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第61話王都決戦 前編

「そんな訳ないでしょ! セレナが負ける訳」


 ムラサメの言葉に反論したのはハルカだった。僕も同等に信じられない。セレナだけならまだしも、あの場所にもう二人いるのだから、いくら四将星の一人でもそう簡単には勝てないはずだ。


「信じられぬか? なら現実を見せてやろう」


 するとムラサメは僕達に向けて三つの塊を投げつけてきた。それは全身火傷の状態のセレナとフェルナ、そしてアリスが言っていた魔法剣士の人であろう青髪の女性。

 三人とも息はしているが、その息も途切れ途切れの状態だ。


「これで分かったじゃろ、たかだか人間が四将星には敵わぬと」


「セレナ! しっかりして! セレナ!」


 必死にセレナの名前を呼ぶハルカ。アリスもどうにか治療を施そうとしている。僕はその二人を守るようにして、ムラサメの目の前に立った。


「ユウマ?」


「ハルカ、アリス、今すぐ急いで三人を治癒所に運び込んで」


「え? でもユウマは?」


「ぼくがそれまでの時間を稼ぐ。だから」


「でも」


「いいから!」


 僕は二人に向けて声を張り上げた。今にでも爆発しそうな怒りを何とか抑え込んでいるこの状況だからこそ、二人に指示を出しておきたかった。


「……分かった。でもすぐに戻ってくるから」


「ユウマ、無茶だけは駄目」


「分かってる」


 でも無茶をしなければならない状況であることも僕は分かっている。


「まさか仲間を逃がすために囮になるとは。随分とでかく出たのう」


「僕がお前に到底敵うはずのないことくらいは分かっている。けど、セレナを……僕達の大切な仲間を傷つけたことだけは絶対に許さない!」


 セレナだけじゃない。今回の事件で、多くの怪我人を出した。僕が知らないだけで、もっと多くの犠牲者が出ている可能性だってある。


 彼女と戦う動機はそれだけで充分だ


「僕は何があっても、お前を……魔王軍を許さない!」


「なら今一度その力を見せてみるがよい! 儂が返り討ちにしてくれるわ!」


 僕はムラサメに向けて斬りかかっていった……。


 ■□■□■□

 師匠が私の目の前に現れて、火も消えて勢いは完全にこちらにあると思っていた。だけど、その勢いはあまりにも一瞬で打ち砕かれ、私達はムラサメの前に倒れた。


「うっ……」


 しばらく遠のいていた意識がようやく戻ってくる。私は今誰かに背負われている状態だった。


「あり……す?」


 そして私を背負っていたのはアリスだった。彼女は私を背負いながらその手にフェルナを抱えていた。


「セレナ、今は眠ってて」


「え?」


「私達がセレナの仇、取るから」


「仇って……」


 私死んでないよ?


「今ユウマがセレナ達を逃がすために一人で戦ってる」


「ユウマが? どうして一人で……そんな……」


「ユウマ、怒ってた。セレナを傷つけたことを」


「でも、一人じゃ」


「私も許せない。だからすぐにユウマのところに戻る」


「アリスまで……」


 ムラサメは感情に任せて戦って倒せるような相手ではない。もしこれ以上三人が無理をするなら、更なる被害を出しかねない。

 そんな事、私は見逃すなんてことできない。


「駄目……アリス。戦っちゃ」


「敵わない相手なのは私だって理解してる。でもこのままやられっぱなしなんて私にも……ハルカにもできない」


「お願い……」


「ごめん、セレナ」


 アリスはそう答えて以降、言葉を一度も発することはなかった。治癒所という場所に運ばれた私は、治癒術師によって治療を受けたのだけど、その間にハルカとアリスの姿は消えていた。


(私だけ何もできないの……)


 体が動かないから戦力にならないのも分かっているし、私が自分で戦いに挑んで負けた以上、三人に強く言えないのも分かっている。

 けどいざ私だけこうして一人になった時に、ただただ情けなくて、悔しくて……。


「あの、マリアさんだっけ?」


「はい。何でしょうか?」


「今すぐ体を動かせる治療法って、ある? 少しでもいいの、もう一度だけ私にムラサメと戦うチャンスを欲しいの」


 ■□■□■□

「この短時間で儂にここまで渡り合えるようになるとは、流石じゃな」


「僕だって伊達に冒険者やっているわけじゃないからね」


「それにしてもお主が噂に聞く光の魔法使いとは。その力、本当に惜しいのう」


 僕とムラサメの戦いは、僕の防戦一方だった。ムラサメが身に纏う炎は、僕を近寄らせず彼女が放つ炎の魔法は確実に僕の体力を奪っていった。


「付加魔法!」


 劣勢の中で、僕は次の一手に出る。光の剣に雷の魔法を付加させる力。これが果たして相手に傷を与えられるか分からないけど、やってみるしかない。


「ほう、付加魔法まで身につけてあるとは。だがそれでもお主の魔法は儂には届くまい」


 雷の剣で斬りかかる僕に対して炎の柱を自らの前に出すムラサメ。このまま突っ込めば、体は焼かれる。けど攻撃の方法を変えれば、


「うぉぉ!」


「なるほど、直前に突きに変えて剣だけでも通そうという戦法か。しかしそれでも甘い!」


 突きの構えに変えて、剣を柱を超えてつきさそうとするが、剣は彼女に届くどころか炎の柱に飲み込まれてしまった。


(くそ、このままだと)


僕の体も炎に呑み込まれてしまう。この炎を今すぐ何としなければならない。けどそんな方法なんて……。


(一つだけ……ある!)


「柱の厚さを変えればこんなもの。これでお主の剣も届くまい」


「付加魔法!」


 僕は雷の魔法を得た時と同じ要領で、剣に炎の魔法を付加させた。この付加魔法がどこまで通用するのか分からないけど、この炎を取り込む方法はこれしかない。


(上手くいって……)


「ぬっ、まさかお主」


「この炎は僕がもらう!」


 炎が光の剣の中に吸い込まれていく。まさかそんな事が起きるとは思っていなかったのであろう。ムラサメも驚きの表情を浮かべている。


「儂の炎を付加させる、じゃと。お主一体何者……」


「炎雷剣!」


 付加を終えると同時に、僕はムラサメに向けて一閃を放つのであった。

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