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影が薄いけど魔法使いやっています  作者: りょう
第8章恋と色気と温泉のユドラシア
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第87話荒ぶる風の狐 後編

「助けるって……そんな義理、あの狐にない」


「確かに一見したらフォルシアは裏切ったように見える。だけど」


 彼女は魔法を放つ直前僕に謝っていた


 そしてもしも、これが全て誰かの手によるものなら……。


「僕はフォルシアを信じる」


「だからどうして」


「それはこれが終わってからする!」


 僕は彼女を無視することなんてできなかった。上辺のだけの正義に見えたっていい。それでも僕は、


 このまだ幼い狐の少女を見捨てられない。


「ユウマはお人好しすぎる」


「多分この世界に来た影響だと思う」


「力、貸すからちゃんと説明してよ」


「……ありがとう! アリス」


 フォルシアが自ら起こした風は、彼女を中心とした竜巻のように周囲に吹き荒れていた。それを目の前にして、僕達は何とかする方法を模索する。


「この竜巻を止める方法はないかな」


「難しいと思う。この魔法風の魔法の中でも上位に値する魔法だから」


「でもそこまで威力はないような」


「元々この魔法は身を守るためにあるもの。威力は関係ない。使った者に近寄らせないためにあるから」


「なるほど」


 直接的な被害はないけど、下手に触れれば僕達の命はないという事か。となれば、彼女の魔力を切れるのが今の得策なのかもしれないけど、


「それも難しい。多分フォルシアの持つ魔力は……ユウマ、上!」


「っ!」


 アリスが言い終わる前に、再び空から火の魔法が僕達に降り注ぐ。


「あっちもまだ僕達を諦めてないのか……」


「どうする? ユウマ」


「アリスはあの廃墟にいる影を追って! その間に僕がフォルシアを何とかする」


「けど、これを何とかするのは不可能に近い」


「不可能だろうが何だろうが構わない。何か方法を見つける! だからアリスは」


「分かった。ただユウマ、無理だけは絶対に」


「分かってる!」


 アリスを廃墟に向かわせ、僕は再びフォルシアと対峙する。


「フォルシア、今僕が助けるから!」


 僕が考えるに、フォルシアの行動は彼女の耳の良さを利用した誰かによるものだと思われる。そしてその犯人はあの廃墟に見えた影に違いない。

 だから今この魔法がまだ放たれている間に、その犯人を捕らえてフォルシアも救う。それが今の僕とアリスに課せられている事。


「ユウマ……様。私に近づかないで……ください。この魔法は触れたりでもしたら」


 竜巻の中からフォルシアの悲痛な声が聞こえる。まだ彼女と出会ってたった一日。僕がしようとしている事は余計なお世話だし、アリスとの約束を裏切る者になるかもしれない。


 けど、この魔法を止めることができない中でできる事はただ一つ。


「大丈夫だよフォルシア。ちょっとの怪我くらい平気だから、そこから動かないでいいよ」


「ユウマ様……駄目です」


 僕は一歩ずつフォルシアの元へと歩いていく。中心に近づくにつれて、風はどんどん強くなり、僕の体に傷をつけてゆく。


「フォルシアにとっては余計なお世話なのかもしれない。けど、こんな正義でも助けられるなら」


 痛みをこらえながら僕は右手を伸ばす。その右手には光の魔法を纏わせて、僅かにでもこの魔法によるダメージを軽減させる。


「僕の手を掴んで! フォルシア!」


 そして僕は叫んだ。助けを求める彼女の名を。これで彼女が手を掴んでくれれば……。


「だから来たら駄目だって……言ったじゃないですか」


「え?」


 掴むどころか中心に引き込まれる僕の体。そして中心には、先程までの声がまるで嘘かのように平然とした顔のフォルシアがそこにはいた。


「まさかここまで演技に引っかかってくれるなんて、私は嬉しいですよ、ユウマ様」


「フォルシア?」


 演技? どこまでが?


「妖狐族の元から逃げて来るところまでは本当でした。しかしあんな男くらい、私からしてみれば雑魚でしかないんですよ」


「雑魚って……じゃあ何で僕に助けを」


「本当は誰でも良かったんですよ。冒険者ならば」


「どういうこと?」


「これ以上は企業秘密です」


 邪悪な笑みを浮かべてフォルシアは言う。何が企業秘密なのか、そんな事はさっぱり分からないけど、ハッキリしている事はただ一つ。


 彼女は最初から敵であったこと


 そして彼女は僕を……僕達を騙していたこと


「それよりこれから私達と一緒に来てもらいますよ」


 たった一日の関係ではあったかもしれない。けどセレナやハルカ、そして僕も彼女を信頼していた。だからこそ許さない。


「行くつもりはないよ」


「この逃げ場のない状況で何ができるんですか?」


「できるよ!」


 僕は光の剣を抜く。先程のダメージで右腕も動かすのは厳しい状況。けど動けるなら使える。


「もう両腕は使えないはずなのに、どうして……!」


 僕は剣を横薙ぎに一閃、斬撃と共にフォルシアに向けて三発放つが避けられる。


「私も結構戦闘経験積んでいるのでこの程度避けられます。残念でしたね」


「いや、これだけで充分」


 彼女が避けた斬撃は嵐にぶつかり、三発全てが貫通し、彼女を纏っていた風の魔法を打ち破った。


「私の魔法を……破壊するなんて」


「さあどうする? フォルシア」


 彼女に剣を突き立てるが、慌てた素振りも見せないフォルシア。その様子を不思議に思っていると、何かが崩れる音が背後からした。


 僕の背後にあったのは、廃墟。そしてそこに向かったのは……。


「え?」


「私の目的は最初から貴方じゃないんですよ、ユウマ様。彼女を引き寄せるための餌だったんです。そして作戦は全て成功しました」


 向かったのは……。




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