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影が薄いけど魔法使いやっています  作者: りょう
第8章恋と色気と温泉のユドラシア
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第79話温泉の地へ

 思わぬ誘いをシェルティアから受けた僕は、一度返事を保留して一度治癒所というところで、受けた怪我を治療することに。


 そして治療すること二時間


 気がつけば外もすっかり夜になった頃、治癒所を出るとセレナ達が出迎えてくれた。


「お疲れユウマ」


「すっかり暗くなっちゃったわね。まあここに着いたのが夕方だったから、仕方がないけど」


「流石に疲れて私も眠いよ」


「三人とも待っててくれてありがとう。他の皆は?」


「フェルナはシェルティア様のところ。サラはシーナと一緒に眠っちゃたし、師匠はあれから私も姿を見てない」


「そっか。じゃあ今は僕達四人きりなんだね」


 三人と合流した僕は、その足で王都へと向かう。王都では夜にも関わらず復旧作業が行われていて、僕達はそれを横目に見ながら用意された宿へと向かう。


「それでユウマ、シェルティア様となんの話をしたの?」


「難しい話はしてないんだ。ただ誘われたんだ」


「誘われたって?」


「王都復旧を手伝いながらしばらく王国騎士団で剣技を鍛えてみないかって」


「お、王国騎士団に?!」


 と最初に驚きの声を上げたのはやはりセレナだった。元騎士団の彼女だからこそ驚きは大きいのかもしれない。僕としてもこの話をシェルティアから聞いた時は驚いたけど、ある程度時間が経った今、僕の結論は固まっていた。


「でも僕は断ろうと思う。勿論王都の復旧は手伝うけど、騎士団の人には迷惑かけたくないし」


「断るなんて勿体ないじゃない。せっかく鍛えてもらえるなら、少しの間でも強くしてもらえた方がいいって」


「いや、うん、まあそうなんだけどさ」


 別に王国騎士団に入るわけじゃないから、鍛えてもらうだけならそれもいいんじゃないかって考えた。けど強くなることよりも今は大切にしたいことが僕にはあった。


 それは僕達四人で過ごす時間


「この二週間とちょっと、三人には迷惑をかけたわけだし、せめてそのお詫びくらいしたいかなって思って」


 王都に来てから色々なことが同時に起きすぎて四人だけでも一緒にいる時間が少なかった。それは王都の復旧をしながらでも作れる時間だけど、それ以外にできる方法を僕は考えていた。


「お詫びって何?」


「実はさ」


 ■□■□■□

「温泉宿?」


『そう。折角王都にまできてたんだからこれを乗り切って、皆で行こうよ』


 話は少しだけ遡り、ムラサメに捕まって一週間ほど経った頃に、シレナが温泉に行きたいと言い出した。


「この世界にもあるんだね、温泉って」


『お風呂があるんだから、当たり前でしょ。それでどう? 色々と落ち着いたらちょっとした旅行代わりに』


「それはいい提案だと思うけど、どうしてシレナが乗り気なの? 入らないのに」


『私は人形を通して体感するからいいの! あそこの温泉は、多分ユウマの世界とは比べ物にならないくらい気持ちいいんだから』


「そこまで言うなら考えておくよ」



 場所は王都から更に東に行った先の、ユドラシアという温泉が盛んな街として有名な場所。そこにシレナが絶賛するほどの温泉宿があるらしい。


「二泊三日の温泉旅行、移動時間も含めると五日ほどですか」


 僕はその計画を三人と合流前に話しておいた。復旧の手伝いをするといいながらすぐにここを離れることになるので、少し申し訳なかったからだ。


「その間だけでいいんで、僕達だけの時間をくれませんか?」


「王女としては特に何もいうことはございませんので、十分楽しんできてください。それより騎士団の件は……」


「それについては少しだけ考えさせてください。今は三人のために時間を使いたいんです」


 その時僕はシェルティアに曖昧な返答だけをしていた。でもその時点で本当は僕の答えは決まっていたのかもしれない。


 鍛えることよりも何が大切なのかを


 ■□■□■□

「本当に私達四人だけで旅行なんていいの? シーナくらいは連れて行ってあげても良かったんじゃない?」


「何度も言ったけど、四人だけの時間が欲しかったんだ。それに面倒はシェルティア様が見てくれると言ったし、僕達だけで楽しもうよ」


「そこまでいうなら......」


 二日後のの昼頃、僕達は再び馬車に揺られながらユドラシアへと向かっていた。


「ユウマ、一つ聞きたい」


「何? アリス」


「どうしてそこまで四人に拘る」


「どうしてってそれは......」


 言葉に困る僕。全てのキッカケがこの前のシレナの言葉だったからこそ、それを本人達に伝えるさは少しこそばゆいからだ。


「ほ、ほらもう僕達よなんでパーティを結成してからそこそこ経つし、こういう事もあってもいいのかなって思っただけ」


 まあ勿論その他に別の理由があるのだけれど、それは三人に伝えるということはきっとない。


「ふーん」


「怪しい」


「なにか隠している気がするんだけどなぁ、私」


「な、何も隠してないよ」


 女三人に対して男一人のパーティなのに、もう少しお色気のイベントがあったりしてもいいかなとか決してそんな事は思ってない。


「下心が見え見え」


「本当に何もないってば!」


 僕達四人だけの二泊三日の温泉旅行


 王都に来てから忙しかった僕達に初めて訪れた安らぎの時間


 しかしその安らぎさえも、思わぬ形で壊れることになるとはこの時の僕達は誰も思っていなかった。



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