第67話ピンチの先の救世主
私とハルカがやって来ていた街は行商の街トレディア。名前の通り行商が盛んな街で、ここには色々なところから来た商人達が日夜様々な取引をしている。
それ故にこの街の酒場では多くの情報を得やすいので、ムラサメの情報を得るのはもってこいの場所だった。
「まだ村から出て間もないのに、よく知ってたね」
「少し前にそういう街があるって話は聞いていたの。いつか訪れる事になるかなって思ってたくらいだから、まさかこんな形で役に立つとは思ってなかった」
「私もここをアテにしてみて正解だった」
ハルカぎその存在を知っていたのは予想していなかったけど、私の直感もたまには当たるみたいでよかった。
と、この街の話はここまでにして、
「ねえアリス」
「何?」
「私達呑気に話をしているけど、これって大ピンチだよね」
「うん」
「いや、うんじゃないんだけど」
今はトレディアを襲撃してきた魔王軍の対処を私達はしているわけだけど、どういうわけか私達は何故か街の外で敵に囲まれていた。
しかも数は見ただけでも百は越えている。
街に侵入した魔物は別働隊に任せたのだけれど、私達が任された分の数が規格外だった。いや、というよりは向こうは私達が二人だけだと認識した上で、こうして囲んだ可能性は高い。
数で囲めば、向こうのほうが圧倒的に有利なのだから。
(それにしてもどうしてこの街にこんなにも魔物が……)
王都をの占拠に失敗した腹いせなのだとしたら、今から帰る私達にとってはありがた迷惑だ。
「どうするハルカ。一人頭五十近く相手する事になるけど」
「どうするも何もやるしかないでしょ? まだ服が乾いてないけど」
「私も魔力回復しきれてない」
「それで本当に大丈夫なの私達」
そう聞かれてもこうなってしまった以上はやらなければならない。やらなければやられるのだから。
「とにかく今は考えている暇はない。ユウマやセレナの為にも、何としても突破する」
「そんなこと最初から分かっているって」
とは言ったものの、一人で五十もの敵を相手するのは骨が折れるので、私は敵を倒しながらハルカに提案する。
「ハルカ、一つ提案がある」
「提案?」
「ユウマの付加魔法で思いついたんだけど、あれと同じ事私達にもできると思う」
「あれと同じ事って、まさか」
「受け取って」
私は人形を一体ハルカに向かわせて、彼女の大剣に向けて魔法を使う。
「ちょっと、それは幾ら何でも無茶苦茶な……って、何で私の意見は聞かないで魔法を打つの?!」
ハルカはそれを大剣で受け止めると、大剣に人形が放った炎の魔法が宿り、、擬似的に付加魔法が成立する。
「ハルカ、あとはそれで剣を思いっきり振って」
「本当滅茶苦茶なことを言うわね! 言われなくても!」
ハルカが剣を振るうと、炎は大きな刀となって敵軍を薙ぎ払った。
「これで三分の一は減らせた。このまま次に」
「つっ!」
「ハルカ?」
追撃しようとした時、突然大剣を落としてうずくまるハルカ。
「大丈夫?」
「な、何とか……」
急いでハルカに駆け寄る私。そんな私を敵が見逃すはずもなく、
「アリス、後ろ!」
「しまっ」
背後からの魔法をそのまま受ける事になってしまった。
「アリス!」
吹き飛ぶ私の体。吹き飛んだ先にあるのは敵の軍勢。人形を使って身を守ろうとしても、これだと間に合わない。
(こんなところで……)
正面から迫る敵の刃に、私は覚悟を決めて目を閉じる。正面からの攻撃を覚悟したその時、直前で私の体は誰かに抱きかかえられていた。
「全く卑怯なことをするね、魔王軍も」
目を開けると私は見知らぬ誰かに抱きかかえられていた。突然のことに私もハルカも唖然としていると、着地した場所に私の体は降ろされる。
私を助けたのは緑髪の短髪の男か女か判別がつかないような人だった。その人の特徴でとかに目立つのが、背中に背負っているかなりの大きさのバッグ。あれを背負って私を助けたとは思えないほど、彼女(彼?)は小柄だった。
「大丈夫? 背中に魔法を受けたみたいだけど」
「心配ない。それより」
「あ、名前とかは後にして。まずは敵を倒そう」
この辺に住んでいるのなら行商人か何かと思われる彼女は、バッグから何かを取り出すとそれを敵に向けて投げつけた。
「ボクが敵の目を欺くから、その間に大剣の女の子を助けて」
「分かった」
彼女が投げたのは恐らく煙玉の類いのもの。敵の周囲が煙に巻かれている間に敵の間をすり抜けて、私はハルカを敵の側から助け出すことに成功する。
「大丈夫、ハルカ」
「私は何とか。ちょっと体が動かなくなっただけ。それよりアリスこそ、さっき魔法を受けたのに大丈夫?」
「私もこの程度は大丈夫。彼女?のおかげで大きな怪我はしてない」
「彼女って……あの子女の子なの?」
「分からない。だから疑問形。それより煙が消えないうちにここからまずは抜け出そう」
「うん」
私はハルカに肩を貸しながら、軍勢を抜け出す。抜け出した先には先ほどの彼女が待っていた。
「よし、まずは第一関門クリア。戦えるかい? 二人とも」
「ハルカはともかく私は戦える」
「大丈夫、私も戦えるよ」
「よし、じゃあ反撃といこうか」




