第78話帰還と誘い
王都に無事に戻ってからも、アリスの人形からはおろか、僕の頭に直接聞こえてくることも一度もなかった。予期せぬ事が起きたことによって一番動揺したのはやはり僕だった。
「どういうことなの? シレナは確かアリスの人形の中にいたはずじゃ」
「反応がない。それどころか人形が空っぽ」
「人形が空っぽ?」
「この人形の中にあの神様はいない」
アリスの一言に僕は更に動揺する。だって先日まで当たり前のように聞こえていた声が突然聞こえなくなったら、動揺しない方がおかしい。
「何かあったのかな」
「私達が最後に聞いたのは、ユウマが大変なことになっているって教えてくれた時だけど」
「そうなると時間もそれなりに経っているよね」
「なら尚更……」
考えたくはないけど、何かしらの事態が僕達が知らない裏で起きていたのかもしれない。一切喋らなかった時も勿論あったけど、色々あった後だからこそ彼女が余計に心配になる。
「もし仮に何かあったとしても、今の私達には何もできないでしょ? 少し落ち着きなよユウマ」
「落ち着きたいのは山々なんだけど、やっぱり不安なんだ」
「それも分かるけど、彼女は神様なんだからユウマが考えるようなことは起きていないって」
「そうだと信じたいけど……」
結局何もできない以上ここで何を言っても意味がないので、シレナの件はしばらく様子を見るということになった。相手が神様とはいえど、ムラサメに魔法が破られたりなど色々な弱点がある。
彼女にもしものことがあった時、僕にできる事は何もないのだとしたら、とてももどかしい気持ちになる。
(シレナ、本当に何もなければいいんだけど……)
ともかく今は気持ちをなんとか切り替えて、無事王都に帰還できた事を素直に喜ばなければ。
「皆様、よくぞ無事にお戻りになられました」
王都に無事に戻って来た僕達を一番最初に出迎えてくれたのはシェルティアだった。王都での一件以降、彼女のことも心配だった僕は、出迎えてくれた彼女の姿を見てホッとする。
「シェルティア様、ご無事だったんですね」
「ユウマ様達のおかげで、この通り体も動かせるようになりました」
「あまりご無理はなさらないでくださいシェルティア様。治ったとはいえど、まだ完治はしていないのですから」
「相変わらず心配性ですねフェルナは。折角の祝い事だというのに」
「祝い事だなんてそんな」
僕は僕の意思でムラサメのところへ行った。だから誇れるような事でもないし、帰還を祝われると少し恥ずかしい。
「ところでそちらのお二方に見覚えがないのですが。いえ、正確にはそちらの女の子だけ初めて見る方ですね」
「それらの説明は後でします。それよりもユウマが怪我を負っているので、まずはそちらの治療を」
「そうでございましたか。では治癒所へと私が案内します」
「いや、そんなシェルティア様に案内してもらうわけには」
「ユウマ様と今一度二人でお話ししたい事があるんです。なのでできれば私にご案内させてもらいたいんです」
「僕と話を?」
前回の件があるので、僕としては少し警戒してしまう。でも僕の意思は決まっているので、前みたいに迷うような事はないけど、一体なんの話を……。
「シェルティア様がそこまで言うなら、私は止めませんが」
「ならば、ユウマ様は私とご一緒に」
シェルティアに手を引かれる僕。ここまで僕の意見を聞いてないけど、なんで他の三人は止めないんだ?
「ユウマ、二人きりだからって変な気を起こさないでね。もし何かあったら私達は許さないから」
「僕ってそんなに信頼ないの?! あと達って皆同じこと考えてるの?」
「「「うん」」」
何てこったい。
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アリス達に睨まれながらも、僕はシェルティアの案内で二人で治癒所へ向かうことに。セレナ曰く、そこでセレナ達も治療を受けたとの事。というか僕はここで助けられたので、お世話になりっぱなしだった。
「それでシェルティア様、僕に話とは」
「改めてユウマ様に聞きたいことがございまして」
「改めて聞いたいこと?」
「いまだ英雄になるには未熟であるユウマ様が、本当にこの世界から魔王を消し去る意思があるのかという事です」
英雄の素質については、この王都にやって来た時にも聞かれた。その上で僕のこの魔法を、譲ってほしいと。
「確かに今の僕にはシェルティア様が言うような英雄になる資格も、素質もないと思っています。もしかしたら魔王を倒す役目すらも僕にはないのかもしれません。しかしそれでも僕の意思はもう変わる事はありません」
「光の魔法を譲る気持ちはもうないという事ですね」
「はい。それが世界のためにならないとしても、もう僕の意思が変わる事はこれから先ありません」
「そうですか……」
どこか落胆した表情を浮かべるシェルティア。そしてしばらく黙った後、
「そこまで仰るならばユウマ様に一つ私から提案させていただきます」
「提案?」
「確かユウマ様は剣もお使いになられるんですよね」
「はい。魔法から作ったものではありますが」
「その剣技を王都が復旧するまでの間、騎士団の元で鍛えてはみませんか?」
「騎士団に僕が?」




