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影が薄いけど魔法使いやっています  作者: りょう
第8章恋と色気と温泉のユドラシア
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第80話温泉ロマンスは突然に①

 王都から馬車で揺られること丸半日。夕方頃に僕達は目的地のユドラシアに到着。到着したその足で、予め予約しておいた宿に荷物を置いて一息ついた。


「ここがユドラシアで一番の宿……確かにとても気持ちが落ち着くし、シレナが言っていたことは嘘じゃないみたいね」


「これ畳って言うんだっけ。すごい落ち着くね」


「この世界にもこう言う文化があって僕は嬉しいよ」


 温泉宿というだけあって、個室の作りはしっかりとした和風式になっていて、ベランダから見える景色からは竹も見えて、ここが日本だと言われても何の不思議もなかった。


「ところでどうしてユウマも同じ部屋なの?」


「有名な宿だから、一室だけしか予約が取れなかったんだよ」


 今回この宿が本当に有名な場所なだけあって、予約が取れた部屋も一室だけだったので、一室で四人で泊まることになってしまった。

 男の僕としては、何も悪くない話なのだけれど、女性の三人からしたら、不満が多いのかもしれない。


「やっぱり四人で一室なのは嫌だよね。僕だけ別の宿を今から探して」


「別に構わない」


 けどそれを否定したのは意外にもアリスだった。


「え? でも」


「ユウマが決めたことなんだから私は何も文句ない」


「私もアリスに賛成。ユウマだけ一人にしたら、四人での旅行の意味がなくなっちゃうからね」


「勿論私も賛成よ。それに今から探しても見つからないかもしれないでしょ?」


「ハルカにセレナも……」


 僕は少しだけ嬉しかった。ムラサメの一件もあって、もしかしたら三人は僕に怒っているかもしれないと思っていた節もあった。

 だからもし三人が、一緒の部屋で寝ることを反対したらそれも甘んじて受けようと思っていたけど、どうやらそれは僕の思い違いだったみたいだ。


(本当にシレナの言う通りだったんだ……)


 僕のした事はやっぱり間違っていなかったんだ。


「何にやけてるの? 気持ち悪い」


「急に辛辣!?」


「私達に隠し事、絶対に怪しいわね」


「セレナ、ユウマが何かしないか監視を続けないと駄目かもね」


「それも賛成」


「そんな事にまで賛成しなくていいから!」


 せっかくいい雰囲気出てたのに、台無しだよこれじゃ……。


 ■□■□■□

 夕食は宿が出してくれる物を堪能し(これも驚く事に和食だった)、お待ちかねの温泉お色気タイムに……。


 と言いたかったところだけど、


「まあやっぱりこうなるよね」


 僕は露天風呂から眺められる夜空を眺めながら呟いた。こういう異世界ものの温泉って、混浴だったりうっかり裸で鉢合わせとかあったりするものなのだけど、現実はそんなに甘くはないと言わんばかりに、隣の女風呂からセレナ達の話し声だけが仕切り版越しに聞こえる。


(何の話をしてるのかな?)


 盗み聞きは悪趣味かもしれないけど、普段聞かないような話が聞こえてくるかもしれないと思い僕は聞き耳を立てた。



「温泉の街ユドラシア。名前だけは聞いたことあったけど、名前の通りすごくいい街」


「アリスもやっぱりそう思う?ユウマがこんな所に四人だけで連れて来たがるなんて本当不思議な話よね」


「単なる親切心なだけかもさされないけど、なんか裏がありそうで怖いよね」


「男だから尚更」


 最初に聞こえてきたのはこんな会話だった。ここに来る前、来てからもずっと言っているけど僕は別に何も悪巧みはしていない。アリスの言う男だからと言うのは、世の男性に失礼だと言ってやりたい。


(ほんの少しは下心あるけどさ)


「アリスはそう言っているけど、本当は嬉しかったりするんじゃないの?」


「と、突然セレナは何を言い出す」


「ほら恥ずかしがってる。顔赤いよアリス」


「ハルカまでどうしてそんな事を。そ、それにこれはお風呂に入っているからで」


 からかい出す二人にアリスは必死に否定している。僕の目の前では決して見せないそんなやり取りに、僕は吹き出してしまいそうになってしまう。


「それは二人も同じのくせに」


「そ、そんな事ないわよ! いや、た、確かに私も少しは嬉しいけど」


「セレナ、分かりやすすぎだよ。アリスと一緒じゃん」


「ど、どうしてハルカはそんなに冷静なのよ」


「別に冷静ってわけじゃないけど、そこまで露骨にはならないって」


「そこまで露骨なの?!」


「うん」


 いかにも冷静に答えるハルカ。今までのハルカとは少し違った彼女の反応に、僕は少しだけ不思議な気持ちになる。


(あれ?ハルカ少しだけ様子が変?)


 僕の気のせいなのかもしれないけど。


「ハルカ、なんか元気ない?」


「私? 別にいつも通りだと思うけど」


「気のせいならいいけど」


「どうしてそんなこと聞くの? アリス」


「何でもない。忘れて」


 そんなハルカを心配するアリス。セレナから聞いた話だけど、どうやらハルカとアリスは僕が知らない間に少しだけ衝突したらしい。

 和解はしたらしいけど、セレナ曰く二人の間に微妙な空気がそれから流れて続けているらしい。


「と、ともかくユウマの事はこの旅行の間は警戒しないと。何をされるか分からないし」


「うん。そうしよう」


「ところでこのお風呂、そこに仕切り板があるけど、もしかして今の話ユウマが聞いてたりしないよね?」


「え?」


「あ」


 しばらくお風呂に出るのは危険だからやめておこう。

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