第64話それぞれの想い方 後編
セレナの治療が終わったのはそれから更に二日後。ハルカはその間に本当に一人でムラサメの元へ向かってしまい、私はそれを止める事ができなかった。
(同じ事を繰り返すことになったら、ユウマの想いが無駄になる。だから私は彼を信じようと決めただけなのに……)
ハルカの気持ちも理解できる。でもだからこそ、何が大切なのかを考えて欲しかった。
「それでアリスはここに残って、王都の復旧を手伝うことにしたの?」
「私はユウマを信じて待つことに決めたから。セレナも間違っていると思う?」
「ハルカもアリスも間違ってないよ。ただバラバラになる必要はなかったと思う」
「ならどうすればよかったの? ハルカの意思は強かった」
「追いかけてでも、止めるべきじゃなかったの?」
「それは……」
セレナの言う通りだった。お互いの意見が合わないからと、私はあの後一度もはるかを引き止めようとしなかった。
ムラサメが危険だと私だって知っておきながら、彼女を強く引き止めようともせず一人でハルカを向かわせてしまった。
果たしてそれは正しいと言えるのだろうか?
「セレナはどう思うの? ユウマの件」
「私は心配だから今すぐにでもユウマを助けに行きたい。けど、アリスの言っているように同じ事を繰り返したら意味がないのも私は分かってるよ」
「……ハルカの気持ちも私は分かっている。私だってユウマが心配だし、何より目の前で何もできなかった自分が悔しい」
「うん」
「でも悔しいけど、今の私達にはムラサメの足元にも及ばない。だから……今戦っても同じ事を繰り返す」
「悔しいけど私もそう思う」
「それをハルカには分かって欲しかった。今の私達には何もできないって」
それでもハルカは向かってしまった。そもそもどこにムラサメが居るのかも知らないのに、彼女は一人で向かってしまったのだ。
まるでこの前の私を見ているみたいだった
「セレナ、私やっぱりハルカを連れ戻さないとダメだと思う」
「どこに行ったのか分かるの?」
「分からない。でもまだ時間は経ってないから、見つけ出してみせる。ユウマが無事に帰ってこれる事を信じるためにも」
「……分かった。私はまだ体を治さないといけないから、私は私でできる事をしておくね」
「ありがとう、セレナ」
この数時間後、一通りの準備をした後に私はハルカを探しに治癒所を出たのであった。
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僕がムラサメに連れていかれたのは、どこかの屋敷だった。少なくとも僕達が暮らしている場所の近くには建っていないであろう大きな屋敷。
僕はその屋敷の一室に閉じ込められるように押し込まれた。
「ユウマ、お主には一ヶ月この屋敷で暮らしてもらう。それがお主の仲間を見逃す条件じゃ」
「この屋敷は?」
「儂の住処とでも言っておこう。と言っても、魔王様の城が儂の本当の家じゃが」
「この屋敷で暮らすだけでいいいの?」
「一ヶ月も暮らせるものなら、な」
意味ありげな言葉をムラサメは残して、部屋から出て行く。出る際に向こう側からしっかりと施錠をされ、僕の意思では出られないようになっている。
(一ヶ月も、ってどういうことなんだろう……)
押し込められた部屋は特に以上は見られない、一見普通の部屋なのだけど、ムラサメの言葉の意味が僕には分からなかった。
よく考えてみれば、僕の今のこの状況は捕虜に近いのだけど、ムラサメは王都を去る際に危害は加えないとも言っていた。だから何が本当で嘘なのか、イマイチ分からないまま、時間が経過するのを待つしか僕にはできなかった。
(セレナ達、無事だといいんだけど……)
あの場で意識があったのはアリスだけだった。他の二人はどうしてこうなったのか分かっていない。のちにこの事を聞いたら、セレナとハルカはどう感じてどう動くのだろうか。
それはアリスも同等だ
たとえムラサメがどんな事を言っていたとしても、それを信じないと思う。もしかしたらこの一ヶ月の間に、この場所を見つけ出して救出に来るかもしれない。
もしそうした場合、二次被害が起きる可能性もある。僕はそれを避けたくて、今回の提案をしたのだけど、果たしてどうなるのか……。
「ユウマ、時間じゃ」
いつの間にか時間が長く経過していたのか、再びムラサメが僕の部屋にやって来た。部屋には時計がないので、今何時なのか分からない。
「時間?」
「お主の魔力もそろそろ回復したじゃろ。今から組手をしてもらう」
「組手?」
一瞬ムラサメが何を言っているのか分からなかった。
「まさかお主、一ヶ月タダでこの場所に暮らせると思ったか? そもそも拾われた命じゃから、お主には一ヶ月この屋敷を生き抜いてもらう。組手はその一環じゃ」
「生き抜くって……」
僕が一人でこの何が起きるか分からない屋敷で生き抜く?
「儂の屋敷には数多の魔物がおる。もしお主にまだ儂に勝ちたいという野心があるなら、それを生き延びて証明してみるがよい」
僕はこの時にようやく気付かされた。
「それが敗者への試練じゃ」
僕が魔王四将星という存在を、甘くみていたことを。




