし二人が真実を知った時、二人は私に対してどんな感情を抱くのだろうと。

 考えたくないと思っても、頭がそれを許そうとしない。今までまだって何度も失ってきたのだから。


「何暗い顔しているのよアリス。折角の楽しい歓迎会なのに」


「ごめん。少しだけ考え事をしていた」


「だから歓迎会でそんなこと考えるなって」


「分かってる」


 スズカの言葉の通りだ。今私が考える事は未来のことじゃなくて今の事。こんなこと考えていたらミルセンの不安を逆に煽ってしまう。


「ごめん、少しだけ外出てくる」


「あ、ちょっとアリス! 相変わらず釣れないわね……」


「スズカが余計なこと言うからですよ」


「私のせいなの?!」


 ■□■□■□

 一度頭の中をスッキリさせるために外へ出た私は、すぐにその足を止めることになった。その原因は、


「誰?」


 宿を出た直後に感じた謎の視線。しかもその視線は明らかに私に敵意を向けている。


「完全に気配を消していたつもりだが、まさか簡単に気づかれるとはな」


 私の言葉に返事が返ってきた直後、その気配は一瞬で私の背後まで迫った。


「つっ! 何のつもり?」


 それを辛うじて人形で受け止める。私を襲撃してきたのは、ミルセンと同じ妖狐族の男だった。


「お前がうちの姫を攫った主犯格だな」


「攫うって私達はそんな事は」


「言い訳は無用。姫を返してもらう」


「男はこれだから……!」


 街の人を巻き込まないために私は一度街の外れまで逃げる。


「こんな所まで逃げてどういうつもりだ」


「元から私は逃げるつもりはない。そっちがその気なら、この場所でお前を倒させてもらう」


「なるほど。だがいいのか?」


「何が……っ!」


 だけどそれが失敗だったことに気がつく。私を囲むように感じる敵の気配。しかもその数は……。


「小癪な真似を」


「これも姫を取り返すためのこと。元々手を汚すつもりはなかったんだけどな」


 男はこれだから本当に嫌いだ。

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