第69話一雫の魔力
ムラサメの屋敷での生活二日目からは、シレナの助けもあって何とか乗り越えていった。と言っても、戦うのは僕一人なので、疲労は当然のように蓄積し、一週間が経った頃に限界がきた。
『大丈夫? ユウマ』
「正直もう辛い……」
最初はかなり優遇されていると思っていた。けどよく考えてみれば、一戦ごとの敵の強さが違がければそれだけ魔力の消耗が激しくなる。恐らくその原理にムラサメは気づかせないために、あえて優しくしていたのかもしれない。
よく考えてみればおかしかった
魔王四将星の一人である彼女が、ただの魔法使いを簡単に見逃すこと自体が異常だってもっと最初に気付くべきだった。このままではきっと僕は……。
『そろそろ時が来たみたいね』
「何をいきなり」
『一週間前、言ったでしょ? ユウマを強化する方法を模索していたって』
「そういえばそんな事言ってたっけ」
『それを試すときが来たのかなって思ったの。ほら私これでも神様だから、力を与えられることはできるの』
声色だけでドヤ顔をしながらシレナが言っているのが分かるくらいなんか偉そうな言い方をしているけど、じゃあ何で最初からもっと手を貸してくれなかったのかと疑問に思う。
『まずユウマに今足りていないものは、分かっている通り魔力。けどこればかりは時間をかけて鍛えないと増やせないから、現状何もできない』
「それが出来ないならどうにも出来ないんじゃ」
『だから魔法を強化しようと考えたの。極力魔力の消費を抑えて光の魔法を使う方法』
「魔力の消費を抑える?」
確かに今の状況を考えると、魔力の消費を抑えられるのは僕としてはとてもありがたい。特にこの前のムラサメとの戦いの時みたいな連戦の時は、魔力を抑えるのも大切になってくる。
「それで具体的にどうすればいいの?」
『まずこの二日間の戦いを、光の魔法を使うのを抑えながら戦ってみて。そこから感覚を掴む必要があるから』
「感覚って、具体的には?」
『まずは試しに光の剣を出してみて』
「それくらいなら……」
僕はいつでも出せる光の剣を出す。ただ長時間出す必要もないので、なるべく魔力を少なめにして短時間だけ光の剣を出す。
『今その剣を出すのに魔力をどのくらい使った?』
光の剣が消えた後に、シレナが僕に尋ねてくる。
「今は短時間だけだからそんなに使ってないけど、長期戦の時は付加魔法も使うからかなり消耗すると思う」
『ねえユウマ、光の剣の長さって考えたことある?』
「長さ?」
『あれって使う魔力によって変わってくるんだけど、今の長さはいつもと同じだったよね?』
「言われてみれば……」
『つまり光の剣は出し続ける時間より、剣の長さによって魔力の使用率が変わるの。だからユウマは無意識でいつも同じ量の魔力を使ってたってこと』
「じゃあ剣の長さが短いほど」
『魔力の消費量を減らせるってこと』
シレナが言っている理屈は何となく分かった。けどそれって魔力を増やすことより難しいことなのではないのかと思ってしまう。
「光の短剣……どう生み出せばいいか分からないんだけど」
『それを次の戦いで意識してみて。どちらにしても魔力が少ない状態で、明日が保つかも危ういから』
「意識って言われても……」
失敗したら僕明日死ぬかもしれないんですけど。
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八度目の戦い
相手は僕と同じくらいの身長のオーク。武器は棍棒を振り回しているが、その一撃一撃がかなり重く、凄まじい揺れを発生させている。
このオーク相手に僕はどうやってシレナの指示を達成させられるのだろうか。
『いい? イメージとしては水を一滴垂らすようなイメージで、ほんのすこしだけ魔力を使えばいいの』
(「でもそれじゃあ短すぎるんじゃ」)
『大丈夫、ユウマには魔法使いとしての素質はあるんだから、自分の力を信じて』
(「う、うん」)
僕はオークの攻撃をかわしながら、シレナのイメージ通りに魔力を抽出してみる。
(水を一滴……一雫の魔力をこの手に使って……)
短時間で、より早く
そして魔力を使わないで
オークを倒す。
「敵を目の前にして目を瞑るとは。もはや諦めたか?」
(今の僕に必要なのはそれだけだ)
動かない僕の頭目掛けてオークが棍棒を振りかざしたその瞬間、
「なぬっ!」
僕はオークの喉元に向けて剣を突き刺した。しかも至近距離で。
その時間、わずか一秒にも満たしていない
「この短時間で短剣を生成して、突き刺すじゃと」
「でき……た?」
僕は短剣と言えば素早い動きをイメージした。そしたら気がつけば僕の体は素早く動いていて、棍棒が振りかざされるより早く、オークの喉元に短剣を突き刺していた。
『短剣だけじゃなくて、身体強化も一瞬で? いや、幾ら何でもそこまでできるはずは……』
シレナは何かを言っている。それどころかムラサメまで驚いていたような気がするけど、僕自身もただイメージしてそれをやってみただけだから、正直何が起きたのか分かっていない。
「きょ、今日もお主の勝ちじゃ、ユウマ」
まあ、勝てたならそれでいいか。




