第70話これから見つけていく答え
その日の夜
『イメージしただけ?! 確かに私はそう言ったけど、それだけであそこまでできるの?」
「それは僕には分からないよ」
何故か僕はシレナに尋問されていた。何もない空間に話しかけるのは何ともシュールな光景は今更だけど、この会話が漏れてないかそこはかとなく心配になる。
それはともかくとして、
「魔力の消費を抑えるのはあんな感じでいいの?」
『正解を通り越して大正解。あとは魔力の増幅ともっと正確なコントロールくらいかな。その辺りは貴方の師匠に教えてもらった方が手っ取り早いかも』
「じゃあシレナが教えられるのはこれだけ?」
『ううん、実はもう一つあるんだけど、それはもう少し先かな。少なくとも今のユウマじゃ使いこなせないと思うから』
「ふぅん」
今日は乗り切れたのはいいものの、果たして残りの日付を僕が生き残ることができるか分からない。何よりセレナ達の事も心配だし、何かこの先起きなければいいんだけど。
『あ、そうそう、すっかり忘れてたんだけど数日前、ハルカとアリスが喧嘩してた』
そんな僕の不安を煽るように、シレナが思い出したように言う。
「え? なんでその二人が? というよりどうしてシレナはそれを知っているの?」
『私の本体はあの人形の中だからね。二人は今王都を離れてトレディアという街にいるんだけど、やっぱりユウマの事で揉めたみたい』
「僕の事で?」
シレナはこの一週間の間に三人の間でどんなことがあったのかを教えてくれる。ハルカは僕を助けにすぐに王都を出発、それを引き止めるためにアリスがそれを追ってトレディアという街に行ったこと。
そしてその街で二人が喧嘩して、戦いにまで発展したこと。ここまでの一連の出来事をシレナは語った。
『随分仲間に思われるようになったんだね』
「思ってくれるのは嬉しいんだけど、僕としては少し複雑な気持ちかな」
『まあ原因はユウマにあるんだから、仕方がないと思うけど』
「そうだけどさ……」
ムラサメに囚われたのはそもそも僕の意志だ。それを誰にも言わずに勝手にしたことは、三人からしたら許せない気持ちになるのも理解できる。
そして三人がそれぞれの想いで行動をするのも。
「仲間って難しいんだね」
『どうしたの? 今更』
「シレナは知っていると思うけど、僕は元々影が薄かったから仲間なんてできなかった。むしろ存在すらさせてもらえなかった」
『だから私が手を差し伸べたんだけどね』
「それに関しては今更だけど感謝しているよ。でもだからこそ、時々分からなくなる時があるんだ」
『何が?』
「僕が仲間のためにすることって、本当に仲間のためになっているのかなって。特に今の話を聞いて感じたよ」
『それは……』
現に二人は僕のした行動によって喧嘩をした。ある意味不要とも言えるその喧嘩も、その行動も僕が望んだものではない。裏を返せば、僕の行動も三人が望んだものではない。
だから時々分からなくなる。
仲間ってなんだろうって
『それは自分で探して見つけるものじゃないかな。私には分からないけど』
「自分で探すもの?」
『偉そうに私が言えた口じゃないけど、せっかく得られた仲間なんだから、大切にしないと駄目だよ? それに今教えたことだって、いい意味で捉えればそれだけ仲間に大切にされているって事なんだから』
「僕が、セレナ達に?」
『今回ユウマがしたことだって、仲間を想ってした事なんだから、何も恥ずる事なんてない。もっと自分がしたことに誇りを持ちなよ』
「シレナ……」
彼女の言葉は僕の胸に染み込んだ。今まで色々あったけど、今日初めてシレナが本当の女神様のように見えた。
最初はただのロリコン受けの女神様かと思っていたけれど、彼女はちゃんとここまでの僕を見てくれていたんだなと少しだけ嬉しかった。
『ほら、今日もしっかり休んで明日も乗り越えないと』
「うん、もう寝るよ。おやすみ」
こうして少しだけ成長をした八日目の生活も終わりを告げた。ここからさらに五日、僕はギリギリの戦いを乗り越えていったんだけど、事が起きたのは丁度二週間を過ぎた日の夕方。
「ムラサメ様、ご報告します。屋敷周辺に不安な影を見かけたとの情報が入りました」
ムラサメの部下の報告が入った事から始まった。
「不安な影、じゃと。数は?」
「正確な数は把握できいませんが、少数の部隊のようです」
「ほう。儂の屋敷も随分と舐められたものじゃのう」
予めシレナからアリス達がここはやって来ている情報を知っていた僕は、恐らくその少数が彼女達なのだと考える。
『アリス達はユウマを助けに来たの。ユウマは気づいてなかったかもしれないけど、恐らく一ヶ月乗り切っても無事には帰れない。だからその前に動き出したの』
(「無事に帰れないってどういう事?」)
『いい? 相手は四将星の一人。すぐにでも消せる命をこうして二週間も残していたのは、何でだと思う?』
(「普通じゃない事なのは分かっていたけど、何で?」)
『そんなのユウマのその魔法に決まっているでしょ。忘れているかもしれないけど、この世界で光の魔法はとても貴重な力。本来なら誰もが羨む力なの』
(「確かに最初の頃、そんな話を聞いたような……」)
何よりシェルティア様がそんな事を言っていた気がする。
『だからユウマは今すぐにでも逃げ出さなければならないの。何としてもこの屋敷から抜け出すからね!』
(「わ、分かった」)




