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影が薄いけど魔法使いやっています  作者: りょう
第7章ミッドナイトエスケープ
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バレンタイン特別編 異世界の愛の形

 これはまだ僕達が雷神の里から帰ってきたばかりの頃の話。ハルカが僕の住んでいた国、倭の国(つまり日本)の文化を教えて欲しいと言いだした事から始まった。


「ばれんたいんでー?」


「うん。正確には文化というよりは行事みたいなものなんだけどね」


「具体的にはどんな行事なの?」


「年に一度決まった日に女の子が男の子にチョコレートを渡すっていうとてもシンプルな行事なんだけど、男の子にとっても女の子にとってもとても大事な日なんだ」


「そんな行事があるんだ。でもチョコレートって何?」


「あ、やっぱりそこからになるんだ」


 何となくではあったけどこの世界にチョコレートという存在がないのは分かっていたので、バレンタインデーという存在は諦めていた。


「でも私興味ある。ばれんたいん」


「私もやってみたい。そのチョコレートというのは分からないけど」


「じゃあやる? 折角だし」


 でも三人がバレンタインデーやってみたいと言ってくれたので、その翌日に異世界式のバレンタインデーを僕達の中で行うことになった。

 ■□■□■□

「じゃあまずはハルカからだけど、何これ」


「何って私のコレクションの一つだけど」


「コレクションなの? これが」


「うん。特に村から離れてからコツコツと集めてるの」


 一番最初はハルカ。彼女がチョコレートの代わりに贈ってきたのは、恐らく防具になるであろう胸当て。今まで防具に関してはあまり気にしていなかった僕にとって、一見ありがたいものに見えるんだけど……。


「それにしては胸のあたりがやたらと膨らんでいるような……」


「何か問題あるの? これでも精一杯考えて選んだんだから。ほらユウマ、防具をほとんど持たないでしょ?」


「だから胸が……」


「何か?」


「何でもありません」


 身につけないで後でどこかに飾っておこう。


(それにしても……)


 ハルカはこれをコレクションだと言っていた。まさかこれのハルカの普段の使い道って胸パッ……。


「ユ、ウ、マ?」


 これ以上はやめておこう。彼女の尊厳を守るためにも、この件について今後も触れないでおこうと僕は決意した。


 ■□■□■□

 次はアリス。


「何だろう、アリスって僕の予想を全く裏切らないよね」


「そう?」


「いや、そんな真顔で言われても困るんだけど」


 アリスが僕に渡してきたのは、彼女の代名詞とでも言える一体の人形。人形ってどちらかといえば女の子向けのプレゼントだし、アリスが持っている人形って以前も言ったけどとてもホラー。

 それをこれから先持ち続けるとなると、夜も怖くて眠れない気がする。


「ユウマに似合うって思って、選んだ」


「何をどういう基準で選んだのか僕は聞きたいよ」


 人形が似合うってどういう事なのだろう。


「ちなみにその人形、呪われてる」


「ねえどうしてそういう事言うの? 祝い事なのに」


「その方が楽しい」


「僕は全く楽しくない!」


 バレンタインデーなのにどうして嫌がらせを受けているんだろう僕は。


 ■□■□■□

 最後にセレナ。


「え? これって」


「チョコレートってどこかで聞いたことがあるような気がしたから探してみたんだけど、これで合ってる?」


 セレナが持ってきたのは何とちゃんとしたチョコレートだった。しかもバレンタインらしくちゃんとハート型だし、見た目も悪くない。


「作ることはできなかったから売り物になっちゃったけど、これでもいいの?」


「うん、勿論だよ。ありがとうセレナ」


 売り物とはいえどチョコレートはチョコレート。僕は早速セレナがプレゼントしてくれたチョコレートを口にした。


 口の中に広がるチョコレートらしからぬ辛味


 そして異常なまでの固さ


 僕が口にしたのは決してチョコレートとは程遠いもので、思わず吐き出しそうになる。


「ど、どう?」


「お、美味しいよ。これどこで売ってたの?」


「質店」


「そ、そうなんだ」


 今度ちゃんとしたチョコレートを布教してみたほうがいいかもしれない。


「ところで顔が真っ青だけど大丈夫? もしかしてチョコレート、美味しくなかった?」


「そ、そんな事ない、そんな事ないから! ありがとう、セレナ」


「くすっ、どういたしまして」


 ああなんて辛い生き物なんだ男は……。


 ■□■□■□

 と、こんな感じで僕達の異世界式バレンタインデーは無事に(?)終了した。僕としては雰囲気を味わえただけでも満足なのだけれど、


「今度はチョコレートというの作ってみようかな」


「何か仕込もう」


「あ、賛成! さっきユウマがとても失礼なことを言っていたから、その仕返ししないと」


 何故か三人は次のバレンタインについて考えていた。しかもとても物騒な言葉が聞こえるし、何故か仕返しとか言われるし。


(何というか三人らしいと言えば三人らしいんだけど)


 ちゃんと言わなければならないことは言っておかなければ。


「三人とも楽しそうにしているところ悪いんだけど、バレンタインデーはさっきも言った通り一年に一度だから、次は一年後だよ?」


「「「え?」」」


 さて、その前のホワイトデーのお返しも今のうちに考えておかないと。

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