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影が薄いけど魔法使いやっています  作者: りょう
第7章ミッドナイトエスケープ
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第71話かつての面影と今の面影

 トレディアの一件の後、私とハルカはすぐに王都へと戻り、まずルカから聞いた話をセレナに説明した。


「それは私も知っている話だけど、だからと言って私達だけでユウマを救い出すのは難しいと思う」


 全てを聞いたセレナはそう結論づける。セレナは王都での戦いの時、ムラサメに対してかなり取り乱していたから、私たちが聞いた話を知っていて当然なのは何となく分かる。

 それでいて、ユウマを救い出すことも難しいのも知っているから、最初から中立的な立場だったのかもしれない。


「でもユウマはまだ魔法使いとして未熟。もしかしたら既に倒れている可能性だってある。だから放っておくことはできない」


「だから助けに行くの?」


「うん」


「それじゃあ一週間前のハルカと同じよアリス。急いだって何かが生まれるわけじゃない」


「ならどうすればいい? 私達はユウマをただ待つことしかできないの?」


「今のところは、だけどね」


「どういう事?」


「ユウマを助けられる可能性、ゼロではないの。ただまだ時間が必要なだけ」


 セレナはその日はそれ以外のことは言わなかった。私とハルカはセレナの言うその時を待つまでの間、ルカが教えてくれた情報を元に何かいい方法がないか模索し続けた。


 そしてそれから二日後


 ユウマがムラサメに捕まってから丁度十日が経った頃。私とアリス、そして王国騎士団長のフェルナがセレナの元に集められた。


「フェルナ、怪我の方は大丈夫?」


「お陰様で鍛錬ができるくらいに回復しましたよ。先輩の方こそ、私より大怪我なんですから、もう少し休んでいた方がいいんじゃないですか?」


「そうも言ってられないの。ユウマを助けに行くんだから」


「それってあの魔法使いですか? そういえば十日ほど見かけていませんが……」


 フェルナはこの十日間別室で他の怪我人と同様に治療をしていたと聞いている。セレナが一通り説明を終えた後、私は話を戻した。


「それでセレナ、あれから二日が経ったけど何かが変わったの?」


「変わったと言うよりは待っていたの。私の師匠、そしてフェルナの治療が終わるのを。入って来てください師匠」


 セレナがそう扉に向けて言うと、王都の時にセレナ達と一緒に私達が運び込んだ青髪の女性が入ってきた。


「全く、実の師匠をこき使うとはどういうつもりなのです? セレナ」


「まだこき使っていないじゃないですか、師匠」


「あくまでまだ、なのですわね」


 セレナの横に立つ青髪の女性。私はその女性が誰なのか、間近まできてようやく気がついた。


 水の魔法剣士 ティア


 彼女は私達冒険者の中でもかなりの有名人だった。それどころか、村育ちのハルカを除けば知らない人はいないくらいの超有名人。

 けどその彼女が今この場所に立っていることはあり得なかった。その理由は多分、セレナ自身も分かっているはず。


「という事で、私の師匠の手を借りて、ユウマを助けに向かおうと思う。私達三人だけじゃ力が不足していたから、回復するまで待っていたの」


「ムラサメには先日大きな借りができてしまいましたわ。だからわたくしがこの手でムラサメを討ちます。皆様はその間にお仲間を救出してください」


「それはありがたい話だけど」


 私にはどうにも信じられないことが二つある。


 ティアは既に死人であること


 これに関してはまだセレナがいい代表例になっているから、深くは尋ねない。問題はもう一つあった。


「セレナ、この人を信じて大丈夫なの?」


「何を突然言いだすのよアリス。師匠を知らないわけじゃないでしょ?」


「確かに彼女は水の魔法剣士ティアかもしれない。けど私が知っているその人とは、全然違う」


「っ、そ、それは……」


 セレナ自身何か心当たりがあるらしくどもってしまう。それもそのはず、私達が知っているティアと今目の前にいるティアの口調、性格から何まで違うのだ。

 セレナの師匠とは一度会ったことはある。けど彼女はこんなにも高貴な感じな人ではなく、もっと冷静な人で、常に戦況を冷静に見れる人だった。


 だから引っかかることが多い


 特にあっさりとムラサメに負けたことも、私としては考えられなかった。もっと冷静に戦況を見極めていれば、もしかしたらあの状況だって変わっていた可能性もある。


「全く失礼ですわね、アリス」


「気安く私の名前を呼ばないで」


「ほ、本当に腹ただしい性格をしていますわね」


 とにかくユウマの救出作戦は、私達の方が冷静にならないといけないかもしれない。


「先輩、私にはどうなっているのか分からないのですが」


「い、今は分からなくていいわ。それよりも優先するべきことがあるから」


「そ、そうですか」


 納得のいかない表情のフェルナ。それでもセレナは話を続ける。


「とにかく今から具体的な作戦を説明するわね。ユウマの体も考えると、長く待たせるわけにもいかないから」


「何かいい作戦案はあるの?」


「作戦はいたってシンプル。師匠に陽動をしてもらって、私達はその間にユウマを救い出す。簡単でしょ?」


「シンプルすぎて逆に怖いけど」


「作戦名はミッドナイトエスケープ。深夜の逃避行。深夜のうちにユウマを救い出すわよ、私達五人で」


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