第77話意思と理由
森を脱出した後、あらかじめ手配されていたのか馬車で王都へと帰還した。流石に六人で一つの馬車は多いと考えてあったのか二台に別れ、いつもの僕達四人、フェルナとティアさんプラスサラという形になった。
久しぶりに四人きりになった馬車の中。
積もる話があったものの、やはり夜通しで戦い通したからか皆疲れていて、気がつけば僕とセレナ以外は眠りについていた。
「セレナは眠らないの?」
「ユウマこそ。私は色々あったから眠らないだけ」
「僕は皆よりは少なくとも眠っているから、そこまで眠くないんだよ」
「大怪我しているくせに」
そうお互い話すものの、やはり疲れているのか会話が続かない。しばらくお互い何も話さず、馬車の外を眺めているとふとセレナが口を開いた。
「師匠に言われた言葉、本当なの」
「え?」
「確かに私はまだこの世に未練があって、願わくばまだここに居たいと思っていた。だけど、それが叶うなんでこれっぽちも思っていなかったし、今だになんで私はもう一度生きれているのか分からないの」
「ティアさんは他の誰かの意思によって、ここに呼び戻されたって言っていたよね」
「うん。でもその他の誰かなんて私にはさっぱり分からないし、師匠がどうして生きていたのかさえも分からない」
結局ティアさんはセレナの疑問には答えてくれなかった。何よりセレナ自身も彼女の問いに答える事ができなかった。だから誰にも分からないのだ。何が真実なのか。
知っているのはその本人のみ。
「セレナの話を一番最初に聞いた時から思っていたんだけど、僕とセレナは住んでいる世界が違うのに似てるよね」
「私とユウマが?」
「最初聞いたときは何と無くだったかも、今聞いてはっきりした。僕もセレナも理由は違えど、事実上二度目の人生を送っているわけだし。経緯が分からないにしても、ここで過ごしたいって意思と理由があるんでしょ?」
「意思と理由……私まだやり残した事が沢山あるの。師匠は生きていたとしても他にもまだ」
「僕も本当は最初は意思なんて空っぽだったんだ。だって死んだ理由も分からなくて、シレナに説明もなくこの世界に連れてこられて」
いくら影が薄いといっても、気づかないうちに死んでいたなんて普通じゃ信じられない話だ。でもその信じられない話が現実に起きている。
「最初は滅茶苦茶な事ばかり起きて、この世界に来なければよかったって思った。けど今は、特にシェルティア様と話をしてからは、僕は僕自身でやれる事をこの世界でやりたいって決めたんだ」
「ユウマ自身がやりたい事?」
「僕はまだ力もないし未熟だから、英雄の素質なんてないかもしれない。魔王だって倒せるかも分からない。だけどそれ以上に今は皆と一緒に過ごして、この場所を守り続けたいと思ったんだ」
この前のシレナの言葉を聞いたときもそうだった。実感は湧かないかもしれないけど、僕のしていることが誰かのため、仲間のためになるならばそれを続けたいと思っている。
そう、僕にもできたんだ。この世界にいたいという意思と、その明確な理由が。
「格好つけちゃって。それでどれだけ私達が心配したと思っているのよ、馬鹿」
「それは本当に申し訳ないと思っているよ。でもあの場で皆を守る方法は、それしか浮かばなかったんだ」
「そうだとしてもの話。これから私達はもっと危険な目に遭うかもしれないのよ。その時はどうするの?」
「それは......まだ分からないよ。とりあえず王都の件が片付いたら、師匠に鍛えてもらうつもりだよ」
「そういえばこの二週間で格段に成長したってシレナが言っていたけど、本当?」
「ああ、それは......」
僕としては返答に困る質問だった。これこそ全く実感が湧いてないし、シレナの過剰評価の可能性だってある。
(僕としては黙っていてほしかったんだけど......)
シレナは隠し事が苦手なのかな。
「成長したって言われても自分じゃ実感湧かないものよね。でも折角だから今度腕試ししてみようか」
「腕試し?」
「そういえばユウマは知らないんだっけ。もうすぐアルカンディアで祭りが開かれるって」
「祭り?」
少し前にあったフュリーナ水神祭と同じようなものなのだろうか。
「アルカンディアは年に一度お祭りを行っているの。その祭の中で行われているのが大闘技大会。腕試しをするなら、それが丁度いいかもね」
「大闘技大会......」
少し胸がざわついた。男の僕としてはこういうイベントはすごく胸が踊る。僕が勝ち抜けるかは分からないけど、参加してみるのもいいかもしれない。
「そういえば最近ずっと気になっていたんだけど」
「どうしたの改まって」
「ユウマの初期ステータスってミナが驚くくらいチートだったよね」
「どうしてその言葉を知っているのか知りたいけど、確かそうだったよ」
セレナに言われてステータスカードを見る。最初に見て以来ほとんど見ていなかったから忘れていたけど、僕の初期ステータスって言葉の通り一部がチートレベルだった。
「ユウマってそのステータス、ほとんど生かせてないよね? 魔法の威力だってかなり強いのに」
「いやそれは一番最初の頃に」
派手に森を焼き払ってしまって以来、何故かそれがトラウマになって最大威力で使わないようにしている。
いや正確には使えないに近い
ムラサメの屋敷で判明したように、僕の魔力は多くない。それ故にコントロールが必要になってくる。そのコツを最近少しずつだけど掴んではきた気がする。
これもシレナのお陰なんだけど......。
「あ」
「ど、どうしたの?!」
「ここ最近シレナの声聞いてない!」
すっかり忘れていたけど、シレナはどこに行ったんだ?




