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影が薄いけど魔法使いやっています  作者: りょう
第7章ミッドナイトエスケープ
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第73話ミッドナイトエスケープ〜謀略〜

セレナ達が動き出した一報を受け、夕食を終えた僕はいつものように部屋に閉じ込められた後、シレナとこの後の行動について話をした。


「やっぱり調べた限りだとこの部屋から出ることは難しいと思う」


『それは確かにそうかもしれないけど、セレナ達がこの場所まで来ることも多分難しい』


「なら僕はどうするべき?」


『だから開けてもらうの。向こうから』


「向こうから?」


シレナの言葉の意味が理解できずにクエスチョンマークを頭に浮かべる。セレナ達がここまで来るのが不可能で、向こうからこの扉を開けてもらう。それって不可能なのでは?


(いや、もしかして……)


開けるのはセレナ達じゃないということは多分、


『魔法でも何でもいいから、とにかく大きい音を出してまず向こうがこちらの異変に気付かせるの。そして扉を向こうが開けた瞬間にここを脱出。そこから先は私が案内するからその通りにユウマは進んで』


やっぱりそうなるのかと思ったものの、その作戦を行うことは不可能だと僕は思った。


「その作戦、確かに不可能ではないかもしれないけど、一つ欠点があると思うんだ」


『欠点?』


「この部屋音を遮る魔法がかけられてると思う。だから僕はこうしてシレナと話ができるわけだし、もしかけられてなかったとしたらそれは逆に不自然だと思う」


その原因は音。毎晩のように僕とシレナはこうして部屋で話をしている。けどそれをムラサメは知らない。その理由はおそらくだけど、この部屋の音が遮られているから。


「初日にシレナと話した時に、ムラサメが何も問い詰めてこなかったからこうして普通に話すようにしたんだけど、この二週間ムラサメはその事について一度も触れなかった。なら考えられる可能性はそれしかないと思う」


『うーん、それは確かにそうかもしれないけど』


「恐らく僕みたいに捕まった人が、助けに来た仲間に場所を知らせないようにする為の対策なんだと思う。まさか向こうはそれを逆手に取られてるとは思っていないだろうけど」


それでも引っかかることはある。僕をセレナ達が救出しに来るかムラサメは考えなかったのかだ。僕をこの一ヶ月で命を奪うつもりでいたとしても、少なくとも僕の仲間が救出しに来る可能性はある。なのにムラサメは対策を講じるような様子はなかった。


それともそこまで予想済みで、既に対策が取ってあるのだろうか?


例えばこの防音の部屋さえも、本当は僕達に油断させるための作戦だとしたら?


「ねえシレナ。シレナの声って誰かに聞こえるようにしているとか決めてあるの?」


『うん。今のこの声だってユウマにしか聞こえないようにしているよ』


「そういえば最初からそうだったもんね」


とりあえずシレナの声がムラサメに聞こえている説はなくなった。なら次に考えられる可能性は……。


「僕にしか聞こえないようにしているのって、魔法?」


『うん、神様とはいえど流石にそこまで特殊な力は持ってないから』



「なら、もしもだよ。その魔法が見破られる可能性はある?」


『多分あると思うよ。普通にこの世界に存在している魔法だから』


「そうか、つまりこれは……」


『ユウマ? どうしたの? 早くここから脱出する方法を考えないと』


ムラサメが僕にやたらと優しかった理由、そして閉じ込められている以外は何の不便もないこの部屋。これら全てが最初から仕組まれていたことで、僕の……いや、僕達の動きを把握するものだとしたら。


「まずい、シレナ。今すぐセレナ達にここから離れるように言って」


『今更何を言っているの? ユウマはここから出たくないの?』


「違うそうじゃない。僕の考えが正しかったら」


最悪の結果になる。


■□■□■□

「おかしい」


ユウマ救出作戦当日の夕刻。目的地周辺の小屋でその時を伺っていた私は、窓の外を見ながら呟いた。


「何がおかしいのアリス」


「さっきフェルナ達が陽動するために敷地内を動き回ったのに、敵が全く動かない」


「え? じゃあ陽動作戦は失敗なの?」


「それも違う。まだフェルナ達が屋敷周辺にいるのに、敵の動きが一切見られない」


偵察のために動かした人形達を通して、周辺の動きを観察していた私は、そのあまりの静かさに何か怪しいものを感じ取る。


(ここは魔王四将星の一人が住む屋敷、それなのに警備があまりに薄すぎる)


まるで私達を誘い込んでいるような異様な空気に、私の体は少しだけ震える。


「セレナ、ハルカ、一旦退こう」


「何を急に言っているのよ。ここまで来たのに」


「あくまで一時的な撤退だから。今下手に動いたら私達の身体が危ない」


そう私が言った時だった。邸周辺の森の中から大きな音がこの小屋まで聞こえて来たのは。


「今の音、何が」


「もしかしてフェルナ達に何かが」


『アリス、セレナ、ハルカ!』


私の嫌な予感が的中したかのように、シレナの声が小屋に響き渡る。


「シレナ、どうしたの?」


『今すぐここから……ここから離れて!』


「今そうしようと」


『とにかく今すぐ急い……ユウマ!』


私達の言葉を無視して、今度シレナはユウマの名前を呼ぶ。今彼女には何が見えて、


『全部罠だって気がつくべきだった。私も神様だからって油断したから、ユウマが』


「シレナ、何が起きて」


「先輩達!」


今度はフェルナが小屋に入ってくる。色々なことが同時に起きすぎて、どこから対処すればいいか迷っている。


「どうしたのフェルナ。師匠はどうしたの?」


「そんな事はどうでもいいんです。今すぐ逃げましょう」


「どうでもいいってどういう」


「説明は後でします! とにかく今逃げないと」


フェルナが何かを言い切る前に、彼女の背後から影が現れ、フェルナの首を掴んでそちらに引き寄せる。


「よくもまあ、儂の敷地に踏み入れてくれたのう、冒険者」


「っ! フェルナ!」


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