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影が薄いけど魔法使いやっています  作者: りょう
第7章ミッドナイトエスケープ
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第66話ぶつかり合う想い ハルカ対アリス

 ハルカを追って王都を出てから三日、ようやく彼女を見つけることができた。


「ハルカ、見つけた」


「アリス?! どうして……」


「ハルカを放っておくことができなかった」


 ハルカを見つけたのは王都からそこそこ離れた距離の街にある宿屋だった。正確には宿屋の一部が酒場になっていて、ハルカはそこで情報収集していた。

 ハルカが食事をしていた席の反対側に私も食事を持って座る。


「私を止めに来たの?」


「うん」


「こんな所までどうしてわざわざ」


「仲間だから」


「仲間なら、どうして助けに行かないの? ユウマが心配じゃないの?」


「私だって心配してる」


「なら!」


「けどユウマに余計な心配だけはさせたくない」


「っ!」


 セレナは言っていた。私とハルカも言っていることはどちらも間違っていないって。私だってハルカの想いも間違っていないって思っている。

 それでも時には冷静に判断しなければならない時だってある。もし今余計に動いて、向こうを刺激するようなことをしてしまえば、何が起きるか分からない。


「勝算はあるの? 相手は四将星の一人なのに」


「そ、それは……」


「ユウマが守ってくれた命を無駄にしたら何も意味がない。だから今すぐに帰ろう、ハルカ」


 私は伝えたい事だけをハルカに伝えた。それに対してハルカは、食事をする手を止めて、


「それなら……」


「?」


「それならアリスはどうなの? この前勝手に一人で私達から離れたよね?」


「それは関係ない」


「関係ある! 自分だって勝手なことをしたくせに、自分は正しいことを言っているみたいな感じやめてよ!」


「私はそんなつもりはない。ただ心配して」


「余計なお世話! 私は私がしたいようにするの! それでも止めるって言うなら」


「言うなら?」


「私と今すぐ戦って。私はそれを踏み越えてでもユウマを助けに行くから!」


 ■□■□■□

 月明かりに照らされた街中。その中心に私とハルカは向き合って対峙していた。


「本気で戦うつもり?」


「当たり前でしょ。私は私の正義を貫くためなら、何だってする」


「私はそんなつもりでは」


「ないなら大人しくやられて! 私は本気だから」


 ハルカは私に向けて大剣を振りかざしてくる。どうしてこうなってしまったのかと思いながら私はそれを避ける。


「こんな事をしたら余計にユウマが心配する」


「正論ばかり言って、自分だって同じ事をしたでしょ!」


「だから自分も勝手なことしていいの?」


「勝手なことくらい分かってる。けど心配だからこそ私は」


「なら冷静になった方がいい。人形魔法『水流連撃』」


 私は反撃として人形を使って水の刀を飛ばす。ハルカはそれを切り裂きながら、私に迫ってくる。


「私はとっくに冷静よ!」


「冷静じゃない。冷静ならもう少し考えた動きをできるはず」


 迫ってくるアリスを人形で受け止め、別の人形で再び魔法を放つ。


「きゃあ!」


 ハルカはガードするものの間に合わず、それをまともに受けてしまいずぶ濡れになる。


「最悪……さっき乾かしたばかりなのに」


「隙が大きい。それじゃあユウマを助けにだっていけない」


 ずぶ濡れになって座り込んだハルカの目の前に私は立ち告げる。私とハルカの戦いはいとも簡単についてしまった。


「何が……分かるの! 私はただ純粋に仲間を失いたくないだけなの!」


「ならどうして分からない。今ハルカを私達が失いかけている事を」


「! そ、それは……」


「ハルカがユウマを失うのが嫌なように、私やセレナだったハルカを失うのは嫌。きっとそれはユウマも同じ気持ち」


「ユウマも?」


「ハルカ、一回冷静になって。今私達が本当にするべき事は何なのか」


「私達が今するべき……事?」


 それは生き急ぐ事ではない


 ユウマを助けに行く事でもない


 ユウマを信じて待つ事


「……何かアリスって変わったね」


「変わった?」


「気づいてない? 最初はあんなにも男嫌いだったのに、今はユウマの事ばかり考えて、彼の事を一番信じてる」


「そう、かな」


 前にも同じような事をセレナに言われた気がする。私としてはあまり実感が湧かなかった。多分彼に自分の色々な事を知ってもらっていく内に、私が彼を信じるようになったのかもしれない。


 昔の私なら到底考えられないような事だ


(男が嫌いなのは相変わらずだけど……)


 ユウマは私にとって特別なのかもしれない。


「冷静になれた? ハルカ」


「お陰様で。本当は何もしないで待つのは嫌だけど、今はユウマを信じるしかないんだね」


「そういうこと。それに私達にはユウマが帰ってくるまでにしなければならない事がある」


「王都の復旧?」


「それもあるけど……」


 私はハルカにとある提案を耳打ちする。


「なるほど! それは確かにユウマが帰ってくるまでにしないといけないことだね」


「うん。だから今から王都に戻って、準備しよう」


「うん!」


 私はハルカに手を伸ばし、彼女はそれをしっかりと握る。最初はどうなってしまうか分からなかった私達の関係も、これで問題なく解決した。


 あとは王都へ戻って……。


「襲来、襲来! 魔王軍が襲来!」


「魔王軍? こんな街まで来るの?」

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