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影が薄いけど魔法使いやっています  作者: りょう
第7章ミッドナイトエスケープ
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第68話行商人ルカ

 彼女?が私達を助けてくれたことによって、戦況は大きく変わった。先程彼女が投げた煙玉のようなものによって、敵が錯乱している隙を狙って、追撃を三人で仕掛ける。

 そんな戦いを続けているうちに敵を殲滅。夜の防衛戦は思わぬ援軍のおかげで、無事私達の勝利で幕を閉じた。


 そして戦いが終わった後の酒場。私とハルカは行商人ルカ(戦いが終わった後に名乗ってくれた)と共にちょっとした祝勝会を開いた。


「お疲れ様二人とも。えっとアリスとハルカだっけ」


「うん。そちらこそさっきは助けてくれてありがとう、ルカ」


「お礼なんていいよ。ボクはボクが思ったがままに助けただけだから」


「それでも本当に助かったよ。アリスと私だけじゃ、多分守りきれなかった」


「そんな褒めないでよ。照れちゃうよ」


 頭を掻きながらルカは恥ずかしそうに言う。その仕草を見る限りでは、女の子なんだけど果たしてどっちなのだろうかルカは。


「それでルカは行商人をやっているんだっけ?」


「うん。普段はこの世界を歩き回っているんだけど、たまたまこっちに寄っていたんだ」


「行商人の割には戦闘に長けていたけど」


「行商人は自分自身で身を守らないといけないからね。長くやっていると自然と戦いになれるんだよ」


「へえ。そういえば私達の知り合いに商人をやっている子がいるんだ」


「そうなんだ。じゃあその子も戦えたりするかもね」


「そうなのかな?」


 ルカと違ってミツキはあまり戦いはしなさそうなタイプに私は見えたけど。


「それはともかくとして、アリスとハルカはどうしてこの街に?」


「ちょっとした用事があって来ていたの。明日には帰る予定なんだ」


「どこに帰るの?」


「王都に私達の仲間が怪我を負って治療しているから戻る」


「王都って、先日魔王軍の襲撃で壊滅的な被害にあったところ?」


「流石は情報が早いね。私達その日王都にいたんだけど」


 ハルカが王都での事件を話す。もうあれから気がつけば一週間は経っていた。あの日ムラサメに私達は敗れ、ユウマは彼女のところは連れ去られてしまった。

 それがたった一日足らずの出来事であって、魔王四将星の強さを私達は身をもって知ることになった。


(今思い返すと嫌なことばかり……)


 王都にやって来た日から今日まで、私達の身には色々なことが起きた。いや、むしろ起きすぎていたのかもしれない。出会いもあったけど、それ以上に私達は深い傷を負って……。


「アリス……アリス?」


「え、あ、呼んだ?」


「どうしたの急に黙り込んで」


「いや、何でもない」


「そう、それならいいんだけど。それよりアリスの話も聞かせて欲しいってルカが」


「私の話? 別に特に何もないけど……」


 結局祝勝会は日が昇る時間まで続き、眠りについたのは早朝。そして次に目を覚ました時はすっかり夜になっていて、私達はそのまま宿屋でもう一泊することになった。


 ■□■□■□

 トレディアでの魔王軍襲撃の翌日の早朝


 丸一日休んだこともあり疲れもすっかり取れたので、私とハルカは朝早くに王都へ向けて出発することにした。


「じゃあボクはこの辺で」


「またねルカ。いい旅を」


「そっちこそ気をつけて王都に帰ってね」


「余計なお世話」


 同じ時間に宿屋をチェックアウトした私達とルカは、街の入口で別れる。結局ルカの性別については尋ねることはできずに、私としてはかなりモヤモヤしたけどいつかまた会う時も来るだろう。


「あ、そうだ、待って二人とも」


 お互い背を向けて歩き出してすぐに、何かを思い出したかのようにルカは私達を呼び止める。


「昨日の話を聞いて思い出したんだけど、四将星のムラサメのところに仲間が連れ去られたんだよね」


「うん、そうだけど」


「一ヶ月後だっけ。彼女が返すって言ったの」


「そう言ってた」


「ならこれだけは聞いておいてほしいんだ。不安にさせるようで悪いんだけど」


 ルカは私とハルカにムラサメの住む屋敷で行なわれていることを教えられた。


 一ヶ月後に彼女はユウマを返すと言っていた


 しかしその一ヶ月の間、ユウマを待ち受けているのは生き残りの戦い


 ムラサメは連れ去った人間を試すかのように、毎日戦わせるらしい。そしてその相手は、竜だったり火の精霊と言った危険な魔物が多いということ。


「恐らくムラサメの狙いは、彼が持っている魔法なのかもね。もし仮に彼が一ヶ月生き残ったとしても、安全とは言い切れないかも」


 一通り私達に説明を終えるとルカはそう最後に言った。それを聞いた私は、


「ルカ、ムラサメの屋敷の場所分かる?」


「残念ながらボクにはそこまでは。でも目星は付いているかな」


「ならそれだけでも教えてほしい」


「アリス?」


「分かった。特別にタダで教えてあげるね」


 そう言うとルカは紙にさっくり何かを書きなぐって私に渡してきた。それはちょっとした地図みたいなものだったけど、正確なムラサメの屋敷の家までは記されていない。


「じゃあ今度こそボク行くね」


「ありがとう、ルカ」


 ルカは手を上げながら私達に背を向けて歩き出す。残された私とハルカは……。


「ハルカ、この前言ったことやっぱり取り消す」


「え?」


「一度戦力を整えて、ユウマを助けに行こう」

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