第63話それぞれの想い方 前編
ユウマは私達を守るために、ムラサメに連れ去られてしまった。意識がありながらも私は、目の前で消えた彼に対してなにもできなかった。
今この場に残されたのは、私と倒れたセレナとハルカの三人
魔力だって残っていた。体だってまだ動かす事ができた。なのに私は……。
「あ……ぅ……うぅ……」
気がつけば私は涙を流していた。目の前で起きた事に対して何もできなかったことがのが悔しくて、ユウマが私達を庇った事に対して悲しくて……。
(こんな思い……したの初めて……)
全てを捨てると決めたあの日から、私は仲間に対して深い感情を持つことなんてなかった。けど彼と出会ってから、短い間に色々な事があって、私自身の変化を私自身が感じていた。
この前の一件だったそうだ
彼は私のことを探して見つけてくれた。
だから今度は……。
私達がユウマを助けに行けばいいの?
歯が立たなかったムラサメにもう一度戦ってまで?
それをユウマは望んであんな事を言い出したの?
「アリス? どうした……の? ユウマ……は?」
私が涙を流していると、意識を取り戻したセレナが声をかけてきた。私は声を出す事ができない。
「ねえアリス……何があったの? ユウマは?」
「居ない」
「え?」
「ユウマ、私達のためにムラサメのところに連れて行かれた」
「嘘……でしょ?」
「嘘じゃない。私目の前にいて何もできなかった……」
「そんな……」
ユウマが居ないこの一ヶ月間、私達はどうすればいいの、ユウマ……。
■□■□■□
ハルカが意識を取り戻したのは、翌日。治癒所で充分な治療を受けた後だった。
「そんな……どうして! アリスは止められなかったの?!」
目を覚ましたハルカに対して、私は全て説明した。
「止める事ができたらこんな事にはならなかった。ユウマがそれを望んだのもある。でも今の私達に四将星とまともに渡り合えない」
「そんなの分かってる! でもだからってユウマが私達のために」
「それに本来ならユウマは殺される可能性だってあった。けどムラサメは何故かそこまではしなかった」
「敵に情けをかけられたの? なら尚更」
「尚更私はどうすればよかった? 教えてよハルカ」
「そんな事……私に言わないでよ!」
その結果、ハルカは私に怒りをぶつけてきて、私も強く返してしまった。誰が悪かったとかそういう話ではないのは分かっている。けど一晩どんなに考えても、私はあの時どうすれば、そしてこれからどうすればいいのか思いつかなかった。
だから私はハルカに強く当たってしまった
「私だって今回の件で何もできなかったんだよ! それなのにアリスは自分だけ悔しいと思って……私だって悔しいのに」
「……」
「何か言ってよ! 私達は仲間でしょ?!」
「私達は仲間だからお互いを助け合おうってそう思った結果がこうなった。大人しく身を引けば、ここまで傷つくことなんてなかった」
「っ! どうしてそんな……事を!」
「アリスさん、ハルカさん、お二人をシェルティア様が呼んでいます」
更なる言い争いになってしまう前に、マリアという治癒術師が部屋に入ってきて会話が中断してしまう。私達は彼女の言うことに従って、目を覚ましたという王女に会いに行った。
「そう、ですか。ユウマ様が私達のために」
「驚かないの?」
「帰ってこないとなれば話は違いますが、私達には今他にするべき事が多いと思います」
「するべき事?」
「これからアリス様達には王都の復旧を手伝っていただきたいのです。今回の事件で大きなダメージを受けてしまった王都を皆様の力を借りて復旧して欲しいんです。頼めませんか?」
「「王都の復旧?」」
昨日二度目のムラサメとの戦いの時見た限り、王都はほぼ壊滅な状況だった。それを復旧の手伝いをしてほしいのなら、私達はここで手を貸すべきなのかもしれない。
「私達はユウマの帰りをおとなしく待てと言いたいんですか?」
「それ以外に選択肢はありませんよ。それとも一ヶ月の間にムラサメに挑んで、ユウマ様を助けるとでも言いたいんですか?」
「その可能性だって考えてもいいと思っています」
「ユウマ様が身を挺してまで私達を守ってくれたんですよ。これ以上無駄な怪我をしたら、彼を悲しませるんですよ? それでもいいんですか?」
「私達は仲間なんです。そう考えてもおかしくないじゃないですか!」
ハルカは強気に言う。
「でも仲間だったから、今回の件がが起きてしまった。セレナの仇のつもりがこんな結果になってしまった。だったら、仲間ってなんなの? 守るために余計に傷ついて、心配を増やして、同じ事を繰り返すのが仲間なの?」
けどその言葉に私は反対の意見を出す。何故なら王女様が言っていることの方が正しいからだ。
「さっきから何のつもりでそんな事を言うの? ユウマを助けに行きたくないの?」
「王女様が言う通りに私はしたい」
「 一ヶ月ユウマが無事だとも限らないのに、おとなしく待つの?」
「それが安全だと私は言っている。ユウマだってそれを望んだんだから」
今回の件みたいに、誰かが怪我をするくらいなら、安全な方を私は選びたくなった。
たとえ仲間を失うことになったとしても、私はハルカの言葉に賛同できい。
「仲間を見捨てるんだねアリスは」
「見捨てるつもりなんてない。何が今の私達に必要なのか考えた結果、こうなっただけ」
「ならいいいよ、私一人でもユウマを助けに行くから」




