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影が薄いけど魔法使いやっています  作者: りょう
第8章恋と色気と温泉のユドラシア
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第89話少女の嘘 前編

 真っ暗だった


 私の視界に入る全てが暗闇で、音も何も聞こえない


 瓦礫の下敷きになった体の痛みすらも感じられない


 そう、これは死だ


 私はそう直感した


 私の魂は既にこの世にあらず、暗闇の中を彷徨っている


 そう、これは天罰なのだと


 死の人形使いと呼ばれた私への天罰なのだと


(闇の魔法使いの成れの果てが、自らが闇に飲まれるか……)


 実に呆気ない人生の幕切れ


 これならまだ病で倒れて死んだ方がマシだったとも思える。けど神様は、私にそんな甘い死に方は与えてくれなかった。


 しかも……


(ユウマ達、どう思っているんだろ)


 私は今更ながら死んでしまったことを後悔し始めている。今までだったらこんな想いなんて一度もしなかった。だけどユウマ達と出会って、沢山の時間を過ごして、私は……。


(後悔しても今更何の意味もないか……)


『こんな所で諦めていいの? アリス』


(え?)


 この声って……。


 ■□■□■□

 突然瓦礫の中から漏れ出した光。そして僕達の耳に届いたシレナの声。


「シレナ、どうして」


『話は後。急いでユウマ、アリスを瓦礫から守るのにも限界があるから』


 一度に二つの出来事が同時に起きたせいで、動揺はするものの僕とハルカは光が漏れ出しているところの瓦礫を協力してどかす。


 そして……。


「見えた! アリスの体が見えたよ!」


「本当に?!」


 瓦礫の隙間からアリスの体が見えて僕が声を出すと、後ろでセレナが反応する。


「アリス、今助けるから!」


 アリスの体は、シレナの魔法のおかげなのか光で守られていた。かなり深いところにいたので、シレナの力がなければ間違いなく助けられなかった。


「いくよハルカ、せーので引っ張るよ」


「うん!」


「「せーの!」」


 光に包まれたアリスの体を無事引っ張り出すことに成功すると、それとほぼ同時に彼女を守っていた光りが消えた。


『はぁ……はぁ……よかった、何とか間に合って』


 シレナの安心したような声が聞こえる。僕達もほっと一安心といきたいところだったけど、まだ事は終わっていない。


「ハルカ、アリスの事見てて」


「ユウマは?」


「僕は……フォルシアと決着をつけてくる」


「で、でもその体じゃ」


「分かってる」


 でもこれは僕自身が決着をつけなければならない事。たとえ体がボロボロでも、僕達を騙し、アリスを傷つけられた分の仕返しはしなければならない。


「ユウマ、アリスは?」


「気を失っているけど大丈夫。シレナが守ってくれた」


「シレナが?! でもどうして」


「分からない。いや、もしかしたら彼女なら知っているかもしれない」


 セレナの隣に立ち、長期の戦いに息を切らしているフォルシアを僕は見る。


「あの状況で生き残れるなんてあり得ない」


「あり得ない事かもしれないけど、起きたんだよ奇跡が」


「どうして私達の復讐を……邪魔するんですか! 郷を裏切ってまで、私はここまで来たのに!」


「フォルシアの事情は僕には分からない。けど教えてほしい。どうしてこんな事をしたのか」


「彼女は……私から大切なものを奪ったんですよ! 彼女の闇の力が、私から全てを奪っていったんです! 私のお父さんもお母さんも……全部! だから同じ目に合ったっていいじゃないですか!」


「そんな事はない!」


「っ!?」


「それじゃあフォルシアもやっている事が同じじゃないか!」


 もし本当にアリスがフォルシアの大切なものを奪ったのなら、それは確かに悪い事だ。でもだからといって、僕は復讐する事が正しいとは思えない。

 それでもしもアリスの命を奪っていたら、彼女もやっている事は何も変わらない。フォルシアは僕達から大切な仲間を奪おうとしたのだから。


(フォルシアのした事は、僕達にとって許されない事かもしれない。だけど……)


「同じことをして何が悪いんですか! 私は……私は……この手を血で染めてもいいと思ったんです。だから」


「フォルシア!」


 僕は彼女との距離を詰めて、彼女の頬を叩いた。魔法も剣も何も使わずに、怒りをその一発だけにこめて……。


「っ、な、何をするんですか!」


「ユウマ?」


「僕は事情は知らないし、アリスにした事を簡単に許すつもりはない。けど……許さないけど……僕はフォルシアを受け入れるよ」


「な、何を言って」


「フォルシアは最初出会った時、僕に助けを求めたよね。それも嘘だったの?」


「あ、あれは……」


「それに僕には引っかかる事が多いんだ。今回の件」


「引っかかること?」


 あの廃墟にはもう一人別の影がいた。あれはてっきりフォルシアの仲間だと思っていたけど、今彼女が追い込まれている状況で助けに来る様子もない。


「ねえフォルシア、あの廃墟にいた人はフォルシアが知っている人?」


「そ、そうですよ。あれは私の仲間で」


「ならどうしてさっき、魔法でフォルシアも狙っていたの? そして何で仲間なのに、今この状況になっても助けに来ないの?」


「そ、それは……」


「それにさっき、復讐のために何かに手に染めたみたいな言い方をしていたけど、その魔法は元から使えるものみたいだし、何より引っかかるのは……」


 それに加えて僕にはもう一つ腑に落ちない事があった。それはアリスが彼女から奪ったもの、フォルシアはさっき家族だと言っていた。けどそれはあり得ない。


「アリスが奪ったって言ったフォルシアのお父さんとお母さん、まだ生きてるよね?」


 何故なら彼女は最初に僕と出会った時に言っていた。


『あの場所に戻るくらいなら縁を切ってもいい』


 と。そう、フォルシアの話はここに来て矛盾だらけな事が多かった。だから今冷静になって考えた。


 真実は別にあるんじゃないかと。


「本当は今までの話が全部嘘で、何か別の事情があるんじゃないの?」


 シレナまで巻き込んでしまうような特別な事情が。

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