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第56話王都燃ゆ 前編

 王都の入口で魔王軍と戦っていた私達に、城が爆発したという知らせが入ったのは、迎撃してしばらく経った後の事だった。


「どうするフェルナ」


「城も心配ですが、こちらの勢いが止まらない以上数を減らすわけにはいきません。彼らを信じましょう」


「でもあそこにはシェルティア様が」


「それも分かっています。ですが今は」


 私とフェルナの会話を遮るように、突然大きな足音が遠くから聞こえる。


「っ! この足音はまさか」


「厄介な奴が現れた」


 少し遠くで戦っていたアリスが言葉を漏らす。あの時相手したのは確かユウマとアリスだった。でも私もこの耳に嫌でも響き渡る音を忘れていない。


「あの時仕留めた思っていましたが、どうやら最悪のタイミングで現れてしまいそうですね」


「本当に最悪のタイミングよ、これ」


 私達と魔王軍を遮るように、巨大な剣が空から降ってくる。私達は何とかそれを避け、次いで飛んできた巨体に武器を向ける。


「まさかこんなにも早く再会できるとはな、王国騎士」


「デルーテ! どうして貴方が」


「理由など聞かなくても分かろう。この王都を我ら魔王軍の物とするためよ」


「そんな事を簡単に私達が許すとでも」


「簡単にはいかないだろうな。だが、既に侵略は始まっている。見ろ」


 デルーテに言われて、私達は王都の方を見る。そこに広がっていたのは、守っていたはずの王都が所々燃えている姿。

 私達はその光景に、愕然とする。


「いつの間に王都が」


「城の爆発とこの火災、まさか」


「ふん、気づいたところでもう遅い!」


「セレナ!」


 アリスに言われて、ハッと我に返る。それとほぼ同時にあの巨大な剣が私の頭をかすめる。


「ちっ」


「セレナ、ボーッとしている暇ない」


「ありがとうアリス、でも少し気になることが」


「気になること?」


 先程報告があった爆発と、この王都の火災。それらを私達に気づかれずに行える人物は私の知る限りでは二人しかいない。


(まさかこんな場所で再び会う事になるなんて)


 もし城にあいつが侵入しているなら……。


「ごめんフェルナ、アリス、私行かなきゃいけない」


「行かなきゃって何を言い出す……ああ、先輩!」


 ユウマとハルカの命が危ない。


「どうしてこの場所にあいつがいるの? ずっと姿をくらましていた癖にどうして今更……」


 炎に包まれた王都を駆け抜けると、あの時の記憶がフラッシュバックする。あの日、あの時、あの場所で私は……。


『王国騎士とはこの程度かのう』


『うるさい!よくも、よくも私の仲間を……』


『頭に血が登るほど我を忘れるタイプよのう。隙だらけじゃ』


『なっ、がはっ』


『終いじゃ』


 私は大切な仲間と、自分の命を失った。


 ■□■□■□

「なるほど、少しは骨がある。しかし弱い」


「くっ」


「ユウマ、下がって! 次は私が」


 四将星の一人、ムラサメは強かった。炎の中という環境の悪さも相まって、まともに動けない僕に対して彼女は容赦なく攻撃を仕掛けてくる。

 その為、先程から防戦一方の戦いが続いていた。


「ハルカは……シェルティア様とシーナを救い出して。そうでないと時間がない」


「でもユウマは……」


「こいつは僕が何とか引き止める。だから急いで」


「……分かった」


 シェルティアが眠っている部屋へ向かうにはムラサメの動きを止めなければならない。その間にもう一人がシェルティアを救い出す以外の方法がない以上、今は予断が許されない。


「儂に一人で挑むとは、その心意気や良し。しかし汝でも理解しているじゃろ。儂には簡単には勝てぬと」


「確かに勝てないかもしれない。けど今必要な事は」


 僕は光の魔法を用いて、剣を作り出す。そこに纏わせるのは、彼女と同じ炎の属性。


「ほう、その魔法、やはりか」


「何か知ったような口ぶりをしているけど、そんなの関係ない。喰らえ!」


 僕はムラサメへと斬りかかる。しかし彼女に直接攻撃を与えるわけではない。これで僕が作り出すのは、


「でりゃあ!」


 彼女の視界を遮る炎の壁。そしてその壁を作り上げた意図は、


「ハルカ、今だ!」


「承知!」


 その安倍を通り抜けて、一気にハルカがムラサメを突破できるようにする為。少なくとも今のこの炎の壁で、僅かにながら隙ができた。

 その間にハルカがシャルティアの部屋に入ることさえ出来れば、この窮地を越えられる。


「炎を使っての目くらまし、流石と言えよう。しかしそれでは甘い!」


 ハルカが炎の壁を越え先で、ムラサメの声が聞こえる。


「きゃああ!」


 それとほぼ同時だった。ハルカの悲鳴とたまに、彼女の体が再び壁を越えて戻ってきたのは。


「ハルカ!」


 ハルカの体が炎の海の中に打ち付けられる。彼女の介抱にに向かおうとすると、


「終わりじゃ」


 今度はムラサメが炎の壁を通り抜けてやって来て、ぼくの体を掴むなり、体を地面に叩きつけ押さえつけてきた。


「が、はっ」


「その近く、惜しいのう」


「なにが、だ」


「汝のような弱者が持つには勿体ない。だから実に惜しいと言った」


「確かに僕は弱い……けど」


「負け惜しみを聞く暇などない。さあ塵と化すがよい」


 ムラサメは僕の体の下で魔法陣を作り出し、そして……。


「豪炎の渦」


 僕の体を灼熱の炎で包み込んだ。

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