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影が薄いけど魔法使いやっています  作者: りょう
第7章ミッドナイトエスケープ
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第65話生きたければ勝て

 僕がムラサメに連れられてやって来たのは、屋敷から少し離れたところ。そこは簡易的な闘技場になっていて、組手をするには適した場所になっていた。


「戦いは一日に一度、この場所で同じ時間に行う。お主に課せられていることは儂の部下に勝ち続けること。一度でも負ければ、ここを出ることはおろか、その命も失うことになろう」


 ムラサメは簡易的な説明を僕にする。つまり生きたければ勝ち続けろという事だ。一日に一回、顔もどんな技を使ってくるかも分からない相手と、勝敗がつくまで戦わなければならない。

 こういうのゲームならリセットなり何なりできるかもしれないけど、事情が違う。僕にとって今この環境は、まさにですゲームだった。


「これでも優しくした方じゃ。本来なら失われたはずの命を救われたのじゃから、これくらいの罰を受けてもらわねば困る」


「最初からそのつもりだったのか」


「儂はタダで住まわすとは言っておらぬ。勝てばしっかり食事も用意する。とにかく勝ち抜いて、儂に人間の力を見せてみよ」


「人を見せ物のように……!」


 でも戦わなければセレナ達の元には帰れない。だから僕はここで何としても生き残ってみせる。


「やってやる! 僕はここで一ヶ月生き残ってみせる!」


「その心意気やよし。さあ一日目の組手、開始じゃ」


 ムラサメの合図とともに出てきたのは、やはりというべきか火の竜だった。


 え?


「しょ、初戦の相手があれなの?」


「儂は一度も手加減をするとは言っておらぬぞ」


「いや、言ってないけど!」


 初心者殺しにもほどがありませんか? このデスゲーム。


 ■□■□■□

 火竜の大きさは、背の高さだけでも十メートル近くあり、体格差だけでも明らかに僕の勝ち目は見えなかった。


(どこを攻撃すればいいんだ?)


 一般的に竜は顔面とか尻尾が攻撃しやすいと聞くけど、その僕の常識が果たして通用するのだろうか。そもそも僕の魔法であの竜に立ち向かうことなんて……。


『ようやく見つけた……って、なに竜と戦っているのよユウマ!』


 最初の一手を考えていると、突然頭の中に声が響き渡る。この声の聞こえ方、何だか久しぶりな気がする。


(「この声、シレナ? どうして」)


 僕はムラサメには聞こえないように心の声で話しかける。確か彼女はアリスの人形の中に閉じ込められているはずなのに、どうして……。


『それはこっちのセリフ! 勝手に身代わりなんかになって、どれだけ皆に心配かけるの?』


(「悪かったよ。でもこうするしかなかったんだ」)


『こうするしかなかったって……っと、避けてユウマ!』


 シレナの声に従って、僕は体を動かすと、先程までいた場所に火竜のブレスが横切った。


「何をしておる。戦わぬのか?」


『よりにもよってムラサメに捕まるなんて……とにかく今はあの竜を倒すよ!』


(「倒すって言っても、どうすれば」)


『この手の敵は足元の攻撃に弱いから、まずはそこを狙って! 怯ませたらすかさず顔を狙って』


(「分かった!」)


 僕はシレナの指示で、相手の動きを見ながら足元へと寄っていく。その間に光の剣を出して、そのまま足を切りつけた。

 すると痛みを逃すように竜は足を上げたので僕はすかさずもう片方の足に、光の槍の魔法をぶつける。


 両方の足の攻撃を受けて咆哮を上げる竜。そのまま地面に倒れるかと思いきや、


「痛い、痛いよぉ」


 何故か人語を喋りながら、暴れ出した。


『ムラサメ様、足が痛いよぉ』


「我慢せぬかサラ」


『ふぇぇん!』


 泣きながらあばれる火竜。もしかして……これは僕の勝ち?


『竜人族、絶滅したと聞いていたけど、こんな所にいたのね』


(「竜人族?」)


『多分この竜の元は人間なのよ。だから人の言葉を喋ってるんだと思う』


「元が人間の竜……」


 今更だけど改めてこの世界が異世界だって思い知らされた僕を尻目に、サラと呼ばれた竜はようやく痛みが治まったのこちらを見ている。


「さあユウマ、まだ戦いは終わっておらぬぞ」


「いや、あんな反応をされたら戦いづらいんだけど」


 むしろこれで更に痛みつけたら僕の方が鬼なのでは?


 結局今回の戦いは引き分けという形になった。


 ■□■□■□

 その日の夜、僕はようやく部屋で一人になれたので深いため息をついた。


 正直ここでの生活は驚かされた


 戦いがある以外は全てが普通なのだ。食事も風呂も何もかもが全て。住んでいる人が(魔物?)おかしい以外は、何も困らない。

 ムラサメもしっかり約束を守っていて、何故か敵であるはずの僕に優しかったりする面もあり、本当に魔王軍なのか疑問に思ってしまうほどだった。


『こんな場所に閉じ込められて、よくそういうセリフが言えるわね』


「僕も不思議だよ。囚われの身のはずなのに、とても不思議な気持ち」


『何というか呑気なのね。明日は今日と同じようにいくわけじゃないのに』


「それはそうなんだけどね」


 当たり前のように会話をする僕とシレナ。そういえば突然現れたから聞きそびれていたことがあった。


「そういえばシレナは王都での戦いの間に、何してたの? アリスと一緒に戦っていなかったみたいだけど」


『ユウマが強くなるための方法を模索していたの』


「僕を強くする?」


『そう。光魔法だけじゃこれからの戦いを切り抜けられないと思って』

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