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影が薄いけど魔法使いやっています  作者: りょう
第8章恋と色気と温泉のユドラシア
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第88話人形使いは闇の中へ

 フォルシアの事をユウマに任せ、廃墟へと足を踏み入れた私を待っていたのは、この中にいるであろう何者かを警戒しながら歩いていた。


(ユウマはお人好しにもほどがある。あれは絶対に私達の敵。そうでなければ……)


 私はフォルシアと出会った時から彼女を怪しんでいた。確かに妖狐族というのは存在するし、ユドラシアの近くに里もあると聞いた事はある。

 だから彼女が逃げて来たという話もあながち間違いではないと思っている。


 けど私が信じられたのはここまでだった


 その疑心が明確になったのは、先程私が彼女と交わした会話だった。ユウマにも話した通り彼女は私が闇魔法を使っている事を知っていた。


「どうして私の魔法のことを知っている」


「有名じゃないですか。闇魔法を使う人形使い、それが貴方ですよね。アリスさん」


「そこまで有名になったつもりはない」


 闇魔法は知っての通り禁忌の魔法であり、それを使える人物の情報が公になる事がまず希少だ。もしかしたら何かの偶然で知った可能性はゼロなのかもしれない、が。


「有名な話ですよ。アリスさんは……の一件で有名ですから」


「っ! どうしてそれをお前が」


 彼女はそれ以上のことを知っていた。それはまだユウマにも誰にも話していない、私のすべてのきっかけを彼女は知っていた。


「知りたいですか? でも教えてあげません」


「からかってるの?」


「からかっていません。でもよく考えれば分かると思いますよ、アリスさんが求めようとしている答え」


「私が求めようとしている……答え?」


 この言葉を聞いた時私は直感した。彼女がただの妖狐ではなく、何かしらの目的を持って私達に接触してきたことを。


(この狐、危険だ)


 この先ユウマの身に何が起きるか分からない、そう考えた私は仕方なく彼女に同行することにした。


 そしてその結果が今の状況である。


 ユウマは言っていた。フォルシアは暴走しているのだと。けど私にはそれが全て嘘のように見えた。


(風の魔法を使う狐……ようやく正体が見えてきた)


 私がたどり着いた真相を確かめるためにも、まずはこの廃墟の中にいる人物を見つけ出さなければ、そう思った時だった。


 突然それが崩壊したのは。


「しまっ……」


 ここまでの全てが罠だと気がついた時には、私は崩壊に巻き込まれ意識は闇の中へと消え去っていった。


(ユウマ……)


 私が約束を破る事になって、ごめん……。


 ■□■□■□

「これで全て終わりました。さあどうしますか? ユウマ様」


 崩壊し瓦礫となった廃墟呆然と見つめる僕に対して、あざ笑うかのようにフォルシアが声をかけてくる。


「どうしてこんな事を!」


「言ったじゃないですか、復讐だって」


「復讐?」


「何も知らないんですね。まあ知ったところで、もう彼女は戻ってきませんが」


「ふざけるな! アリスが死んだわけでもないのに」


「この状況で無事だと言える方が不思議ですが」


 僕はフォルシアの言葉を無視して、瓦礫へと駆ける。まだ崩壊してから時間は経っていない。それならまだ間に合う可能性だってある。


(こんな所で……こんな所で……)


 アリスを失うわけにはいかない。


「無駄だというのに。まあ万が一に生きたいられたら困りますので、邪魔はさせてもらいますが。風よ、刃となりて切り裂け!」


 そんな僕に対してフォルシアは、魔法で僕を妨害しようと試みようとする。背中に激しい痛みを感じるが、僕はそれでも瓦礫をどかす作業をやめない。


「なっ、どうして」


「このくらいの痛み、今のアリスに比べたら!」


「ならもう一度!」


 再び放たれる風の刃。僕はそれを再び身体で受けるが、それでも僕は身体を動かしてアリスを必死に探す。


「おかしいですよ! たとえ見つかっても助からない命なのに、どうしてそこまで必死に」


「仲間だからだよ!」


「仲間のためなら身体を張れるって言いたいんですか?!」


「そうだよ!」


 どんなに傷ついたって、どんなに苦しくたって、それ以上に苦しんでいる仲間がいるのに、助けないわけがない。


 それが仲間なんだから。


「そんな絆、壊してしまえばいいんです! 今度こそ」


「これ以上好き勝手にさせるわけないでしょ!」


 三度目の魔法が放たれようとした時、別の声が僕達の間に割って入ってくる。


(この、声……)


「よくも私達を……私の仲間を騙してくれたわね! フォルシア」


「ユウマ、大丈夫?」


 僕の隣にやって来て瓦礫を一緒にどかすハルカ。そして恐らく背後でフォルシアに刀を向けているであろうセレナ。


「遅すぎるよ、二人とも」


「二人が黙ってどこか行っちゃうからでしょ。私達がどれだけ探したと思ってるのよ」


「ごめん……でも今はそれより、アリスが……」


「分かってる! フォルシアはセレナに任せて、アリスを助けよう!」


「うん」


 痛む身体をなんとか堪えながら、ハルカと一緒にアリスを探す僕とハルカ。後ろではセレナが戦っている中、僕達は瓦礫の中から強い光が発せられているのを見つける。


「これは光?」


「もしかしたらここにアリスが」


 でも誰がこんな光を……。


『助けに……来てくれたなら、ちゃんと助けてよ! 馬鹿!』


 え? この声……


「シレナ?」

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