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第55話焔の鬼神

 まだ夜も明けて間もない時間


 突如として鳴り響いた敵襲の鐘


「ユウマ、今のは」


「うん、説明の通りなら」


 部屋を出るとほぼ同じタイミングでセレナが自分の部屋から出てきた。それから少し遅れてハルカとアリスも部屋から出てくる。


「まさかこんな朝早くに……ふわぁ」


「眠い」


「三人ともすぐに準備を整えて、もう一度この廊下に集合。僕達だけでも迎え撃とう」


「「「了解!」」」


 迎え撃つための準備の為に僕達は一度部屋に戻る。何故僕達がここまで迅速に動くことができるのかというと、話は謁見の後の食事会にまで遡る。


「魔王軍が王都に侵攻してきてる?」


「はい。ここ数日魔王軍の動向を伺っていたのですが、どうやら近頃大きな動きを見せているようです」


 食事が落ち着いた頃に、シェルティアが切り出したのは近頃の魔王軍の動きについてだった。僕達としては魔王軍の話を聞くのは、水神祭以来となった。


「その一つとしてこの王都が狙われているって事ですか?」


「そういう事になります。実は今回ユウタ様達を招いた理由の一つでもあるんです」


「それってもしかして……」


「数日の間に間違いなく魔王軍は攻めてきます。水神祭の時に活躍したユウマ様達に是非迎え撃っていただきたいんです」


 どうやら僕達を王都に呼んだ真意は、そちらにあったらしくシェルティアは具体的な作戦まで僕達に教えてくれた。

 そして襲撃の知らせの鐘が鳴らされた今、僕達は魔王軍を迎え撃つ事になる。


「ただ予定外なのが」


「シャルティア様が大怪我を負っていることよね」


「指揮を取ると言っていたけど、まだ眠っている以上それもできないし、とりあえず指示されていた通りに動く以外になさそうだね」


 僕達はまずは城から出て、王国騎士団と合流する。


「フェルナさん、やっぱり魔王軍が?」


「はい。先程偵察部隊から報告がありました。間も無く王都に到着すると」


「僕達はいつでも迎え撃つ準備は整っています。シェルティア様は不在ですが、僕達だけでも迎え撃ちましょう」


「はい!」


 騎士団と合流した後は、それぞれの配置に着く。ここで僕達のパーティも二手に分かれ、僕とハルカ、セレナとアリスという組み合わせで襲撃に備える。


「ユウマはサポートをお願いね。私が前線に立つから」


「分かった、ハルカも危なくなったら下がってね」


 僕とハルカが任されたのは、城門前の防衛。万が一敵が城に接近してきた際にそれを払いのけるという役目を任された。


「セレナ達は王都の入り口を任されてるけど、大丈夫かな?」


「心配な気持ちは分かるけど、二人の方が戦闘の経験は多いから心配ないと思う。私達は私達の役目を果たせばいいんだから」


「う、うん」


 城門前には僕達以外にも騎士団員が多くいる。これだけいれば、城の方は安泰と言いたいけど、僕は何故か不安になっていた。


(先程から感じているこの嫌な予感はなんだろ……)


 シェルティアは魔王軍の襲撃を予測して、僕達を配置につかせた。でもそれは、予定外な事が起きなかった場合の話だ。

 しかし今、シェルティアが大怪我をして城の中にいるという予定外な事が起きている。


 そもそもどうしてあの日、フードの女がシェルティアと対決していたのか。


 何故フードの女は王都にいたのか


 もしそこに何かの意図があって


 もしそれが全て作戦通りだとしたなら……


「マズイ!」


「え?」


 僕がそう呟いたその瞬間だった。


 爆発音が……背後の城から聞こえてきたのは


 ■□■□■□

「なっ、どうして城が」


 突然の爆発に驚く僕達。騎士団の人達も慌てふためく中、僕はハルカの手を取る。


「ハルカ、行こう!」


「行くってどこに」


「城の中にいるシェルティア様とシーナを助けに行かないと!」


「で、でも私達だけじゃ」


「じきに城が燃え広がる。その前に助け出さないと、手遅れになるから!」


「わ、分かった」


 僕とハルカは急いで城の中へ駆け出す。中に入ると既に城は火の手が回り始めていた。


「ちょっとはやすぎでしょ、火が回るの」


「もしかしたら連鎖的な爆発だったのかも。とにかく煙を吸わないように気をつけないと」


 火が回っている以上、長居はできない。早くシェルティア様とシーナを救い出さないと。


「待ってユウマ」


「どうしたのハルカ」


「誰か……いる」


「……え?」


 ハルカが向けた視線の先に人影が見える。しかし僕達がいるのを確認したのに、その影は城の奥に行ってしまった。


「どうしてわざわざ火の中に」


「分からない。追ってみよう」


 僕達はその影を追うように城の中を突き進む。炎の中を煙を吸わないようにしながら進むと、影にようやく追いつく。

 そして追いついた場所は、シェルティアの寝室の前。


「待て、こんな所で何をしている」


 影が扉に手をかけた所で、僕は声を張る。


「まさかこの炎の中を追ってくるとは」


「まさかお前が城を」


「ああそうだ。こんな風にのう」


「ユウマ、危ない!」


 黒い影は炎の魔法を僕に向けて飛ばしてくるが、ハルカがそれを大剣で受け止める。


「くっ」


「今の魔法を受け止めるとは。なかなかやるのう」


 影が僕達の目の前に現れる。現れたのは、この場には似つかない着物を着た黒髪の女性だった。その頭にはツノも生えている。


「鬼?」


「そうとも。儂こそ魔王軍四将星が一人、焔の鬼神ことムラサメじゃ」

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